「声がかすれる」「声が出ない」と感じたら、あなたは病院の何科に行けばいいと考えますか? たいていの方が、風邪をひいたと思って内科を受診されるのではないでしょうか。しかし、実は発声機能に障害がある場合もあるのです。この場合に行くべきなのは、音声外来です。
音声外来は、声帯や声に関する総合的な診療を行う診療科です。なかでも音声外科は、手技を駆使して声帯に関するあらゆる手術を施します。音声外科とはいったいどのような診療科なのでしょうか? 山王病院東京ボイスセンター長の渡邊雄介先生にお話をお聞きしました。
音声外科は、何らかの障害があって発声機能(声を出したり、しゃべったり、歌ったりすること)がうまく働かない人に対して外科的治療を行う科です。
声帯結節や声帯ポリープなどの切除をはじめ、各種の手術を行っています。また、音声治療や外来での発声指導なども行います。
音声外科では、あらゆる音声障害に対してできる限りのテクニックを駆使して治すことを仕事としています。
基本的には耳鼻咽喉科を専攻する医師が診療します。教師や保育士、アナウンサー、歌手、俳優など、声をよく使う方や声を職業的に使う方の診察をすることが多いですが、もちろん一般の患者さんもいらっしゃいます。突然声がかすれたり、出なくなったりした場合は音声外科や音声外来を受診してみることをお勧めします。
また、「音声言語医学会」というものがあります。この学会に所属しているのは約2500人ですが、そのうち1500人は言語聴覚士などの非医師で、医師は700人程度、そのうち音声障害に限定した専門分野を持ちメスも握る医師は、全国で100人程度と考えられます。
東京をはじめ、神奈川、大阪、京都、福岡など主要都市にはあります。医学の専門分野としてはあまりメジャーでなかった音声外科ですが、徐々にその認知度は高まりつつあります。
かつては、「声がかすれてしまうから耳鼻科に行く」という発想がありませんでした。歌手の方々を例に出すと、耳鼻科よりもむしろ自分の師匠である声学の先生に色々なアドバイスを聞くことも多かったようです。一般の方の意識には、「医者が声を治す」という発想がありませんでした。
しかし、現在は都会では音声外来や音声外科に対する認知度が高まっていることは確かです。私たち音声外科医も、市民講座から学会まで、対学校の先生、対歌い手、対学校の先生などに向けて様々な講演活動などを行ってきました。しかし、まだまだ音声外科医の診療の内容を知らない患者さんは多く、そのため、さらに普及活動も同時にしていく必要はあるでしょう。
このような場合は音声外科や音声外来を受診してみることをお勧めします。
また、施設によっては子どもの発達障害や吃音も扱っているため、言葉に関するトラブルや悩みに関しても怖がらず音声外来を受診してみるといいでしょう。
耳鼻咽喉科は耳・鼻・のど・頸部はもちろん、舌・口腔・咽頭・喉頭などの運動器官をも対象とします。そのほか甲状腺や耳下腺、顎下腺も治療範囲に含まれます。一方、音声外科は前述したように、「声」すなわち発声器官と主に声帯に特化しており、治療も外科的なものが中心となります。
まとめると、耳鼻咽喉科は耳、鼻、のどを総合診療する総括的なポジションで、その中に音声外科が含まれるといえるでしょう。
音声外科で治療するのは声帯ポリープ、声帯結節、ポリープ様声帯などを中心した、声帯に関する外科的な疾患が対象となります。また、音声治療や機能性発声障害など器質的病変がない疾患に対しての「切らない治療」も行っていきます。
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基本的には外科的治療(手術)が中心ですが、上記のとおり切らない治療も同時並行で行います。声帯疾患に対する音声外科的な治療はもちろん、喉頭がんなどのがん検診をはじめとした各種検査も行っています。
また、ものが飲み込みにくいという患者さんに対する嚥下機能訓練・音声言語障害や嚥下障害・術後の患者さんに対するリハビリまでを包括的に行います。このように、音声「外科」といっても単に切って治すだけではなく、機能的音声障害などの内科的・リハビリテーション的な治療までを行うのが患者様を治癒させるという意味で音声外科がなすべきことでしょう。
※山王病院東京ボイスセンターは音声障害のみを取り扱っています。このように独立した診療科を持つケースは珍しく、「音声障害のターミナル駅」ともいえます。ここではほぼすべての診断方法、治療方法を網羅しています。
例えば、GID(性同一性障害)という障害があります。このような方は男性の場合女性の声にしたい、女性の場合男性の声にしたいなどという気持ちも持っています。このような方々を治療することは、病気の治療というよりも美容外科に近い領域です。このような患者さんの要望に対しても向き合って治療しています。
その他にも低い声を残しておいてほしいなど、個々人によって様々なニーズがあります。音声外科では、その人たちの発声に関して最大限のパフォーマンスが出ることを考えることを念頭に置いて治療をしています。
国際医療福祉大学 医学部 教授、山王メディカルセンター 副院長、国際医療福祉大学 東京ボイスセンター長
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