院長インタビュー

“より愛される病院”を目指し、地域医療の未来を拓く愛媛大学医学部附属病院

“より愛される病院”を目指し、地域医療の未来を拓く愛媛大学医学部附属病院
杉山 隆 先生

愛媛大学医学部附属病院 病院長、愛媛大学 副学長、愛媛大学大学院 医学系研究科 産科婦人科学講...

杉山 隆 先生

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愛媛県東温市に位置する愛媛大学医学部附属病院は、愛媛県唯一の大学病院として地域の最後の砦を守る医療を実践し続け、もうすぐ開設から50周年を迎えようとしています。特定機能病院、ドクターヘリ基幹連携病院、災害拠点病院、一類感染症指定病院などの多彩な顔を持ち、愛媛県内はもちろん四国全域に高度な医療を提供する同院の役割や今後について、院長である杉山 隆(すぎやま たかし)先生に伺いました。

当院は、1976年の開院以来“患者から学び、患者に還元する病院”を基本理念に掲げ、地域に根差した医療を実践し続けてきました。特定機能病院、がん診療連携拠点病院、エイズ治療拠点病院にも指定され、“地域を守る総合病院”として機能しています。当院がある愛媛県東温市や松山市を含む松山医療圏は高齢化が進んでいることもあり、10年20年先を見据えた地域医療の構想を考えていく役割も当院が担っています。

また、近隣県に比べて県外に出る医師が少ないため、県内の他の病院へ当院から医師を派遣し、愛媛県全体の医療を支える役割も担っています。さらに当院は愛媛県災害拠点病院にも指定されており、南海トラフ地震等の災害発生時に地域の医療体制を守るための訓練も定期的に実施しています。

当院では命の関わるような重症な患者さんに対応する3次救急に対応しており、大学病院としてドクターカー(医師や看護師が搭乗し現場で医療行為を行える車両)をいち早く導入したり、愛媛県立中央病院とともにドクターヘリを受けいれるなど、愛媛県の全域を対象に高度な救急医療を提供しています。

救急科には日本救急医学会認定の救急專門医が5名在籍し、24時間365日対応を行っています。また、心血管疾患(心筋梗塞など)や脳血管疾患(脳卒中)など急ぎの対応が求められる疾患については、循環器内科や脳神経外科が同じく24時間365日の対応をしています。

当院は県内の高度急性期病棟の40%を占めており、とりわけ難易度の高い急性期の医療を提供しています。また、重度の合併症などで高度医療を要する患者さんを紹介されたり、新型コロナウイルス感染症の流行時には県内の重症患者の約9割を当院で受け入れるなど、愛媛県の医療の最後の砦とも言うべき存在でもあります。高度な医療の提供も当院の役割の1つで、たとえば肝臓や腎臓の提供、移植の手術を行っており、最近、心臓についても提供と移植ができることになりました。

高度な医療とともに、当院が重視しているのは、ロボットによる正確で体に開ける傷が小さな手術やカテーテルを使った手術(ハイブリッド手術室を経カテーテル大動脈弁植え込み術・TAVIなど)、内視鏡手術などの低侵襲(体への負担が少ない)な医療の提供です。低侵襲な医療は、退院までの日数も短くなり、さらに合併症の頻度が低くなる可能性があることから、当院では引き続き低侵襲な医療を追求していきます。

当院は地域がん診療連携拠点病院であり、手術療法、放射線治療、化学療法というがん治療の3本柱による集学的治療でほぼ全てのがんに対応するほか、緩和ケアといった治療以外のサポートにも力を入れています。

手術においては手術支援ロボット“ダビンチ(Da Vinci)”を普及初期から導入し、現在はダビンチ2台、ヒノトリ1台の3台体制で保険適用されるすべての手術に対応しています。放射線治療では新しい機器を積極的に導入して高精度の放射線治療を行っているほか、小線源治療にも実績をもっています。

また、当院の腫瘍センターでは近年進歩が著しい化学療法を提供しており、落ち着いた治療室で外来による治療を受けていただくことが可能です。当院はがんゲノム医療連携病院であり、京都大学医学部附属病院との連携のもと当院でがんゲノム検査を受けていただき、患者さんに合った薬剤が見つかった場合は、化学療法を受けることができます。

