埼玉県深谷市にある佐々木病院は、2026年に開院80周年を迎える歴史ある病院です。二次救急を担う急性期病院としての機能をもちながら、療養病床を有する病院として回復期まで幅広く地域医療を支えています。
医療にとどまらず介護の分野まで、“一貫したサポートをできるケアミックス病院でありたい”と言う院長の佐々木 敏行先生に、地域での課題や今後の展望を伺いました。
当院は、1946年に私の祖父である佐々木 優孝が設立した19床の有床診療所から始まりました。その後、地域の方々のニーズに応じるかたちで、1964年には54床に増床。2006年に現在の建物が完成し、病床数129床の病院となりました。当院は急性期病院として救急医療に対応しており、消化器外科を中心に高度な医療を提供しています。また、東京慈恵会医科大学の派遣施設でもあるため、大学病院で専門的な治療に携わってきた医師が多数勤務していることも特徴です。
一方で病床のうち50床は長期入院に対応した療養病床となっており、関連施設として、介護老人保健施設、グループホーム、介護予防リハセンター、デイサービスセンターを運営しています。急性期病院として高度な治療を提供しながら、回復期からその後の介護まで、一貫したサービスを提供できるケアミックス病院としての役割も果たしていく所存です。
「地元の病院で一貫した治療を受けたい」という深谷大里地区の皆さんの声に応えることこそ、当院の使命だと信じて、今後も尽力してまいります。
先代院長で現会長の佐々木 優至も、私自身も専門は外科です。そのため、当院を訪れる方の約半数は、外科の患者さんとなっています。当院の外科には現在4人の常勤医師が在籍し、一般的な外傷から外科手術まで幅広い診療を行っています。
近年は消化器系の外科手術に力を入れており、食道がん、胃がん、大腸がんの手術も積極的に行っています。また、一般的には薬物療法を行うことの多い食道裂孔ヘルニア(胃が横隔膜の隙間から飛び出てきてしまう病気)の手術にも対応しています。私自身も消化器外科が専門であり、院長に着任して以来、外科手術の件数は約3倍と大幅に増えました。設備面でも大学病院と同等の機材がそろっていますので、安心して手術に臨める環境となっています。
腹部の手術に関しては、患者さんの体への負担が少ない腹腔鏡による低侵襲手術を積極的に行っています。2023年の実績では、外科手術316件のうち、169件が腹腔鏡下手術でした。そのほかの手術に関しても最新の技術を積極的に取り入れ、患者さんの負担軽減と早期回復に努めています。
内科には3名の常勤医が在籍し、一般的な風邪や発熱、インフルエンザなどの感染症、胸痛や腹痛、内分泌疾患、アレルギー疾患など、幅広い病気に対応しています。脳神経内科や循環器内科を専門とする医師もおり、手術などの際には外科と連携をとって治療にあたっています。
内科は、不調を感じた際にまず初めにかかる診療科でもあります。そのため豊富な経験と知識が求められる分野といってよいでしょう。当院の内科には、長年患者さんと接してきたベテランの医師から、大学で最新の知識を学んできた若手までそろっているので、何かありましたらお気軽にご相談ください。
病院は衛生的な環境を保つため、ともすれば殺風景な場所になってしまいがちです。当院では院内にさまざまな絵を飾ることで、患者さんだけでなく、スタッフにとってもリラックスできるよう配慮しています。
院内に飾られている絵の多くは、絵画を趣味としている近隣の医師から寄贈されたものです。さらに現在、芸術系の大学と提携して絵画の展示を企画中です。美術鑑賞で気持ちをゆったりと落ち着けることで、一時的にでも治療のストレスを忘れていただければ嬉しく思います。
当院ではスタッフの行動指針として“優しく、親切に、ていねいに”を掲げています。これは初代院長である佐々木 優孝の遺した言葉です。その一端として、患者さんに対しては全スタッフが敬語を使うよう指導しています。
ホテルマンは、お客様とどれほど親しくなったとしても、常に敬う姿勢を欠かしません。ホテル客の多くは健康な人ですが、病院を訪れる患者さんは、病気を抱えて不安な気持ちでいることも多いですから、より親切に、ていねいに接するべきではないでしょうか。
その考え方から、ホテルマン以上のホスピタリティを目標に、全スタッフが一丸となって努力しています。開院当時から培われた”SASAKIISM(ササキイズム)”ともいうべき、当院の精神的支柱となっています。
当院の位置する深谷大里地区は、全国的にもみても医療過疎地となっています。地区内の二次救急病院は、当院を含めて2病院しかありません。そのため夜間・休日における救急患者受け入れのため、当院も2日ごとの輪番を担当しています。それだけに、地域から当院に求められる期待や責任は大きいと痛感しています。現在は東京慈恵会医科大学の協力のもと当直勤務を行っておりますが、いずれは常勤医師を増やして、さらに体制を整えて地域医療をサポートしたいと考えています。
こういったお話をすると「少し体調が悪くても、受診は控えたほうがいいかな……」と考えてしまう方もいるかもしれません。しかし、当院としては何かあったらすぐに来院してほしい、頼ってほしいと切実に思っています。どんな病気でも、早期に治療できたほうが治療効果は高くなります。ですから、気になることがあったら気軽に病院を訪れて相談してください。当院としても、”敷居の高くない急性期病院”を目指して、来院しやすい病院づくりを心がけてまいります。
同時に、住み慣れた地元で高度な医療サービスを受けられることも、多くの患者さんの望みだと感じています。私は大学病院や拠点病院で約20年にわたり、先端医療に関わってきました。その経験を生かし、当院でも大学病院と同等か、それ以上の医療サービスが提供できるよう努めています。特に消化器系のがん治療に関しては、初診から手術、退院まで一貫して診療しており、終末期医療にも対応しています。
“遠くの病院へ行かずとも、地域で完結する医療を”その思いを胸に、今後もよりいっそう地域医療に貢献できるよう努めて参ります。
*医師や提供している医療についての内容および、病床数などについての数字は全て2024年12月時点のものです。