だいりせきこつびょう

大理石骨病

最終更新日:
2020年09月23日
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2020/09/23
更新しました
2018/12/14
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概要

大理石骨病とは、骨の新陳代謝に関わる“破骨細胞”の機能に異常が生じ、全身の骨がどんどん硬くなっていく病気のことです。

骨は常に一定の状態であるわけではなく、古くなった骨の一部は“破骨細胞”によって溶け出され、“骨芽細胞”によって新たな骨が作られます。このサイクルを繰り返すことで、骨は常に健康的な状態をキープできるのです。大理石骨病では、破骨細胞の機能に異常が生じて古くなった骨が溶け出さずに残り続け、骨芽細胞によって新たな骨が作られていくため骨の一部がどんどん硬くなっていくとされています。

大理石骨病の発症率は10万人に1人程度と非常にめずらしい病気です。主に破骨細胞の形成や機能に関わる遺伝子の異常によって発症するとされており、遺伝も関与していることが分かっています。

発症すると、骨が全体的に脆弱(ぜいじゃく)化して些細な刺激で骨折を起こしやすくなります。そのほか、骨の内側の骨髄の炎症(骨髄炎)や神経障害も起こしやすくなります。また、小児の重症例では骨髄の機能が低下するため正常な血液細胞(白血球、赤血球、血小板など)が作られず、貧血や感染を起こしやすくなるなど命に関わる症状が生じます。

原因

大理石骨病は、古くなった骨を溶かし出すはたらきを持つ“破骨細胞”の形成や機能の異常によって引き起こされる病気です。その原因は、破骨細胞の形成や機能に関係する遺伝子の異常であるとされており、現時点では10種類以上もの遺伝子異常が大理石骨病を引き起こすことが分かっています。

また、それらの遺伝子異常は突然変異によって生じることもありますが、多くは両親からの遺伝によるものです。遺伝子異常が子へ受け継がれるメカニズムは多々ありますが、大理石骨病は両親から受け継いだ場合のみ発症する“劣性遺伝”、片方の親から受け継いだだけでも発症する“優性遺伝”を生じます。特に、“劣性遺伝”によるものは新生児や乳幼児の頃から重度な症状が引き起こされるとされています。

症状

大理石骨病は症状の現れ方が多岐にわたることが特徴の1つです。

重篤な“劣性遺伝”形式による大理石骨病の場合には、増加した骨が骨の内側にあって血液を作っている骨髄のスペースを狭くしてしまい、新生児期や乳児期から白血球や赤血球、血小板などの血液細胞を作る骨髄の機能が著しく低下し、感染・貧血・出血などを起こしやすくなります。

また、骨からカルシウムが溶け出さないことにより低カルシウム血症を呈することもあります。そのほか、水頭症や種々の神経症状を引き起こします。このような重症のケースでは幼少期に主には骨髄機能低下による重症感染症によって死に至ることが多いと知られています。

一方、乳児期まで症状が現れない“優性遺伝”形式による大理石骨病の場合では、骨が部分的に硬くなる一方、骨の正常な吸収と形成のサイクルが低下するため正常な骨に比べて脆弱な構造となります。そのため、特に長管骨(腕や足、手足の指の骨)の中央に近い部分や肋骨の骨折を些細な刺激で起こしやすくなります。特に大腿骨の転子下(軸となる部分の上方)の骨折は非定型骨折といわれます。

また、骨の中へ細菌が侵入しやすくなるため、特に顎などに骨髄炎を起こしやすくなります。これらの症状は骨粗しょう症治療薬のなかでも骨吸収抑制薬(ビスホスホネートやデノスマブ)を長期に使用している場合に起こる合併症としても知られており、同じ理由(正常な骨代謝サイクルの低下)で発症します。

そのほか、成長障害や歯の形成異常および、厚くなった骨がその周りや中を通っている神経を圧迫してしまい、難聴顔面神経麻痺、手足などの末梢神経障害などの症状を引き起こすことも少なくありません。ですが、骨髄の機能に関しては軽度な低下にとどまるケースやまったく異常がないケースが多く、そのため命に関わるような症状を引き起こすことはないとされています。

検査・診断

大理石骨病が疑われるときは次のような検査が行われます。

血液検査

大理石骨病では骨髄機能の低下が生じることがあるので、白血球、赤血球、血小板の量を調べるために血液検査が行われます。また、小児の重症例では血液中のカルシウム濃度が減少するため、診断の手がかりとして血中カルシウム濃度を調べることが一般的です。

画像検査

大理石骨病では、全身のさまざま骨が部分的に硬くなります。そのため、大理石骨病の診断には骨の状態を調べるための画像検査が必要となります。

特にX線検査は骨が硬くなった部分が濃く描出されるようになるため、診断に役立つとされています。骨密度は通常の人の2~5倍程度まで上昇します。

そのほか、大理石骨病は頭蓋骨や大腿骨などの長い形の骨、背骨などに特徴的な変形が生じるため、それらが診断の手がかりになることも少なくありません。

遺伝子検査

大理石骨病の確定診断のためには、原因となる遺伝子異常の有無を調べる検査が行われることがあります。特に下に記載する骨髄移植による治療を検討する際には変異している遺伝子によっては治療効果が得られないため必須の検査となります。

治療

“劣性遺伝”形式による大理石骨病の多くは、前述のように小児期に主に重篤な感染症によって死亡することが多いと知られています。

大理石骨病の原因となっている破骨細胞は血球由来の細胞であるため、他人からの骨髄移植により症状が改善することがありますが、残念ながら成績はあまり高くありません。障害された破骨細胞の機能を補う新たな治療法の開発が期待されます。したがって、大理石骨病の治療はそれぞれの症状を緩和させる“対症療法”が主体となります。具体的には、骨折の治療や骨髄炎に対する抗菌薬などの薬物療法、難聴に対する補聴器の使用などが挙げられます。

この病気は骨が部分的に硬くなって骨密度が上昇するものの、正常な骨の形成にも異常が生じるようになるため、正常な骨に比べて脆弱化する傾向があります。その結果、些細な刺激で骨折を引き起こしやすくなりますが、一度骨折してしまうと骨の癒合が起こりにくく、手術などでつなぎ合わせることも困難なことが多いため治療が難しくなるケースが多いとされています。

予防

骨折の予防

骨折を未然に防ぐための転倒予防策や激しいスポーツ、転倒が起こりやすい仕事や作業を避けるなどがあります。また、顎の骨髄炎を防ぐための口腔内衛生の維持、抜歯や歯科治療後の骨髄炎予防を目的とした丁寧なケア(抜歯後に歯肉を縫合するなど)といった注意点に留意します。

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