一般財団法人温知会 会津中央病院は、福島県の会津医療圏と南会津医療圏をカバーする3次救急医療施設です。
会津地域唯一の3次救急医療施設としてだけでなく、地域がん診療連携拠点病院や災害拠点病院(地域災害医療センター)としても日々奮闘する同院の強みや、注力している取り組みなどについて、院長の前田 佳一郎先生にお話を伺いました。
会津中央病院は、1977年4月に財団法人白楡会 総合会津中央病院として開設されました。開設から4年後の1981年10月には救急センターを開設し、その後1986年4月には、特に重篤な患者さんを受け入れる3次救急医療施設(救命救急医療機関)として指定を受けました。その後、救命救急センターの開設やドクターカーの導入、災害拠点病院(地域災害医療センター)の指定などを経て、2002年1月に現在の名称である財団法人温知会 会津中央病院に名称変更しました。
さらに、その後も地域がん診療連携拠点病院の指定やヘリコプター(ドクターカーと連携して運用を行なう小型ヘリ)の導入、がん治療センターや透析センターの開設など、より充実した医療提供のため進化を続けています。
福島県には当院を含め3次救急医療施設の指定を受けている病院が4院ありますが、会津若松市をはじめとする17市町村で構成される会津医療圏・南会津医療圏に所在する3次救急医療施設は当院のみです。当院は、地域の救急医療を守る“最後の砦”として高度な医療技術と設備を整え、日々の診療を行っています。
当院の救命救急対応は、会津医療圏および南会津医療圏という、会津地方にある2つの医療圏をカバーしていますが、この2つの医療圏を合計した面積は福島県の約半分を占め、千葉県とほぼ同じくらいの広さがあります。
さらに会津地方は、福島市や郡山市とは奥羽山脈を隔てているという地理的事情もあって、こうした都市部に患者さんを搬送しようにも“救急車では時間がかかり、ドクターヘリは峠の天候不良時などには使えない”といった困難が伴います。だからこそ、命に関わる重篤な症状の患者さんへの対応を、会津地方の医療圏内だけで迅速に行える体制が必要です。そして当院には、その大きな役割を担う使命があります。
こうした状況に対応すべく、当院では24時間365日体制で稼働している救命救急センターを有しており、さらにドクターカーや、ドクターカーと連携して運用する小型のヘリ“ラピッドレスポンスヘリ”を所有しております。
ドクターカーは医師が同乗するだけでなく除細動器や人工呼吸器・超音波診断装置などの医療機器を搭載している“動く集中治療室および手術室”であるため、搬送しながら治療を行うことが可能です。また、患者さんの容態によってはドクターカーだけでなくラピッドレスポンスヘリを使って医師・看護師を先行させ、より早く治療を開始することもあります。
また救命救急センターは、救急科の医師と各分野の専門医がしっかり連携している点も大きな強みです。たとえば脳梗塞や脳出血などの患者さんは脳卒中センターが対応し、交通事故などによる外傷がひどい患者さんには外傷再建センターが対応するなど、患者さん一人ひとりに合わせ適切な治療を迅速に行えるよう体制を整えています。
質の高いがん診療を実現するためには、検診から診断、治療、さらに緩和ケアにいたるまでを、1か所でシームレスに提供できる体制づくりが大切だと考え、2022年に“がん治療センター”をオープンしました。その際に、放射線治療機器であるリニアックも一新し、さらに福島医科大学附属病院と連携して大学病院と同等のがん治療が提供できる体制も整えました。
がん治療センターでは、複数の治療方法やさまざまな視点・アプローチを組み合わせることで幅広い治療効果が期待できる集学的治療を行っています。手術療法・化学療法・放射線療法・緩和ケアを当センターに集結させることにより、スムーズな集学的治療の実現を可能としました。
また、化学療法に関しては、化学療法をより安全かつ快適に行うための化学療法室を設置しているだけでなく、化学療法による脱毛を抑制するための頭皮冷却療法*も導入しています。そのほかにも美容室のスタッフによるウィッグの相談を行うなど、患者さんに寄り添った治療を行えるよう取り組んでいます。
*頭皮冷却療法……対象者は乳がんで抗がん剤治療を受ける方。保険適用ではないため自己負担(1回 5,500円(税込)+頭皮冷却キャップ(消耗品) 2,750円(税込))。
当院は災害拠点病院(地域災害医療センター)やDMAT指定医療機関として指定を受けており、災害時の医療対応にも積極的に取り組んでいます。
DMAT(Disaster Medical Assistance Team)は、災害発生時に被災地で救急医療を提供するための医療チームであり、被災地域の都道府県の要請に応じて迅速に派遣できるよう体制を整えています。東日本大震災や能登半島地震などでも、当院よりチームの派遣を行いました。
今後もDMAT派遣要請にできるだけ迅速に応えられるよう“いつ、どこで災害が発生するか分からない”という意識を常に持ち続け、よりよい体制づくりを目指していく所存です。
当院は市民公開講座“会津フォーラム”や、院内およびWEBでの医療講演会など、さまざまな方法で地域の皆さんに健康・医療に関する情報を提供しています。
中でも2023年9月16日に、 ヒルズ天生(スーパーやカフェ、介護施設を併設した複合施設)で開催した『第6回 会津フォーラム』では、講演を行うだけでなく、青空ヨガやフィットネス・マッサージ体験、福島医科大学理学療法学科による歩行分析や、看護・がんに関する相談窓口、そして展示ブースも充実させたイベントとし、多くの方にご来場いただきました。
よりよい地域医療を実現するためには、地域の方々にも健康や医療への関心を持っていただくことが大切だと考えております。当院は今後も積極的な情報発信を続けることで、地域の皆さんに健康や医療に関する知識を得ていただける機会を提供していきたいと考えています。
当院は“入院中の患者さんにも、できるだけ普段と同じような生活をしてもらいたい、癒しを感じてもらいたい”という思いから、院内施設を充実させることにも力を入れています。
たとえば、ウエスト棟の地下1階には情報ギャラリーや栄養指導室だけでなく美容室やカフェ、コンビニエンスストア、クリーニング店などもあるアメニティストリートがあります。また、7階には美しい花や木、風景を楽しめる屋上庭園、個室に入院されている患者さん専用のサロンなどもあります。
また、吹き抜けがあるウエスト棟のエントランスは明るく開放的な雰囲気で、待合ロビーでは大型水槽内を泳ぐ熱帯魚を見ることができます。さらに、定期的にグランドピアノの生演奏も行われています。
当院は会津地域における救急医療の“最後の砦”として、常に質の高い医療提供を心がけていますが、現状に満足してはいけないと考えています。少子高齢化が進行しているだけでなく、病気も多様化しているこの時代に、さらに質の高い医療を提供していくためには、私たち医療機関も進化・発展し続けていかねばなりません。
そのための取り組みとして、当院では医師や看護師などの各医療スタッフが相互に知識や技術を共有し、より効果的かつ安全な医療提供ができるよう、チーム医療の推進を図っています。
地域の皆さんに“ここ(会津地域)には会津中央病院があるから安心”と思っていただけるよう、今後も進化・進展のためにさまざまな取り組みを推進していきたいと考えておりますので、どうか皆さんの温かいご理解とご支援をお願いいたします。
*診療科、医師、提供する医療の内容等についての情報は全て、2024年9月時点のものです。
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。