院長インタビュー

“断らない救急”を実現するために——地域医療連携を推進する三田市民病院

“断らない救急”を実現するために——地域医療連携を推進する三田市民病院
荒川 創一 先生

三田市民病院 元事業管理者・院長、神戸大学 客員教授

荒川 創一 先生

目次
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兵庫県三田市にある三田市民病院は、地域に根ざした急性期病院として診療に尽力しています。急性期病院としての役割を果たすため、地域との連携強化を図りながら、救急患者さんの受け入れ体制を強化しています。たとえば、同院では、開業医の先生からの受診依頼の電話連絡を受けた場合、時間外であっても紹介の患者さんを受け入れる体制を築いています。三田市民病院の特徴や診療体制について、院長である荒川 創一(あらかわそういち)先生にお話を伺いました。

当院の前身である三田町立診療所は、1949年に設立されました。翌年には、町立三田病院と改称され、1958年に三田市民病院となりました。以来、60年以上にわたり、地域の皆さんの診療に尽力してきました。1995年には現在の場所(兵庫県三田市けやき台3丁目)に新病院をオープンし、医療設備をさらに充実させながら、300床の急性期病院として診療にあたっています(2020年3月時点)。

当院が位置する兵庫県三田市は、2018年7月1日に市制施行60周年を迎えました。昔ながらの田園風景を残しながら、近年ではベッドタウンとしても発展を続け、人口は11万人に達しています(2019年時点)。当院の主な診療圏は、この三田市をはじめ、隣接する神戸市北区、丹波篠山市、三木市、西宮市、加東市、宝塚市などです。主にこれら約30万人の住民の皆さんを対象とした急性期医療を担っています。

緑に囲まれた三田市民病院
緑に囲まれた三田市民病院

当院は“断らない救急”をスローガンに、職員一丸となって救急医療に取り組んでいます。夜間や休日にも救急の患者さんを受け入れる救急外来を開くとともに、救急隊からの救急搬送を積極的に受け入れ、昼夜を問わず年間約3,500件の救急車搬入に対応しています。夜間・休日には、当直医を複数名置いて、各専門の診療科にバックアップのオンコール体制を整備しています。

また、“心臓センターホットライン”を設け、365日24時間体制で常駐する循環器内科の医師が循環器救急・重症患者さんを受け入れています。

さらに、かかりつけ医を受診した患者さんに重い症状がみられたり、その医師が緊急の処置や入院が必要と判断し電話連絡をくださったりした場合には、時間外でもその紹介患者を受け入れています。

当院は、新たな治療法の導入にも積極的に取り組んでいます。そのひとつが最新型の内視鏡手術支援ロボット“ダヴィンチXi”の導入です(2020年3月時点)。ダヴィンチは、通常の開腹手術と比べて手術による傷が小さく、出血や術後の痛みが少ない点が特徴です。また、術野が拡大されたモニターを見ながらロボットを操作するため体内の様子を詳細に観察でき、精緻な手術につながる利点もあります。当院では、主に、ロボット支援下での前立腺がん胃がんなどの手術に取り組んでいます。

内視鏡手術支援ロボット“ダヴィンチ”

内視鏡手術支援ロボット“ダヴィンチ”
内視鏡手術支援ロボット“ダヴィンチ”

当院は、地域医療支援病院として、地域の医療施設との連携にも力を入れています。たとえば、地域の開業医の方々を当院院長や診療科長が訪問するなどコミュニケーションをとるよう努めています。

平日の日勤帯は“Patient welcome system”という合言葉のもと、かかりつけ医の先生から緊急診療依頼の電話があれば、時間帯を問わず該当の診療科がその患者さんをすぐに受け入れ診察できるような体制をとっています。もちろん、消防から救急車搬送要請の入電があれば、できる限り受け入れる(お断り率5%未満)姿勢を常に示すように努めています。

また、高齢化が進むなか、当院で急性期を乗り切られた回復期の患者さんの受け入れを行う病院などとの連携をさらに深めていく必要があると感じています。患者さんが自身の経過に応じた治療やケアを受けられるよう、今後は地域連携をさらに推進していきたいと考えています。

入院支援連携室
入院支援連携室
退院支援連携室
退院支援連携室

当院では、19の診療科が診療に尽力しています。当院の代表的な診療科と注力している治療についてご紹介します。

外来受付
外来受付
外来待合
外来待合

当院の循環器内科には11人の常勤医師が在籍し、心臓センターにおける日帰りカテーテル検査や、冠動脈CTなどによる外来診療、カテーテル手術、重症患者さんや救急患者さんの迅速かつ幅広い受け入れを行っています(2020年3月時点)。また、心臓の冠動脈疾患に対して、現在治療法の主流であるカテーテルを用いた経皮的冠動脈インターベンション(血管内治療である経皮的冠動脈形成術・ステント留置術)治療も積極的に行っています。

循環器救急の中核施設として、循環器疾患の救急・重症患者さんを、地域のかかりつけ医の先生方と24時間体制でホットラインを通じて受け入れています。三田市に限らず広域(神戸市北区、丹波篠山市、三木市、丹波市、宝塚市、西宮市など)の患者さんを受け入れている点が特徴です。

