こうちゅうきゅうきのういじょう

好中球機能異常症

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概要

好中球機能異常症とは、外敵から身を守る好中球細胞がうまくはたらかない病気です。好中球は通常、外敵を見つけて取り除くことで感染症を防いでいます。この病気では好中球がうまくはたらかないため、簡単に細菌などの病原菌に感染し身体中に炎症が起きやすくなります。好中球の機能異常は大きく機能低下と機能亢進(こうしん)に分けられます。ほとんどは、原発性といって生まれつきタンパク質を作る設計図(遺伝子)に異常があるために好中球の機能が低下します。まれに、家族性地中海熱といった遺伝病や、ベーチェット病といった膠原病(こうげんびょう)で好中球の機能亢進を認めることがあります。

好中球は、

  1. 外敵が来た場所を察知して移動する(遊走能)
  2. 血液が流れていてもその場所にくっついてとどまる(付着能)
  3. 外敵を食べる(貪食能)
  4. 食べた外敵を分解する(殺菌能)

の主に4つの機能を持っており、好中球機能異常症では、それらのいずれかの機能が低下します。原因となる遺伝子異常により症状はさまざまですが、乳幼児期から細菌や真菌などの感染症を繰り返します。治療は主に感染症に対するもの、感染症を予防するもの、原因となる基礎疾患に対するものに分けられます。

原因

先天的なタンパク質の設計図(遺伝子)の異常により、白血球の一種である好中球の機能が低下することが原因です。好中球は外敵が来たときにタンパク質を用いて活性酸素を作ります。例えば、好中球機能異常症の一つである慢性肉芽腫症では、先天的な異常により、感染源を攻撃するための活性酸素を作ることができなくなってしまいます。日本人では約20万人に一人の割合で発症しています。そのほかの原因となる基礎疾患には、慢性肉芽腫症、ミエロペルオキシダーゼ欠損症、白血球粘着不全症、高IgE症候群、好中球G-6-PD欠損症、二次顆粒欠損症、Shwachman症候群などの病気が挙げられます。

症状

生後2~3か月から細菌やカビの仲間である真菌が原因となる感染症の症状が出始めます。自覚症状としては、発熱、咳、呼吸困難、皮膚(ひふ)の痛み、腫れ、下痢、血便、腹痛、成長が遅くなる、などがあります。このような自覚症状が表れにくい患者さんもいます。この場合、何度も肺炎皮膚炎を繰り返すことで病気が判明することがあります。腹痛や下痢が数週間続いた場合もこの病気の可能性があります。全身に感染症が広がる敗血症と呼ばれる合併症が起きた場合には、治療が困難になり重篤になる危険性があります。

検査・診断

好中球機能異常症では、血液検査や画像検査、遺伝子検査を主に用いて検査を行います。血液検査では、血液に含まれる白血球を調べ、外敵を倒すはたらきが機能しているかどうか確認します。特に好中球が、正常に外敵を攻撃できるのか詳細に調べます。また、繰り返す感染症によって引き起こされる炎症や貧血、タンパク質の異常などについてもわかります。肺炎腸炎皮膚炎などが考えられた場合、感染源を特定するために画像検査を行います。レントゲン検査やCT検査が一般的です。好中球の機能異常が発見された場合や家族内に類似の病気を発症した人がいた場合には、遺伝子検査を行います。複数の遺伝子異常があり、どの遺伝子異常があるかによって重症度が異なるため、治療の選択が大きく変わります。

治療

外来で通院を行いながら治療できます。治療の目的は感染症のコントロールです。細菌に対する抗生物質や真菌に対する抗真菌薬で治療を開始します。重度の感染症の場合は、入院し点滴で治療を行います。症状が落ち着いた場合には、内服薬で治療を行いながら外来で経過観察を行います。感染症が起きないように予防することが重要であり、抗生物質を定期的に内服しながら通院します。重度の感染症を繰り返す場合には、唯一完全に直すことのできる“造血幹細胞移植療法”を検討します。

1.感染症に対する治療

入院中は点滴で抗生物質や抗真菌薬を投与します。外来通院しながら予防的に内服薬を継続します。手洗いやうがいなど日常から感染症を予防することが重要です。インフルエンザ肺炎球菌などの予防接種も有効です。BCGは深在性リンパ節炎と呼ばれる合併症を引き起こすことがあるため主治医に相談してください。

2.造血幹細胞移植療法

重症型の一部の症例でこの治療を行います。HLA(組織適合性抗原)という型が一致するドナーから提供された造血幹細胞を移植することで、血液の大本の細胞を入れ替える治療です。唯一、先天的な好中球機能異常症を根治することの望める治療です。大量の抗がん剤や放射線を用いて、骨髄にいるはたらけなくなった免疫細胞だけでなく正常の血液細胞まですべて破壊します。その後、ドナーから提供された造血幹細胞を移植し、患者さんの骨髄(こつずい)にうまく適合して正常な免疫細胞ができてくるのを待ちます。身体にかかる負担が非常に大きく、この治療の合併症で重篤になる可能性もあるため、この治療を行うかどうか慎重に見極める必要があります。

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