院長インタビュー

総合力で地域の医療を守る――成田赤十字病院の取り組み

総合力で地域の医療を守る――成田赤十字病院の取り組み
青墳 信之 先生

成田赤十字病院 院長 血液腫瘍科

青墳 信之 先生

目次
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千葉県唯一の赤十字病院であり、赤十字の理念を体現する成田赤十字病院は1948年の開設以来75年の歴史を有し、地域の医療を支える中心的な病院としてさまざまな医療サービスを提供しています。

救命救急センターをはじめ、機能別のセンターを多数持ち、各分野で質の高い医療提供を目指しています。また、成田国際空港の近くに位置することから、国際診療科や感染症科といった診療科もあり、外国人の患者さんを含め幅広いニーズに対応しています。

多様な診療科による総合力で地域医療を支え続ける成田赤十字病院の取り組みについて、院長の青墳 信之(あおつか のぶゆき)先生にお話を伺いました。

外観
成田赤十字病院(提供:成田赤十字病院)

2023年に75周年を迎えた当院は、千葉県唯一の赤十字病院であり、北総地域の中心的な病院として地域医療の柱を築き上げてきた歴史のある病院です。また、周辺地域に限らず、茨城県南部など遠方からの患者さんも受け入れており、広範囲に医療サービスを提供しています。

当院は、救命救急センターをはじめ、地域周産期母子医療センターや造血細胞移植センター、脳卒中センターなど多数のセンターを有しており、それぞれの分野で良質な医療の提供に努めています。また、地域災害拠点病院や特定感染症指定医療機関としての役割を果たす一方で、2023年には地域がん診療連携拠点病院への再指定を受け、がん治療を担う中核的な施設としての一面も持ちます。

日常の診療においても、さまざまな診療科がそろっていることから、それぞれの特色と連携によって一人ひとりに合わせた包括的な医療の提供が可能となっています。

内観
院内の様子(提供:成田赤十字病院)

救命救急センターでは、三次救急(重症で緊急性の高い救急患者)を中心に広く対応しており、可能な限り“断らない救急”を実践しています。救命救急・集中治療を専門とする医師をはじめ、内科、循環器内科、外科、整形外科、小児科、新生児科、脳神経外科(脳神経内科)、産婦人科、マイナー科などの医師が当直をしており、総合的な医療支援を展開しています。こうした努力もあり、救急車の受け入れ台数は1年間で約7,000台程度*で推移しています。現在、救急病棟22床、ICU病棟8床となっていますが(2023年12月時点)、さらなる機能充実を目指し、新たに救命救急棟を建設する予定で計画を進めています。

*2023年度実績:7,122台、2022年度実績:7,143台

地域の出産や子育て支援において、地域周産期母子医療センターとしての役割も重要なものと考えています。産婦人科では、安心・安全に妊娠期間を過ごし、母児ともに元気に帰宅いただくことを大切にしています。また総合病院であることから、他科の協力が必要な場面でもスムーズに連携を取れるという特徴があり、合併症などを抱える方でも安心して受診いただけるのではないかと思います。

併設の新生児科には、NICU(新生児集中治療室)9床、GCU(新生児回復室)12床を備えています(2023年12月時点)。さらに、2018年には新生児搬送(病院の救急車で赤ちゃんをお迎えすること)も開始しました。

造血細胞移植センターは2019年に開設されたセンターで、白血病など血液の病気の治療に有効な造血幹細胞移植を専門的に行っています。当院の造血細胞移植センターの特徴の1つとして、AYA世代*の血液がんにも対応できることが挙げられます。これは、当院に小児血液腫瘍科(しょうにけつえきしゅようか)があり、成人の血液腫瘍科とスムーズに連携が取れることが大きく関係しています。小児・成人の診療科間で協力して移植治療を行うのは決して簡単なことではなく、多様な診療科をもつ当院ならではだと考えています。

* AYA世代……思春期・若年成人である主に15~30歳台の世代を指しています。

スタッフ
成田赤十字病院のスタッフ(提供:成田赤十字病院)

地域がん診療連携拠点病院として、がん診療においてもさらに専門的な治療への取り組みを強化しています。

がん治療においては、手術支援ロボット“ダヴィンチ”やIMRT(強度変調放射線治療)といった治療法も採用しています。また、さまざまな診療科を有することから、がんに加えてほかの病気を抱えた患者さんへの対応も可能です。たとえば、がん治療に加えて透析が必要な患者さんや、精神疾患を抱える患者さんもいますが、そうした複数の病気を抱える患者さんにも、各診療科の力を合わせて診療を行えることが当院の強みの1つといえるでしょう。

また、がん治療においては薬剤の副作用管理も重要であり、他科との連携が必要不可欠といえます。その点でも、多様な診療科を有する総合力を生かし、患者さん一人ひとりに寄り添う医療の実践を可能としています。

当院は、健康増進活動にも力を入れており、地域の方向けに公開健康講座を開催しています。医師やコメディカルのスタッフが依頼を受けて出向く出前講座もあり、100以上のテーマをそろえています。コロナ禍ではオンラインでの対応に切り替えましたが、今後もこうした活動で地域の健康を支え続けていきたいと思います。

当院は、成田国際空港の近くに位置することもあり、全国でも4か所しかない特定感染症指定医療機関として指定されています(2023年12月時点)。そのため、エボラウイルス病MERS中東呼吸器症候群)など感染症法で定められた特殊な感染症が疑われる患者さんの受け入れも行っています。また、新興感染症への対応に加え、院内感染対策や耐性菌への対策にも積極的に取り組んでいます。2018年からは、ワクチン・渡航外来を開設しており、各種輸入ワクチンも準備しています。

当院は空港に近いことから、外国人の患者さんも多く来られますが、言葉や文化の壁により診療が難しいことも少なくありません。そうした問題を解消するため、この科が設立されました。国際診療科では、外国人の患者さんと対応するスタッフの不安をできるだけ取り除き、スムーズな医療サービスを提供できるようサポートしています。たとえば、タブレットを用いた通訳サービスや外部通訳の手配、多言語での説明書の作成など、工夫を凝らして双方の不安を軽減できるようにしています。また、当院とつながりのある地域の先生方向けに、多言語での病気や治療についての説明書など資料へアクセスいただけるページがあるので、地域の先生方にも国際診療科は役立っているのではないかと思います。

青墳 信之院長

成田赤十字病院は、地域に必要・信頼・期待される赤十字病院なることをビジョンに掲げています。このビジョンに向けて、職員一同は赤十字の使命を胸に刻み、日々の業務に励んでいます。当院には欠けている部門がないと自負しており、これからもこの総合力を生かして、地域の患者さんが直面するさまざまな健康課題に向き合い、支えていきたいと思います。

また、働く職員にとっても優しい職場環境を実現することで、その恩恵が患者さんへと還元されるよう努めています。快適で効率的な職場は、よりよい医療サービスへと直結し、結果として地域の皆さんの健康増進に貢献することにつながると考えています。成田赤十字病院は、これからも地域社会の健康と福祉の向上に尽力してまいります。

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