院長インタビュー

“地域社会に信頼される病院”を目指す東京女子医科大学八千代医療センター

“地域社会に信頼される病院”を目指す東京女子医科大学八千代医療センター
新井田 達雄 先生

東京女子医科大学 八千代医療センター 病院長

新井田 達雄 先生

目次
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東京女子医科大学八千代医療センターは2006年の開設以来、地域の中核的な病院としての役割を担ってきました。小児科と産科を柱に救命救急やがん診療に幅広く対応する同センターの特徴や今後について、病院長である新井田 達雄(あらいだ たつお)先生に伺いました。

外観
外観(東京女子医科大学八千代医療センター提供)

当センターは八千代市からの誘致を受けて、2006年12月に誕生しました。当時の八千代市は、市民の命と健康を守る医療提供体制が十分ではなく、救急患者の大半を市外の病院に搬送せざるを得なかったと聞きます。そうした状況を打開しようと八千代市民10万人以上にのぼる署名が集まり、東京女子医科大学と八千代市の合意のもとに当センターが設立されました。このとき誘致に向けて活動した組織は“八千代医療センターを支える市民の会”と名称を改め、今もなお病院運営を支え、地域医療を守る活動に尽力してくださっています。

2006年の開設当初は小児科と産科を柱に診療していた当センターですが、2016年にはヘリポートを備えた第2病棟が新設され、2018年4月には病床数が500床を超えるまでになりました。千葉県における小児周産期医療を担う拠点病院であることに加え、地域医療支援病院、三次救命救急センターとしての役割を担い、地域の皆さまの暮らしをしっかりと支えてまいります。

当センターは日本小児総合医療施設に認定されており、小児全般の外来診療に加えて、アレルギー糖尿病・内分泌、発達・神経などの専門外来を開設しています。また八千代市医師会と共同で“やちよ夜間小児急病センター”を運営し、夜間の小児救急についても365日体制(※2024年4月より体制を一部変更)で受け入れを行っています。

八千代市は東京メトロ東西線の延伸などに伴って若い世代が流入し、昨今のリモートワークの普及によってファミリー世帯の移住も増加傾向にあります。少子高齢化が叫ばれる中にありながら子どもの人口増加がみられる、非常に珍しいエリアとなっています。当センターが小児科と産科を柱に診療をスタートした背景には、この地域に暮らす子どもたちの命と健康を守る意味がありました。2021年4月には千葉県より小児救命救急センターの指定を受け、日々県内全域から搬送されて来る子どもたちの治療にあたっています。

小児科と並ぶもう1つの柱が、ハイリスク妊娠・分娩に対応する産科(母体胎児科)です。近年の晩婚化に伴って第1子の出産年齢も上昇傾向にあり、分娩リスクの高い妊娠に対する医療や高度な新生児医療を行える機能が求められています。総合周産期母子医療センターは、母体・胎児集中治療室(MFICU)を含む産科病棟や新生児集中治療室(NICU)を備えた医療機関を指し、千葉県において総合周産期母子医療センターに指定されている医療機関は当センターを含む3施設のみとなっています(2024年3月時点)。

総合周産期医療母子医療センターは母体胎児科と新生児科の2つの診療科で構成されており、赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる頃から新生児期まで一貫した診療を行っています。また当センターや他院にて生まれた赤ちゃんに何らかの異常がみられた場合には、医師、看護師、薬剤師、臨床工学士、理学療法士などがチームとなり、新生児集中治療室にて高度かつ専門的な治療を行うことが可能です。

八千代市は“住宅団地発祥の地”とされ、公団八千代台団地の入居が開始された1957年当時に移り住んだ方々は今、後期高齢者と呼ばれる世代になりました。この地域に根をおろして生活してきた方々を、地域の中で支えていくことも私たちの大切な役割です。ご高齢の方に多くみられる脊椎管狭窄症(せきついかんきょうさくしょう)などは整形外科、心不全をはじめとした心臓・血管の病気は循環器内科/外科が治療を担当し、早期の消化器がんについては体への負担が少ない内視鏡による治療をご提供することが可能です。

くも膜下出血脳梗塞(のうこうそく)をはじめとした脳血管障害を担当する脳神経内科・外科では、予防的な治療から急性期の治療まで脳神経外科領域全般の診療を行っています。脳卒中専門の治療室(SCU)やMRI、CTをはじめとした充実した設備をいかして、24時間365日の救急医療体制を整えていることが強みです。

地域の医療機関にはそれぞれに異なる役割があります。当センターはこの地域における急性期医療を担いますが、退院後の患者さんが元の生活に戻れるようになるまでサポートすることはできません。私たちが地域の急性期医療を一手に担う代わりに、リハビリテーションや在宅医療は地域の他の医療機関が担当しています。そうして役割分担をしなければ、継続して医療を提供していくことが難しくなってしまうのです。訪問診療のサポートを目的に設立されたNPO法人“八千代ケアネットワーク”などは、県が進める“循環型地域医療連携システム”に欠かせないものだと言ってよいでしょう。

“八千代医療センターを支える市民の会”から市民の皆さんに周知されているとおり、日常的な病気はかかりつけの先生にご相談いただき、より専門的な検査や治療が必要になった場合は当センターが診療を担当させていただきます。地域の医療機関が連携し、地域の患者さんを地域の中で診ていく仕組みづくりは急務であり、当センターも環境整備に積極的に取り組んでいます。

当センターには“入退院支援センター”という部署があり、入院前・退院後の患者さんをトータルサポートしています。当センターがご提供できるのは急性期医療のみですが、退院後の患者さんを放り出すようなことはできません。たとえば整形外科で手術を受けられるのであれば、“術後は当院にて○日間リハビリをしていただいた後、ほかの病院に移ってさらに○日間リハビリをしていただく”などの見通しを、患者さんやご家族に向けて丁寧にご説明します。患者さんに継ぎ目のない医療をご提供するため、八千代市という“チーム”で支えてまいりますのでご安心ください。

新型コロナが2類から5類に移行し、私たちの暮らしにもようやく日常が戻ってきたように思います。今後はコロナ以前に実施していた“市民公開セミナー”や“やちよ健康フェスタ”なども通常開催に戻し、市民の皆さまに医療をもっと身近に感じていただけるよう努めてまいります。

*病床数や診療科、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年3月時点のものです。

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  • 東京女子医科大学 八千代医療センター 病院長

    新井田 達雄 先生

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