千葉県白井市にある千葉白井病院は、急性期から回復期、社会復帰までの医療を展開する地域の中核的な病院です。病院と介護付き有料老人ホーム、介護老人保健施設が一体となって医療サービスを提供しており、“医療と介護の融合”“土日の通常診療”“救急医療”“回復期リハビリテーション”の4つを強みにしています。
シームレスに地域医療を提供している同院の役割や今後について、院長の前村 誠先生にお話を伺いました。
当院は2015年12月に『地域のかかりつけ病院として、患者さんから信頼される医療と看護を提供する』ことを理念に掲げ、千葉県白井市で開院しました。
当院の特徴は、千葉白井病院を中心にして、介護付き有料老人ホームのウィズホスピタル千葉白井と、介護老人保健施設のアモールケア白井の3つの施設が協力し、一体となって急性期からリハビリテーション、介護、在宅医療まで、包括的な医療サービスを提供していることです。また、救急においては印旛医療圏において2次救急(入院や手術を要する重症患者への救急医療)を担っているほか、土日も通常診療を実施しており、お子さんから働き盛りの世代、そして高齢者まで、さまざまな年齢層の方に対応した幅広い医療を提供しています。
当院がある千葉県白井市の人口は約62,000人で(2024年3月末時点)、1980年の人口約25,000人と比較すると増加傾向にあります。それに合わせて65歳以上の高齢者も増加しており、2040年には約20,000人に達すると予想されています。このように、白井市では人口の増加と高齢化が進んでいますが、中核的な医療施設が少なく、当院のほかでは白井聖仁会病院と北総白井病院の3つしかありません。
そこで白井市では、充実した医療サービスを提供できる体制を目指して、患者さんの情報をIT技術を用いて共有する“バイタルリンク(患者情報管理システム)”を導入しました。当院もこのシステムに参加し、住まい・医療・介護・予防・生活支援といったサービスを一体的に供給できるケアシステムの構築に取り組んでいます。
当院は白井市、成田市、佐倉市、四街道市、八街市、印西市、富里市、酒々井町、栄町の9市町で構成される印旛医療圏で2次救急を担っています。同医療圏はとても広いことから、実際の救急で受け入れているのは白井市と印西市を中心にしたエリアの患者さんです。
白井市の救急に関しては、当院は3次救急(生命に関わる重症患者さんに対応する救急医療)を担っている印西市の日本医科大学千葉北総病院の次に救急患者さんの受け入れ件数が多い病院です。病床の稼働率は月によっては100%を超えることもあります。
そこで、救急隊からの要請にもっと応えていくために、現在の一般病棟50床・回復期病棟50床から一般病棟60床・回復期病棟40床に変更することも検討しています。
当院の整形外科は整形外科部長の樋口先生を中心に、人工関節センター長の加藤先生、外傷センター長の本田先生、脊椎脊髄疾患を専門とする巽先生の4人体制で診療を行っています。中でも本田先生は、当院が白井市の中核的な病院として大規模災害発生時にどのような役割や機能を果たせばよいのか、市役所の方々との検討委員会に参加していただくなど、多方面で活躍されています。
診療内容については、人工関節センターで変形性股関節症や大腿骨頭壊死症、リウマチ性股関節症、大腿骨頚部骨折などの症例で全人工股関節置換術や人工骨頭挿入術を行っています。たとえば全人工股関節置換術では、患者さんに合ったインプラントを設置することが重要です。そこで当院では、術前に3次元術前計画ソフトウェアを用いて患者さんのCT画像を解析し、骨の形状に合ったインプラントの種類やサイズ、角度などを把握し、より正確な手術を行っています。また、社会復帰するまでが治療と考え、できるだけ筋肉や腱を切らない手術を心がけており、従来の股関節手術に比べると早期離床と早期退院が見込めるようになりました。
脊椎・脊髄病センターでは常勤の巽先生と2024年3月まで常勤であった非常勤の中山先生を中心に、脊椎疾患全般を診療しており、手術は年間で140~170件ほど実施*しています。
*2022年1月~12月実績:脊椎脊髄手術総件数144件(内視鏡脊椎手術91件、低侵襲脊椎手術53件)
消化器内科ではERCPなどの胆道系の検査なども実施しています。白井市で胆道系の検査ができる病院は限られているため、患者さんが救急で運ばれてくることが多いです。また、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)と下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)も土日を含めてほぼ毎日実施できる体制を整えており、検査件数は増加傾向にあります。
消化器外科では胃がんや大腸がん、胆嚢結石、鼠径ヘルニア、原発性・転移性肝がんなど消化器全般の手術を行っています。腹腔鏡下胆嚢摘出術や鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術、胃がんに対する幽門側胃切除、大腸がんに対する腹腔鏡下大腸切除など腹腔鏡を使った患者さんの体への負担が少ない手術を積極的に行っています。
2022年には薬剤調剤のためのクリーンベンチを備えた調剤室を整備し、進行がん患者さんに対する術後の補助療法として化学療法が実施できるようになりました。
抗がん剤の治療は副反応や副作用が懸念されることから、細心の注意を払っています。在籍する3名の薬剤師に協力してもらい(2024年3月時点)、看護師と担当医師のトリプルチェックをして、その患者さんに抗がん剤を投与してよいのか確認し合っています。副反応や副作用などのトラブルを避けるためには、いろいろな人の視点からチェックすることが大切だと思います。
全国的に高齢化社会が急速に進んでおり、当院のある白井市も例外ではありません。そうした地域医療の課題を考えたとき、地域の医療機関が連携して、地域の皆さんの健康と暮らしを守っていかなければなりません。
当院は近隣のクリニック・診療所へのご挨拶・訪問や、介護サービス施設への訪問診療などを通して、先生方との関係づくりを行っています。合わせて、年に1回は近隣のクリニック・診療所の先生方と当院の先生たちの懇親会を開催しています。お互いに顔の見えるお付き合いをしていくことが、円滑な連携医療につながると考えます。
私が医師になりたての頃は、超高齢者といえば75歳以上の方を指していました。しかし現在では70歳代の方はまだ若いといった印象が強く、80歳を超えてから初めて超高齢者だなと感じます。
それほど現在の日本は高齢化が進んでおり、それに伴って患者さんが求める医療サービスも大きく変わってきました。そうした地域のニーズの変化に合わせ、当院も提供する医療サービスと看護サービスの内容を見直すとともに、地域の医療施設との連携を図りながら、シームレスに医療サービスを提供していきたいと考えています。
最後になりますが、当院はこの地で開院して以来、“地域のかかりつけ病院”として患者さんから信頼される医療と看護を提供することをモットーにしてきました。今後も病院・地域一体となって、患者さんやそのご家族の皆さんが安心して医療を受けられるよう、地域医療底上げのために尽力したいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
千葉白井病院 院長
前村 誠 先生の所属医療機関
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まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。