災害時には多くの人々が困難な状況に置かれます。今もライフラインが完全に復旧していない場所や避難所、疎開先という慣れない場所での生活を余儀なくされている人は少なくありません。そのなかで、ぜんそくなどを持つ環境の悪化に弱いアレルギーの子どもたちは常に過酷な状況にあります。だからこそ、その子どもたちのお世話をする方々や、周囲の人々が適切に対応することが大切です。そこで今回は、災害時において、ぜんそくの子どもを守るために必要な知識と対策、発作時の対処などを説明していきます。
※本記事は、国立病院機構三重病院院長・日本小児アレルギー学会理事長の藤澤隆夫先生、日本小児アレルギー学会にご監修いただいております。
いつもと違う環境のせいで、咳が出やすくなり、ぜんそく発作が起きやすくなります。その引き金となるものは「寝具のホコリ・たばこ・たき火・蚊取り線香・動物・がれき撤去で発生する粉塵(ふんじん)」などです。寝具を広げたり、たたんだりするとホコリ(チリダニ)が舞うので、ぜんそくの子どもが吸い込まないよう気をつけましょう。また、たばこ・たき火・蚊取り線香など煙が出るものも配慮が必要です。
枕や布団の襟元など顔があたる場所に、キレイなタオルをあてておくとホコリの吸い込みを防ぎやすくなります。寝具は天気の良い日に太陽にあてるとダニを減らせます。また、がれきの近くは発作の原因となる有害な粒子が飛んでくる可能性があるので、ぜんそくの子どもには必ずマスクを着用させましょう。動物にも、鼻水や目が痒くなるなどアレルギーを起こす子どもがいるので注意が必要です。少しでも症状があらわれたら離れるよう促しましょう。
予防薬は発作がなくても毎日続けることが大切です。毎日薬を使うほどではない子どもでも、夜中の咳き込みや、発作が出るようになったら毎日続ける方がよいと思われます。また、毎日予防薬を続けていても、夜中に何度も咳き込んだり発作を繰り返したりしたら、薬の量を増やすか変更が必要かもしれません。医師に相談のうえ対処しましょう。また、ぜんそくの吸入薬にはネブライザーという電動の器械で吸入するものがあるので、電源を優先的に使えるよう周囲の配慮が必要です(吸入1回10~15分)。
電源が近くにないため電動のネブライザーが使えない場合、電源がいらないエアゾールタイプの吸入薬がありますが、子どもの場合はスペーサーという吸入補助具を使う方が吸入しやすくなります。もしスペーサーがない場合には、底に穴をあけた紙コップがスペーサー替わりになります。
ぜんそくの発作は胸からゼーゼー・ヒューヒューと音がして、息が苦しくなるという症状があります。その時は、水分を飲ませて、ゆっくり呼吸するよう促し、発作時に使う薬(吸入・内服)を使い、もたれかかる姿勢で休ませましょう。しかし、顔色が悪い・唇が紫色・仰向けに眠ることができず、座り込んで苦しそうにしている・苦しくて何度も目を覚ますなどの症状がある場合、夜間であっても早急に医療機関の受診が必要です。
ぜんそくを持つ子どもは、発作でなくとも夜中に咳き込み、急に泣き出すことがあります。また、予防薬や発作時の薬がなければ処方してもらう必要があります。そして、強い発作のときは救急の受診が必要になります。その様な状況を理解し、配慮して、力になることが必要です。
※本記事は、日本小児アレルギー学会による『災害時のこどものアレルギー疾患対応パンフレット(pdf)』をもとにしています。
国立病院機構三重病院 院長
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