院長インタビュー

総合力で地域の医療を守る――成田赤十字病院の取り組み

総合力で地域の医療を守る――成田赤十字病院の取り組み
青墳 信之 先生

成田赤十字病院 院長 血液腫瘍科

青墳 信之 先生

目次
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千葉県唯一の赤十字病院であり、赤十字の理念を体現する成田赤十字病院は1948年の開設以来約80年の歴史を有し、地域の医療を支える中心的な病院としてさまざまな医療サービスを提供しています。

救命救急センターをはじめ、機能別のセンターを10も設置し、各分野で質の高い医療提供を目指しています。また、成田国際空港の近くに位置することから、国際診療科や感染症科といった診療科もあり、外国人の患者さんを含め幅広いニーズに対応しています。病院の開設から78年が経過した現在、同院は創立80周年に向けた『Road to 80th』という節目を歩んでおり、成田空港の拡張に伴う地域需要の変化や、デジタル技術を活用した「患者さんと向き合うための医療」への挑戦を続けています。

多様な診療科による総合力で地域医療を支え続ける成田赤十字病院の取り組みについて、院長の青墳 信之(あおつか のぶゆき)先生にお話を伺いました。

外観
成田赤十字病院(提供:成田赤十字病院)

当院は1948年の開設以来、この地で78年という長い年月を刻んできました。また当院は千葉県唯一の赤十字病院であり、北総地域の中心的な病院として、周辺地域に限らず茨城県南部など遠方からの患者さんも受け入れており、広範囲に医療サービスを提供しています。
現在は、まもなく迎える創立80周年に向けて『Road to 80th』というロゴを作成し、全職員が一丸となって未来を見据えているところです。

当院は、救命救急センターをはじめ、地域周産期母子医療センターや造血細胞移植センター、脳卒中センターなど多数のセンターを有しており、それぞれの分野で良質な医療の提供に努めています。また、地域災害拠点病院や特定感染症指定医療機関としての役割を果たす一方で、地域がん診療連携拠点病院として、がん治療を担う中核的な施設としての一面も持ちます。
日常の診療においても、さまざまな診療科がそろっていることから、それぞれの特色と連携によって一人ひとりに合わせた包括的な医療の提供が可能となっています。

国際空港がある成田市は、空港の第3滑走路計画が進み、年間発着回数が50万回へと拡大される見通しとなったことで、全国でも稀有な人口増加が想定されています。特に多くの働き手世代が集まるため、医療や介護の需要もこれまでの高齢化社会とは異なる新しい局面を迎えるでしょう。
たとえば、周辺地域で産院が減少するなか、私たちは周産期医療の中核として、地域の新しい命を守っていかなければなりません。こうした変化の激しい時代にあって、当院は今までのあり方にとらわれない、新しい地域医療の形を描いていく必要があると考えています。

内観
院内の様子(提供:成田赤十字病院)

救命救急センターでは、三次救急(重症で緊急性の高い救急患者)を中心に広く対応しており、可能な限り“断らない救急”を実践しています。救命救急・集中治療を専門とする医師をはじめ、内科、循環器内科、外科、整形外科、小児科、新生児科、脳神経外科、脳神経内科、産婦人科、マイナー科などの医師が当直をしており、総合的な医療支援を展開しています。こうした努力もあり、救急車による搬送患者数は、年間約8,000件を超える水準*で推移しています。現在、救急病棟22床、ICU病棟8床となっていますが(2026年4月時点)、さらなる機能充実を目指し、新たに救命救急棟を建設する予定で計画を進めています。 

また、当院は救命救急センターとして重症患者さんの受け入れを継続していくため、地域の連携病院との協力体制も重視しています。治療が一段落した患者さんについては連携先へつなぐことで、より多くの救急患者さんを受け入れられるようになるでしょう。

急性期病院としての使命を果たすためには、地域の病院と密に連携し、当院治療後の医療を行うための円滑な転院が欠かせません。
これは、高度な救急医療を必要とする次の患者さんをいつでも迎えられるようにするため、一段落した患者さんに適切な後方支援病院へ移っていただき、大切な病床を『回転』させるという重要な役割です。
患者さんやご家族からは『せっかく日赤に入ったのにもう転院なの?』とお声をいただくこともありますが、私たちは入院の段階からこの連携の目的を丁寧にお伝えし、ご理解をいただけるよう努めています。当院が次々と急性期の患者さんを受け入れることで、より多くの方を助けることができるのだということを、どうかご理解いただくようお願いいたします。

*2025年度実績:8,683件

地域の出産や子育て支援において、地域周産期母子医療センターとしての役割も重要なものと考えています。産婦人科では、安心・安全に妊娠期間を過ごし、母児ともに元気に帰宅いただくことを大切にしています。また総合病院であることから、他科の協力が必要な場面でもスムーズに連携を取れるという特徴があり、合併症などを抱える方でも安心して受診いただけるのではないかと思います。

併設の新生児科には、NICU(新生児集中治療室)9床、GCU(新生児回復室)12床を備えています(2026年4月時点)。さらに、2018年には新生児搬送(病院の救急車で赤ちゃんをお迎えすること)も開始しました。

