社会医療法人恵愛会 大分中村病院は“日本パラリンピックの父”と呼ばれた故・中村 裕氏が設立しました。まだリハビリテーションという言葉すら普及していなかった時代からリハビリテーションに積極的に取り組んできた同院の強みや、近年の取り組みなどについて、同院の理事長である中村 太郎先生にお話を伺いました。
当院は、1966年に許可病床65床の病院として創設されました。創設者は私の父であり“日本パラリンピックの父”と称された故・中村 裕です。父は九州大学医学部を卒業後、九州大学病院で整形外科医として勤め、1958年からは大分県の国立別府病院 整形外科医長となりました。その後、まだ日本で“リハビリテーション”という言葉が普及していなかった1960年に、当時の医療先進国であるイギリスに渡りストーク・マンデビル病院へ留学、そこで最新の医療やリハビリテーション、障がい者スポーツなどを学びました。
そうした経歴を持つ父が創設した当院は“急性期を中心とした整形外科分野に強い病院” “日本で先駆けて、本格的な医学的リハビリテーションを行う病院”としてスタートをきったのです。その後も時代とともに変化する地域医療のニーズに対応できるよう診療科や病床を増やし、救急救命棟や回復期リハビリテ-ション病棟・地域包括ケア病棟・訪問看護ステーションなども開設しました。さらに、2024年元日には念願だった新病院への移転も果たしました。
新病院ではDX(デジタル技術の活用による業務変革)の推進や多職種混合のフリースペース付きワークプレイスの設置、事務エリアのフリーアドレス制導入など、より業務を円滑化させるためのさまざまな工夫をしています。
このように時代とともに変化を遂げてきた当院ですが、創設者である父が大切に考えていたパラスポーツ支援については、パラリンピックやアジアパラ競技大会に毎回看護師を派遣するという形で、現在も継続しています。
当院は二次救急医療機関として、24時間365日体制の救急医療を行っています。ERでは患者さんをいつでも受け入れられるよう手術室スタッフが常に待機しており、手術の際は日頃から培われたチームワークやスタッフそれぞれの専門性を生かし、迅速かつ的確な診療を心がけています。
さらに当院では、救急搬送された患者さんの救命率アップや早期社会復帰のために、救急医療システム・ホットラインファーストコールを運用しています。これは、救急隊からの連絡を、受付などを介さずに24時間体制で医師が直接受け、適切に指示を出しながら当院での受け入れ体制を整えるというシステムです。
また、心停止や意識不明など一刻を争う状態の患者さんが搬送された際には、院内一斉放送で手の空いている医師全てに救命に駆け付けるよう繰り返し呼びかける“ハリーコール”も行っています。
当院は、整形外科医であった父が創設したという経緯もあって、昔から整形外科分野に大きな強みを持っており、父の後を継いだ私も当科で診療にあたっています。
当科では交通事故や労働災害、不慮の事故などによる外傷や骨折、関節疾患、スポーツ傷害など整形外科領域の幅広い診療を行っているだけでなく、近年の高齢化に対応するため、骨粗鬆症予防・改善および骨折防止を図る取り組みである“骨粗鬆症リエゾンサービス”にも脊椎外科を中心としたチームが力を入れています。
また、当院では手術などの急性期治療を終えた後も、当科と後述するリハビリテーション科との間で密に連携を取り、回復期まで一貫したサポートを行えるよう体制を整えています。充実した環境で、手術からリハビリテーション、社会復帰までのトータルマネージメントを行えることが特長です。
当院では、患者さんの社会復帰を支援する医療サービスの提供を重視しており、設立当時からリハビリテーションに力を入れています。現在、リハビリテーション科にはリハビリテーション科専門医*が在籍しているだけでなく、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士といったセラピストが100名近く在籍しています(2024年11月現在)。
急性期病棟に入院中の患者さんに対しては、可能な範囲で積極的にリハビリテーションを開始し、さらに回復期リハビリテーション病棟では365日リハビリテーションを実施しています。また、地域包括ケア病棟では集団で運動などの活動を提供し、患者さんの体力向上や心身の賦活(活力を与えること)を図っています。リハビリテーションは入院患者さんに限らず、外来受診の患者さんも対象となり、さらに訪問リハビリテーションも行っています。
リハビリテーションには、運動器疾患リハビリテーションや脳血管疾患リハビリテーションをはじめとしたさまざまな種類がありますが、当院は現在全ての領域を網羅しています。
*日本リハビリテーション医学会認定
当院が創設された1966年から、実に60年近い年数が経ちました。時代とともに社会情勢も変わり、医療に対するニーズも変化してきていると感じます。
そうした流れを受け、当院は新病院移転を機にリブランディングを図っています。“病気だけでなく、本気で、人間と向き合う”を当院の新しいこころざしとし、さらに“ひとりの人間に、寄り添う・はたらく仲間を、認め合う・これからの医療を、学び続ける”という新しい行動指針も定め、病院のロゴも一新しました。
当院での医療サービスは、今後ますます進行する超高齢化社会を見据えた変革を推進しております。たとえば新病院では回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟の病床をそれぞれ増床しました。また、たとえ高齢化が進んでも患者さんがしっかり社会復帰できるよう、リハビリテーション体制のさらなる充実も図っていく所存です。
2024年8月より、オウンドメディア(当院の独自保有メディア)“リバイタル”の運営を開始しました。まだ運用開始して間もない状況ですが、医療現場からの情報提供や病気予防・健康増進などに役立つ情報などを提供しています。
このリバイタルを通じて、患者さんやそのご家族をはじめとした地域の方々とともに、心身だけでなく社会的な面も含めて満たされる“ウェルビーイング”の実現を目指していく所存です。今後もさまざまな情報発信をしていきますので、ぜひご期待ください。
“リバイタル”サイトへはこちらから
当院は、後遺症や障がいをはじめ、さまざまな困りごとを抱えている方がこの地域で少しでも安心して当たり前に暮らしていけるよう、医療面で最大限のサポートをしっかりできる病院となることを目指し、救急から社会復帰まで一貫したシームレスな医療を提供し続けてまいります。
真の市民のための病院、市民と伴走する病院として、今後もいっそうの努力をしていく所存です。今後も市民の皆さんの、温かいご理解とご協力を賜れますと幸いです。
*写真提供:大分中村病院
*診療科や医師、提供している医療の内容および医師数などの記事内の数字は全て2024年11月時点のものです。