さらに、終末期の患者さんとご家族をサポートする緩和ケアでは、当院の緩和ケアセンターの医師や看護師、管理栄養士や薬剤師といった多職種による緩和ケアチームが患者さん、ご家族の痛みや精神的な辛さに向き合い、患者さんが自分らしく生活していただけるよう集学的な支援を行っています。

子宮のがんや乳房のがんなど、女性特有のがんは20代から40代といった若い世代でもかかってしまうことがあります。現在はがん治療の進歩によりがんにかかっても生存率が高くなってきており、そこで問題になるのががん治療と生殖機能の両立です。

一般的に、がん治療を行うと生殖機能の低下と関連します。そこで当院では“愛媛県がん・生殖医療ネットワークEON”を県内のがん治療施設、生殖医療施設とともに立ち上げ、がん治療の前に生殖細胞を温存し、治療後にお戻しして妊娠をしていただくがん生殖医療の取り組みを始めました。具体的には他院との連携を行いながら卵巣組織、未受精卵子や受精卵の凍結保存を行い、がん治療後の生殖医療と妊娠・分娩管理も引き続き行います。

当院は県内唯一の医育施設であり、愛媛県の皆さんへの医療の提供だけでなく、愛媛県の医療の将来を支える医師の育成を行う使命も有しています。

医師の育成にあたっては医学部の卒前から卒後まで一貫性のあるカリキュラムに基づく教育体制を構築し、知識や技術だけでなく全人的な医療を身に付けることに注力しています。また、当院の臨床研修センターには各種診察シミュレータやトレーニングシミュレータが揃っており、医師はもちろんのこと、看護師等、多職種も利用しています。さらに、当院ではキャダバートレーニング(ご遺体を使った手技向上トレーニング)を全国の中でも精力的に実施し、より実践的な医学的知識や技術の向上を図っています。本トレーニングは年間500件にも達しており、ご協力いただいている皆様のご理解とご支援にこの場をお借りし感謝申し上げます。

さらに、FM愛媛で放送中の『ウイークエンドクリニック』という番組を通じて、当院に関する情報や医療のトピックス等を広報し、患者さんを含む一般の皆さんへの医療に関する適切な情報共有も意識しています。患者さんからいただくコメントや声援も、私たちの活動の励みとなっています。

また当院では、先端医療創生センターを中心として、様々な領域における橋渡し研究を推進し世界レベルの新しい医療を創造しています。臨床研究と基礎研究の有機的連携による研究基盤の構築を目指し、バイオバンクを設立しました。また、臨床研究支援センター、臨床研究データセンター、臨床研究クオリティマネジメント部、臨床研究COIマネジメント部を設置し、臨床研究の質を向上させる体制を整備しています。

さらに当院では、総合診療サポートセンターを設置し、入院前・入院後のサポートや、退院後の患者さんの復帰支援を行っております。他の圏域からも治療を受けられる体制を整えており、地元に戻っても診てもらえる施設が無い場合には、通院可能な施設をコーディネートしています。当院ならではの総合的な患者さん中心のきめ細やかなサポート体制を整え、患者さんの安心・安全な医療を提供しております。

当院は「患者さんから学び、患者さんに還元する病院」を理念としています。この理念を実現するための3つの柱として、

  1. 愛媛県民から信頼され愛される病院(診療)
  2. 患者さんの立場に立てる医療人の養成(教育)
  3. 愛媛で育ち、世界に羽ばたく医療の創造(研究)

を目標として努力しています。

また、医療安全に対する取り組みも尽力しています。当然ながら高度医療の遂行にあたっては、安心・安全であることが前提条件となります。知識・技術を日々研鑽することはもちろん、医療事故防止対策の徹底・報告のあったインシデントの分析などにも病院全体で取り組み、患者さんが安心して医療を受けられる環境の整備に努めています。

当院は今後とも県民の皆さんを守るべく全力を尽くし、より愛される愛大病院を目指します。

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  • 愛媛大学医学部附属病院 病院長、愛媛大学 副学長、愛媛大学大学院 医学系研究科 産科婦人科学講座 教授

    杉山 隆 先生

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