造血細胞移植センターは2019年に開設されたセンターで、白血病など血液の病気の治療に有効な造血幹細胞移植を専門的に行っています。当院の造血細胞移植センターの特徴の1つとして、AYA世代*の血液がんにも対応できることが挙げられます。これは、当院に小児血液腫瘍科(しょうにけつえきしゅようか)があり、成人の血液腫瘍科とスムーズに連携が取れることが大きく関係しています。小児・成人の診療科間で協力して移植治療を行うのは決して簡単なことではなく、多様な診療科をもつ当院ならではと考えています。

* AYA世代……思春期・若年成人である主に15~30歳代の世代を指しています。

スタッフ
成田赤十字病院のスタッフ(提供:成田赤十字病院)

地域がん診療連携拠点病院として、がん診療においてもさらに専門的な治療への取り組みを強化しています。

がん治療においては、手術支援ロボット“ダビンチ”やIMRT(強度変調放射線治療)といった治療法も採用しています。また、さまざまな診療科を有することから、がんに加えてほかの病気を抱えた患者さんへの対応も可能です。たとえば、がん治療に加えて透析が必要な患者さんや、精神疾患を抱える患者さんもいますが、そうした複数の病気を抱える患者さんにも、各診療科の力を合わせて診療を行えることが当院の強みの1つといえるでしょう。

また、がん治療においては薬剤の副作用管理も重要であり、他科との連携が必要不可欠といえます。その点でも、多様な診療科を有する総合力を生かし、患者さん一人ひとりに寄り添う医療の実践を可能としています。

私たちは、医療従事者がより患者さんのそばにいられる環境を整えるため、医療DXの推進にも力を入れています。
すでにWeb紹介システムや、AI電話による24時間体制の予約変更、人間ドックのWeb予約などを導入しました。さらに今年度からは、AIによる電子カルテの要約や書類作成の支援も本格的に活用していきます。

私たちがこれほどデジタル化、DXを推進する最大の目的は、単なる効率化ではありません。書類作成のようなAIに任せられる業務を切り離すことで、看護師や医師が「人でなければできない仕事」、つまり患者さんの目を見て、心に寄り添う時間を1分でも1秒でも長く確保するためなのです。
2025年の万博の赤十字パビリオンのテーマにもありましたが、「人間を救うのは、人間だ。」と考えています。人が人を救う医療の原点に立ち返るために、最新のテクノロジーを役立てたいと願っています。そして、職員が『ここで働き続けたい』と思える環境を作ることが、巡り巡って患者さんへの質の高い医療提供につながると信じています。

当院は、健康増進活動にも力を入れており、地域の方向けに公開健康講座を開催しています。医師やコメディカルのスタッフが依頼を受けて出向く出前講座もあり、100以上のテーマをそろえています。今後もこうした活動で地域の健康を支え続けていきたいと思います。

当院は、成田国際空港の近くに位置することもあり、全国でも4か所しかない特定感染症指定医療機関として指定されています(2025年4月時点)。そのため、エボラウイルス病MERS中東呼吸器症候群)など感染症法で定められた特殊な感染症が疑われる患者さんの受け入れも行っています。また、新興感染症への対応に加え、院内感染対策や耐性菌への対策にも積極的に取り組んでいます。2018年からは、ワクチン・渡航外来を開設しており、各種輸入ワクチンも準備*しています。

*輸入ワクチンの接種は自由診療となります。費用についてはこちら(https://www.narita.jrc.or.jp/guide/senmon/files/vaccine20260204.pdf)をご覧ください。ワクチンは成田赤十字病院が輸入したものであり、国内未承認のワクチンです。日本の医薬品副作用被害救済制度の対象ではありません。

当院は空港に近いことから、外国人の患者さんも来られますが、言葉や文化の壁により診療が難しいことも少なくありません。そうした問題を解消するため、この科が設立されました。国際診療科では、外国人の患者さんと対応するスタッフの不安をできるだけ取り除き、スムーズな医療サービスを提供できる体制を整えています。たとえば、タブレットを用いた通訳サービスや外部通訳の手配、多言語での説明書の作成など、工夫を凝らして双方の不安を軽減できるようにしました。また、当院とつながりのある地域の先生方向けに、多言語での病気や治療についての説明書など資料へアクセスいただけるページがあるので、地域の先生方にも国際診療科は役立っているのではないかと思います。 
さらに、当院は外国人患者受入れ医療機関認証制度(J-MIP)の認証を受けており、成田という場所柄、多様な文化や言語背景を持つ患者さんに対応できる体制を整えているところです。

青墳 信之院長

成田赤十字病院は、地域に必要・信頼・期待される赤十字病院になることをビジョンに掲げています。現在、私たちは創立80周年に向けた『Road to 80th』という節目を歩んでおり、このビジョンに向けて、職員一同は赤十字の使命を胸に刻み、日々の業務に励んでいます。当院には欠けている部門がないと自負しており、これからもこの総合力を生かして、地域の患者さんが直面するさまざまな健康課題に向き合い、支えていきたいと思います。 

また、働く職員にとっても安心して力を発揮できる環境づくりを進めることで、その成果が患者さんへのよりよい医療につながるよう努めています。成田赤十字病院は、これからも地域社会の健康と福祉の向上に尽力してまいります。

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