院長インタビュー

患者さんの人生を丸ごと支えるために。地域に全人的医療を提供する公立甲賀病院

患者さんの人生を丸ごと支えるために。地域に全人的医療を提供する公立甲賀病院
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

滋賀県甲賀市にある公立甲賀病院は、甲賀市・湖南市地域をカバーする中核的な病院です。当該地域唯一の基幹的な病院として全人的医療の提供に取り組む同院の地域での役割や今後について、院長である辻川 知之(つじかわ ともゆき)先生に伺いました。

当院は滋賀県甲賀市にある、地域の中核的な病院です。1939年に開設し、1981年4月には現在の名称に変更。2004年の市町村合併により、現在の甲賀市と湖南市が設立母体となりました。2013年に現在の場所に新築移転し、2019年には全国的にも早いタイミングで地方独立行政法人へと移行しています。2020年に80周年を迎えた当院は、現在413の病床と、34の診療科を備えています。

国道1号、国道307号、市道松尾山幹線の近くに位置する当院へのアクセスは、近江鉄道本線水口駅から徒歩約15分。また、甲賀市コミュニティバス “甲賀病院”からすぐです。

当院は甲賀保健医療圏における唯一の基幹的な病院であり、また地域医療支援病院として、紹介状をお持ちの患者さんの診療を担っています。もともとこの地域には7つの町があり、当院は“甲賀郡立の病院”という立ち位置でした。現在はそれを引き継いで、甲賀市と湖南市(旧甲賀郡)を医療圏としています。患者さんの中には、日野町や東近江市、三重県からも来院される方もいます。

当院の救急医療は、甲賀市、湖南市やその他近隣地域からの救急患者さんを24時間365日受け入れています。当院は救急専従の常勤医師は不在ですが、“断らない救急”をモットーにスタッフ全員が協力をしています。甲賀市・湖南市で年間約6,000台の救急車出動があり、当院ではその約60%にあたる年間約4,300件の受け入れを行い、地域の中核的な病院としての役割を果たしています。

2020年からの新型コロナウイルス感染症パンデミックにおいても、救急の受け入れ確保に努めてきました。現在も滋賀医科大学の救急部・総合診療部のご協力を得て、救急診療の質の充実にも努めております。また、2022年からは脳神経外科の体制を一新。脳卒中はもとより、脳腫瘍外傷、脊椎、脊髄疾患にも24時間365日対応しております。その結果、当院は滋賀県の救急医療功労者知事表彰や厚生労働省の救急医療功労者大臣表彰を複数回受賞しており、普段の活動に確かなご評価をいただいております。

当院の循環器内科は循環器病センターとして組織され、6人の循環器医が所属しています。24時間365日で救急対応を行うほか、地域医療支援病院としてレベルの高い医療を提供しています。

当科は特に、急性心筋梗塞などの急性期疾患に対する迅速な心臓カテーテル検査・治療が強みです。2年前に滋賀医科大学から副院長として来られた山本 孝(やまもと たかし)先生は心臓カテーテル術のエキスパートで、当科での心臓カテーテル術の適用症例数は一挙に増加しています。

さらに、当院には急性期疾患に迅速に対応する心臓カテーテル検査チームだけでなく、慢性期の心不全患者を中心に包括的に診療する心不全チームがあり、患者さんの状態に合わせた医療を提供しています。

当院の脳神経外科では、特に脳卒中急性期や外傷などの救急医療に力を入れています。また、脳卒中治療では脳神経内科と、脳腫瘍治療では放射線治療科と連携するなどし、地域の患者さんに対して包括的な医療を提供できる体制を構築しております。

当科は日本脳卒中学会から一次脳卒中センター(PCS)の認定を受けており、24時間365日体制で脳卒中急性期、超急性期の治療に対応しています。2年前に脳神経外科治療で名高い初田 直樹 (はつだ なおき)先生が副院長・脳神経外科部長として来られてから、当科の脳卒中症例への対応能力はさらに強化されました。今後さらに当科の医療の質と量をアップさせていく所存です。

