京都西山、“竹の里”として知られる乙訓地域の中核的な病院としての役割を担ってきた済生会京都府病院。2022年6月に西山天王山駅近くに新築移転し、病院名を京都済生会病院と改めて新たなスタートを切りました。
そんな同院が担う役割や今後の展望について、京都済生会病院 支部長である吉田 憲正先生にお話を伺いました。
当院は1929(昭和4)年に済生会京都府病院として誕生しました。その後1983(昭和58)年に病院機能を京都府北区から長岡京市今里南へと移転。向日市・長岡京市・大山崎町からなるいわゆる乙訓地域の中核的な病院として、急性期医療を中心にした医療を展開してまいりました。
今里南の地で40年近く診療を続けた後、現在の場所へ新築移転したのは2022(令和4)年6月でした。新しい病院は西山天王山駅から徒歩5分、さらに京都縦貫自動車道・長岡京インターチェンジのすぐお隣という立地にありますので、地域の枠を超えて多くの患者さんに受診しやすい環境になったのではないかと思います。
病院が新しくなったことに伴って当院のコンセプトも見直しました。私たちが目指すのは “地域に貢献できる、地域に根ざした病院”であり、医療を通じて広く地域社会に貢献したいと考えています。この取り組みの1つに“ソーシャルインクルージョン”があります。ソーシャルインクルージョンとは、地域に暮らす方々を誰1人残さずに地域の中で支えていくという考え方であり、済生会の理念にも通じるものがあります。
高齢化が進む現代社会においては医療と福祉がしっかりと連携し、病気やけがの治療から日常生活に戻るまでを切れ目なくサポートする仕組みが求められます。地域の各施設と連携することにより“地域完結型医療”をご提供できるよう、スタッフ一丸となって取り組んでまいります。
当院には内科・外科を合わせて20以上の診療科があり、70名ほどの常勤医師がおります。診療科ごとにエキスパートといえる医師が在籍しているのはもちろんのこと、医療の最初の窓口として総合診療内科を開設していることも特徴です。同科では消化器内科、呼吸器内科、腎臓内科、糖尿病内科など各領域を専門としつつ総合診療の経験を積んだ医師が曜日当番制で患者さんの診療にあたり、全身の状態を総合的に検討したうえで適切な診療案内をさせていただきます。
当院のスタッフはモチベーションが高く、さまざまなことに熱意を持って自主的に取り組んでくれています。そのような取り組みが評価され、最近では日本人間ドック学会事務局から“新規賞”という賞をいただいたほか、病院広報アワード2023においては2つの部門で企画賞を受賞したこともありました。患者さんのためを思って自ら行動するスタッフが集まってくれていることは、非常に誇らしいことだと思っています。
新病院の外観や内装は、ほど近い場所にある細川ガラシャ(明智 光秀の娘)ゆかりの勝龍寺城をイメージした色合いになっており、一見すると病院らしくない印象があるかもしれません。病室は全体の半数近くが個室となっており、4人部屋の病室もゆったりとしたスペースを設けています。
患者さんに快適にご利用いただける病室には、看護師をはじめとしたスタッフの負担軽減につながる機能も備わっています。新築移転と同時に新たにベッドサイド端末を導入し、その日の検査予定や食物アレルギーなど、患者さんに関わる全ての情報をベッドサイドで確認できるようになりました。
また病院の敷地内には乙訓医師会の建物(1階・病児保育室/2階・休日応急診療所/3階・医師会事務所)があります。このため休日診療にお越しになった患者さんがより高度な医療を必要とする場合、二次救急医療機関である当院が診療を引き継ぐことができます。こうして地域の開業医の先生方と密に連携できる体制があることも、当院にとって大きな強みになっています。
当院が目指す“地域完結型医療”を実現するため、新たに導入を予定しているのが手術支援ロボット・ダヴィンチです。これまで低侵襲手術と言えば腹腔鏡下手術が主流でしたが、ダヴィンチはさらに一歩進んで、患者さんの体への負担が少ない手術を可能にします。
ダヴィンチ導入後は泌尿器科領域の前立腺手術に使用するほか、消化器外科や産婦人科での使用も検討しておりますのでご期待ください。
私は2019年10月に院長を拝命し、コロナ禍や病院の新築移転を経て現在に至ります。新病院になってから長く“コロナ病棟”として運用していた病棟がようやくその役目を終えようとしている今、地域の方々に“頼れる病院”として認識していただけているのではないでしょうか。今後も地域に根ざした病院として、地域に暮らす方々をしっかりと支えていきたいと考えています。
年に一度開催する“済生会フェア”では、院内を含めた敷地内にマルシェが並んだり、子どもたちが楽しめる体験イベントがあったり、市民公開講座なども開催しています。行政や外部企業の協力をいただきながら地域の方々と触れ合えるこのイベントは、病院に気軽に足を運んでいただくための取り組みでもありますので、ぜひお越しください。
*診療科や医師数、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年8月時点のものです。