院長インタビュー

高齢化が進む北九州市で、切れ目のない医療を提供する国家公務員共済組合連合会 新小倉病院

高齢化が進む北九州市で、切れ目のない医療を提供する国家公務員共済組合連合会 新小倉病院
塚本 浩 先生

国家公務員共済組合連合会 新小倉病院 病院長

塚本 浩 先生

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福岡県北九州市にある国家公務員共済組合連合会 新小倉病院は、1965年に総合病院として開設されました。当初は国家公務員の方々を対象に診療していましたが、現在は地域の患者さんを広く受け入れています。北九州医療圏における急性期の病院として、発展を続けている同院の役割や今後ついて、病院長の塚本 浩(つかもと ひろし)先生にお話を伺いました。

先方提供
病院外観(新小倉病院ご提供)

当院は国家公務員共済組合連合会により、1965年に北九州の地で開業しました。当初の病床数は200床で、国家公務員の皆さんを対象に診療していましたが、地域の患者さんを広く受け入れるようになり、許可病床が300床まで増えました。また、2014年から2016年にかけて地域包括ケア病棟を開設し、現在は一般病床127床、地域包括ケア病棟132床となっています。療養病床もありますが、急性期と回復期の診療に医療資源を集中させるため現在は休床しています。

当院は北九州医療圏で二次救急(入院や手術を要する重症患者への救急医療)の中核的な役割を担っています。近隣には大学病院はありませんが急性期の病院が6つほどあり、それぞれ得意分野を中心に担いながら分業のような体制で患者さんを受け入れています。当院は急性期を過ぎた高齢の患者さんを紹介いただくことが多く、地域包括ケア病棟で受け入れています。

当院のリウマチ科では、膠原病(こうげんびょう)関節リウマチの患者さんを診療しています。膠原病は免疫の異常(自己免疫)により全身に炎症が起こる病気で、その1つが関節リウマチです。関節リウマチは手や足などさまざまな関節が腫れて痛む病気で、放置すると軟骨や骨が破壊され、関節の脱臼や変形などが生じる関節破壊が起こります。そのため、当院では積極的に関節超音波検査を実施し、早期診断・早期治療に努めています。関節リウマチの患者さんは、少し前までは50歳代の方に多く見られましたが、今は60歳前後に多く、70~80歳代の患者さんも増えました。全国では70万人くらいの患者さんがいると言われています。

膠原病には、両頬に現れる蝶のような形の赤い発疹(ほっしん)が特徴的な全身性エリテマトーデス(SLE)や、皮膚や血管、消化管、心肺、腎臓など全身の臓器が硬化していく全身性強皮症などもあります。関節リウマチを含め、いずれの病気も改善が難しい病気ですが新しい治療薬なども登場し、治療は年々進歩しています。関節の痛みを加齢による慢性的な痛みと勘違いをして、そのまま放置している患者さんもいますが、もしかしたら関節リウマチかもしれません。我慢せずに診察を受けていただけるとうれしいですね。

産業医科大学で准教授を務めていた濵砂 良一(はますな りょういち)先生が、2017年に当院の泌尿器科の部長に着任し、泌尿器科の診療体制が強化されました。午前中に外来の診療を行い午後は手術の時間にあて、患者さんの体への負担が少ない腹腔鏡下手術(ふくくうきょうかしゅじゅつ)や内視鏡手術を積極的に行っています。“尿が出ない・血尿が出た”など、泌尿器科の救急にも対応できる体制も整えました。また、濵砂先生は感染症に関する知見が豊富であることから、膀胱炎前立腺炎、性感染症を専門的に診察・治療をする泌尿器科感染症外来を2019年4月に開設し、難しい症例にも対応しています。そのほかにも、高齢の患者さんがかかりやすい尿路感染症や、排尿障害などにも力を入れて診療をしています。

内科医と外科医が協働して、食道や胃、小腸、大腸、胆嚢、胆管、膵臓(すいぞう)、肝臓などの幅広い消化器疾患の内視鏡的な診断と治療を行っています。検査では通常の内視鏡検査に加えて、拡大内視鏡やNBI内視鏡、超音波内視鏡などの検査を行い、食道や胃、大腸に早期のがんが見つかれば、内視鏡的粘膜下層切開剥離術(ないしきょうてきねんまくかそうせっかいはくりじゅつ)(ESD)を行います。ESDは早期がんの中でも初期のがんに対して行われる治療法で、ESD適応外のがんに対しては腹腔鏡下手術を行っています。当院には消化器内視鏡と消化器病、消化器外科の専門医*がおりますので、安心して受診いただけると思います。

がん以外では、胆嚢の病気に力を入れています。特に、胆管炎・胆嚢炎などは高齢の患者さんがかかるケースが多く、発熱で当院を受診して、最終的には胆管炎・胆嚢炎で内視鏡による治療を受けるケースもあります。発熱や腹痛などの症状がみられたら、放置せずに受診することが大切です。

*消化器内視鏡と消化器病、消化器外科の専門医……日本消化器内視鏡学会、日本消化器病学会、日本消化器外科学会それぞれに認定された専門医を指す。

地域の病院・診療所の先生方と診療情報を共有する、医療連携ネットワークシステム“ひまわりネット”を開設しました。当院でのCT検査やMRI検査などの予約がオンラインで24時間可能で、検査で撮像された画像や読影レポートは、ネットワークを通して閲覧することができます。処方内容も共有でき、かかりつけ医の先生はひまわりネットを使って、画像などの情報を見ながら患者さんの診療をすることが可能です。今後はこうしたネットワークをさらに広げ、地域の皆さんに質の高い医療サービスを切れ目なく提供できるようにしてまいります。

当院がある北九州市の高齢化率は30.7%(2020年9月)で、政令指定都市の中で一番高く、75歳以上の人口が増加しているといった特徴があります。実際、当院に受診される患者さんの多くが70~80歳代で、90歳代以上の方も少なくありません。今後は、患者さんの高齢化がさらに進むと予想されることから、当院では高齢の患者さんに必要な検査・治療を専門的に行う老年内科(高齢者総合内科)を、2020年に開設しました。

高齢者の病気は個人差が大きく、慢性疾患が多いといった特徴があります。複数の病気を持ち、さまざまな医療機関から多数の薬を処方され、治療を続けても症状が改善しないケースも少なくありません。そのため、老年内科ではそれぞれの患者さんに必要な検査・治療を行うなど、包括的できめ細やかな医療サービスを提供し、住み慣れた地域で長く生活していただくための支援をしています。また、体の力が弱くなり、寝たきりになる前の状態“フレイル”の患者さんについては、栄養療法やリハビリテーションにも力を入れています。

私がリウマチの専門医(日本リウマチ学会認定)であることから、膠原病・リウマチの診療には強い思いを抱いています。特に、膠原病・リウマチは認知度が低く、原因不明の発熱や関節の痛みで悩んでいても、どこに受診すればよいのか分からず放置されてしまうことがあります。そのような症状でお悩みの方は、リウマチ科を受診していただければ原因が判明する可能性があります。また、膠原病やリウマチであることが分かっている患者さんでも、症状が改善しないことから治療をあきらめている方も散見します。しかし、近年はいろいろな薬がでてきており、正確な診断に基づいて適切に投薬すれば症状がかなり改善するようになりました。あきらめずに治療を続けていただけるとうれしいです。私は患者さんに、口癖のように「100歳まで頑張りましょう」と言っています。目標を持つと健康的になりますので、ぜひ目標をもって頑張っていただければと思います。

*病床数や診療科、提供している医療の内容等についての情報は全て2024年4月時点のものとなります。

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