当院は2023年、厚生労働大臣から“地域がん診療連携拠点病院”の指定を受け、がん診療部が甲賀保健医療圏のがん診療の中心を担っています。

当部の特長は、滋賀医科大学と密接に連携して診療を行っていることです。がんゲノム医療やより高度な治療は滋賀医科大学にお願いしながら、当院では標準治療の範囲の幅広い症例に、手術・化学療法・放射線治療による集学的な治療を行っています。多職種連携でのチーム医療や地域連携に加え、“がん相談支援センター”“外来化学療法室”“緩和ケアチーム”などを備え、確実かつ包括的に患者さんをサポートしています。

放射線治療では、VARIAN社の新しい放射線治療装置“Clinac iX”も導入しました。Clinac iXは高エネルギーの放射線をピンポイントでがん細胞に照射できるもので、患者さんの負担をなるべく最小限に抑えながら高い治療効果を上げるものです。今後も新しい医療機器を積極的に取り入れながら、よりよいがん治療を目指していきます。

さらに当院では、今年2024年1月に手術支援ロボット“hinotori”を導入しました。hinotoriは外科医の手術をサポートするロボットシステムで、人間の手では届きにくい場所や、非常に細かい作業を、より正確かつ安全に行うことができます。

初めて導入する手術支援ロボットとしては、アメリカで開発された“ダヴィンチ”を選ぶ病院も多いのですが、hinotoriは小型化・軽量化してより日本人の体格に合った設計になっており、執刀医師にとってより直感的な操作が可能です。こうした強みは国産ならではで、導入の理由の1つとなりました。

2024年8月現在、hinotoriでの手術症例は、泌尿器科と外科(大腸疾患)合わせて10例を超えました。今後は婦人科をはじめ、より多くの診療科でhinotoriの活用を進めたいと考えています。

hinotori
公立甲賀病院で稼働中のhinotori(公立甲賀病院ご提供)

当院は“ケアミックス病院”としての機能も担っています。ケアミックス病院とは、患者さんの状態に合わせてさまざまな段階の医療サービスをワンストップで提供できる病院のことで、急性期の治療から回復期・慢性期の治療、在宅復帰や在宅医療、終末期のケアまでをシームレスに提供します。

当院で患者さんが受けられるケアミックス病院としてのサービスには、例えば以下のようなものがあります。

  • 急性期からリハビリまで

急性期疾患で入院(急性期病棟)
→ 病状安定するがリハビリが必要
→ 理学療法を受ける(回復期リハビリ病棟)

  • 急性期から日常生活復帰、在宅医療まで

高齢の患者さんが肺炎などで入院(急性期病棟)
→ 病状安定するが要介助で日常生活への復帰が困難
→ 在宅復帰や介護施設への入所の支援を受ける(地域包括ケア病棟)
→ 在宅復帰の場合、当院からの訪問医療・看護を受ける

  • がんの治療から終末期まで

がんの手術で入院
→ 退院するが、がんが進行し通院が困難に
→ 緩和ケアを受け、穏やかな終末期を過ごす(緩和ケア病棟)

このように当院は、地域唯一の基幹的病院の使命として、ケアミックス病院としての機能を担い、地域の患者さんに包括的な医療・ケアを提供しています。

高齢化が急速に進む現在、複数の病気を抱える患者さんがどんどん増えています。また、当院のような地域支援病院では、主にかかりつけの先生方からの紹介状を持った患者さんを受け入れるため、非常に多様な医療ニーズに応える責任があります。このため当院は、今後いっそう、できるだけ多くの病気を確実にカバーできるように尽力していきます。

この地域の救急医療の中核を担う病院として、今後も“断らない救急”をモットーに救急対応を続けます。当院で受け入れが不可能な患者さんに関しては、近隣の医療機関との連携をいっそう強め、甲賀市・湖南市で生じた救急患者さんが地域で治療を完結できる体制を構築していきます。

また、地域の皆さまが日々安心して過ごせるよう、当院の理念である「全人的医療の実践」を行ってまいります。今後もよりよい病院を目指してスタッフが一丸となり取り組んでいきますので、よろしくお願いいたします。

実績のある医師をチェック

Icon unfold more