インタビュー

災害時にアトピー性皮膚炎の子どもを守る知識と対策―災害時における子供へのアレルギー疾患対応 その3

災害時にアトピー性皮膚炎の子どもを守る知識と対策―災害時における子供へのアレルギー疾患対応 その3
藤澤 隆夫 先生

国立病院機構三重病院 院長

藤澤 隆夫 先生

日本小児アレルギー学会

日本小児アレルギー学会

この記事の最終更新は2016年02月26日です。

シャワーや入浴ができない環境で、アトピー性皮膚炎を良い状態に保つことはとても難しいため、そのようなアレルギー疾患を持つ子どもは災害時に困難を強いられます。また、避難所生活においてアレルギー疾患を持つ子どもやご家族の方は、周囲に迷惑をかけていないかと大変気苦労があります。だからこそ、アトピー性皮膚炎を持つ子どもへの理解を深め、症状を悪化させない方法を知ることが必要です。そこで今回は、災害時においてアトピー性皮膚炎の子どもを守るために必要な、知識と対策を説明していきます。

※本記事は、国立病院機構三重病院院長・日本小児アレルギー学会理事長の藤澤隆夫先生、日本小児アレルギー学会にご監修いただいております。

アトピー性皮膚炎は、子どもに多いアレルギーによる病気のひとつです。重症でも感染症ではないので決して他の人にうつりません。原因は様々ですが、かゆみをともなった湿疹(しっしん)が皮膚にできます。赤くなり、ジクジクしたぶつぶつができ、皮がむけてかさぶたになるといった症状があります。

アトピー性皮膚炎を持つ子どもにとって、シャワーや入浴で皮膚を清潔に保つことは、高血圧糖尿病などの薬を毎日飲むことやリハビリを続けることと同じように、とても大切な治療のひとつです。避難所では、優先的にシャワーや入浴を利用できる環境にしてあげましょう。できれば毎日、石けんを使いよく洗い流すことが理想的ですが、石けんなしのシャワー浴だけでも効果はあります。汗をかいたら早めに洗い流すとより効果的です。

熱すぎないお湯でぬらしたタオルで、全身の汗やホコリをやさしく押し拭きしてあげましょう。どんどん乾燥してしまうので、早めに塗り薬をつけてください。市販のウエットティッシュやおしり拭きは、香料やアルコールなどの成分で肌を荒らすことがあるので、いったん肌の一部で試し、大丈夫であれば使用しましょう。

シャワーや入浴ができない日が続くと、アトピー性皮膚炎の状態が悪くなるので、普段からステロイド入りの塗り薬を使っている人は、いつもより強めのステロイドを使うことをお勧めします。また、いつもは保湿用の塗り薬で十分な人も、早めにステロイド入りの塗り薬を使うことをお勧めします。適切なスキンケアや治療ができていれば、元の塗り薬に戻したり、始めたステロイドを中止したりすることは可能です。

手元にステロイド入りの塗り薬がない場合、可能ならば医師に相談してください。また、同じぐらいの強さや効果をもつ薬の代用でも大丈夫です。ただ、市販の保湿用塗り薬は肌に合わないことがあるので、いったん肌の一部で試し、大丈夫であれば使いましょう。

肌のお手入れが不十分なうえ、ストレスや体調不良が加わると、かゆみが強くなる場合があります。その場合は冷たいタオルなどで患部を冷やすと、一時的に楽になることがあります。ただし、長時間は避け、小さい子供は体が冷えないよう注意しましょう。遊びなどに集中させて、かゆみから気をそらせるのも効果的です。しかし、あらゆる対策をとっても症状が悪化し、眠れない状態が続く場合は入院治療をお勧めします。係りの人に相談しましょう。

シャワーや入浴ができず十分に薬が塗れないといった状況では、皮膚の状態が悪化し、昼夜を問わずかゆみが強くなります。ずっと体をかき続けることや夜泣きなども増えますが、アトピー性皮膚炎という病気のせいなのです。また、優先的なシャワーや入浴は贅沢ではなく、治療だという理解が必要です。なお、アトピー性皮膚炎を持つ子供を抱っこして遊んだり、一緒にお風呂に入ったりしても、うつることは全くありません。お互いの心が通い合うだけです。

※本記事は、日本小児アレルギー学会による『災害時のこどものアレルギー疾患対応パンフレット(pdf)』をもとにしています。

参考:「アレルギー疾患診断・治療ガイドライン2010

 

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