消化器内科には、11人の常勤医師が在籍し、消化器疾患(食道・胃・十二指腸・小腸・大腸・肝臓・胆道・膵臓)の急性期病態やがんの治療から緩和医療まで幅広く診療を行っています(2020年3月時点)。

内視鏡センターでは、上部・下部消化管合わせて年間約7,500件の内視鏡検査を実施しています。また、早期がんに対するESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)を年間約140件行っています。さらに、胆膵疾患の内視鏡診断・治療に用いるERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影)、EST(内視鏡的乳頭切開術)を合わせて年間約347件行っています*。消化管の内部から消化管壁や周囲組織・臓器などを調べるEUS(超音波内視鏡検査)や、画像診断では診断が難しい腫瘍性病変の病理診断に用いるEUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引法)にも取り組んでいます。

女性の日本消化器内視鏡学会認定の内視鏡専門医も常勤しているため、大腸内視鏡に抵抗のある女性の患者さんも安心して受診いただける体制を築いています。夜間、休日であってもオンコール体制を敷き、消化管出血や胆嚢炎・膵炎など治療に緊急を要する病気・病態にも対応しています。

*2018年4月1日~2019年3月31日の統計

整形外科には、関節外科(人工関節)、関節リウマチ、脊椎脊髄、肩関節、スポーツ障害など、専門分野が多岐にわたる6人の常勤医師が中心となり、さまざまな整形疾患や外傷に対応しています(2020年3月時点)。

特に、低侵襲手術(Minimally Invasive Surgery: MIS)に積極的に取り組んでいます。たとえば、関節鏡視下による膝前十字靭帯損傷・半月板損傷の手術や、腰椎椎間板ヘルニア腰部脊柱管狭窄症の鏡視下手術(MED法)を採用し、患者さんの負担を軽減し、早期に社会復帰いただけるよう努めています。また、ナビゲーションシステムを用いた膝人工関節手術や人工股関節手術、股関節の骨折に対する大腿骨人工骨頭置換術、大腿や下腿の骨折に対する小切開によるプレート固定術(MIPO法)などにも力を入れています。

なお、夜間休日の救急にもオンコール体制で対応しています。

手術の様子
手術の様子

外科・消化器外科には7人の常勤医師が在籍し、安全で根治につながる治療を行える体制を築いています(2020年3月時点)。たとえば、食道がん胃がん大腸がんをはじめとする消化器がんに関しては、QOL(Quality of Life:生活の質)をなるべく損なわないことを目指して、外科手術だけでなく内視鏡併用手術や放射線治療などを集学的に行うことができるよう各診療科との連携を密にしています。

腹腔鏡下手術に積極的に取り組んでおり、胃がんで45%、大腸がんでは65%の方に腹腔鏡下の根治手術を行っています(2016年度)。特に胃がんに対する手術では、2018年4月から新たに保険収載されたダヴィンチによるロボット支援下手術を導入しています。また、直腸がんに対しても可能な限り腹腔鏡下手術を適応し、人工肛門を作らず肛門を温存するよう努めています。

当院は、若手医師にできるだけ希望や経歴に応じた学習経験を積み重ねてもらい、適切にステップアップできるような環境の構築に努めています。医療安全を第一に考えながらも、意欲のある研修医には、可能な限りさまざまな経験を積んでもらい、幅広く活躍してもらえるようサポートしています。また、研修室の整備などハード面でも研修医の受け入れ環境の向上に努めています。

当院では、チーム医療がうまく機能することと並行して、医師がやりがいを感じながら疲弊せずにコンスタントに仕事ができる環境づくりを心がけています。このような姿勢を維持することが、当院のよい風評につながり、若手医師が当院への入職を希望してくれるようになると信じていますし、現にその効果が毎年の医師数増という結果につながっています。

当院は今後も、地域完結型の医療を担っていくために、さまざまな医療機関や介護施設などとの連携をさらに強化していくつもりです。また、常に時代を先取りできるようなさまざまな仕組みを導入する柔軟性とフットワークに富んだ病院であり続けたいと思っています。

荒川先生

当院では、各世代の医師が、その経験や希望に応じた生涯学習を獲得しつつ、患者さんに満足してもらえる医療サービスを実現できる体制を築いています。そのために、さまざまな投資を適宜行いながら、地域医療支援病院・臨床研修指定病院としての水準を常にブラッシュアップしていくつもりです。当院は診療科間の垣根が低く、お互いに顔の見える関係が築かれています。このような環境で、さまざまな経験を積みたい方の入職をお待ちしています。

当院は地域に根ざした病院として、地域の皆さんの健康をお守りしたいと思っています。体調に心配があれば、かかりつけの先生と相談されたうえで、必要であればその先生から電話をいただければ、時間帯を問わず当院を受診いただけるシステムを構築しています。もちろん、急病発症の折に「これは危ない」と思われたら、119番の救急隊が頼りになります。当院では、救急隊とも連携を深めながら、救急車の搬入もできる限り受け入れています。治療に緊急を要する患者さんの受け入れ体制を強化するため、これからも職員一丸となり努力してまいります。

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  • 三田市民病院 元事業管理者・院長、神戸大学 客員教授

    荒川 創一 先生

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