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COPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療法――​​横須賀市立うわまち病院のCOPD治療

COPD(慢性閉塞性肺疾患)の治療法――​​横須賀市立うわまち病院のCOPD治療
上原 隆志 先生

横須賀市立うわまち病院  呼吸器内科部長心得

上原 隆志 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年09月24日です。

喫煙を原因として発症するCOPD慢性閉塞性肺疾患)では、禁煙が治療のファーストステップです。そのうえで、患者さんの状態に応じていくつかの治療を組み合わせ、症状の進行を食い止めます。

今回は、横須賀市立うわまち病院 呼吸器内科部長心得である上原 隆志先生に、COPDの治療法や同院の取り組みについてお話を伺います。

COPD慢性閉塞性肺疾患)の治療でもっとも重要なことは、禁煙です。なかなか禁煙ができない患者さんに対しては、禁煙外来へご紹介するなどして禁煙サポートを行います。

そのうえで、患者さんの症状に合わせた薬物治療を行います。たとえば、気管支が狭くなって息が吸いづらい場合には、気管支を広げる気管支拡張薬を使用したり、痰が出しづらい場合には、去痰薬を処方することがあります。

また、COPD患者さんは気管支喘息を合併していることも少なくありません。そのような患者さんの場合には、1日1~2回吸入することで、COPDも喘息も同時に治療できる吸入薬を用いて治療しています。

COPDのリハビリテーションでは、下肢の筋力トレーニングが有効です。方法としては、平地や階段を歩いたり、自転車エルゴメーターやトレッドミルなどの機械を使ったトレーニングを行ったりします。

下肢の筋力を鍛えることで、息切れの症状が軽減されたり、歩行距離を伸ばしたりすることができる効果が期待できます。

▲自転車エルゴメーター▲トレッドミル
左:自転車エルゴメーター 右:トレッドミル

COPDの進行によって息切れなどの症状が悪化すると、体に十分な酸素を取り入れることが難しくなる“慢性呼吸不全”と呼ばれる状態になります。このような患者さんに対し、日常生活でも持続的に酸素吸入を行う、在宅酸素療法(HOT:Home Oxygen Therapy)を行うことがあります。

HOTでは、酸素供給機器からチューブを通して、持続的に酸素を体内に取り込みます。酸素供給機器には、自宅にいる間に使用する据え置き型や、外出時に使用する携帯型のものがあります。

また、酸素を取り込めないだけでなく、二酸化炭素の排出も難しくなっている場合には、在宅非侵襲性陽圧換気呼吸(NPPV:Non invasive Positive Pressure Ventilation)の導入を検討します。NPPVでは、マスクを使って持続的に補助換気(人工呼吸)を行います。

COPDによって何らかの合併症*が見られる場合には、合併症に対する治療を行います。COPDによって引き起こされる合併症は、“肺性心(はいせいしん)”や“気胸”などです。

肺性心とは、肺への血流が悪くなり、肺へ血液を送り出している右心室に負担がかかることによって発症する心不全**のことです。肺の病気が原因で起こるため、通常の心不全と区別するために、肺性心と呼ばれています。このような状態に対しては、心不全の治療を行います。

気胸とは、肺に穴が開き、肺の周りに空気が漏れて肺が押しつぶされてしまう状態のことです。気胸は、急に胸が痛くなったり、息がしづらくなったりすることで気づくことが多いです。手術が必要になることがありますが、呼吸状態が悪い場合には、気管支瘻孔(ろうこう)閉鎖術という内視鏡を用いる治療を行うことがあります。

また、COPDは、風邪やインフルエンザ肺炎などの感染症をきっかけに、病状が増悪(ぞうあく)することがあります。そのため、インフルエンザや肺炎を予防することも大切です。

*合併症:ある病気や治療によって引き起こされる別の症状

**心不全:全身に血液を送り出す心臓のポンプ機能が低下すること

当院では、自宅での呼吸管理が必要な患者さんに対して、積極的なHOTやNPPVの導入を行っています。

在宅酸素療法(HOT)や在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料を導入した場合には、少なくとも1か月に1回は、機器の使用状況や日常生活の状況、呼吸状態などを確認するために、医師の診察を受ける必要があります。しかし、当院がある横須賀市周辺は坂道が多いため、息切れなど呼吸器症状があるうえに、携帯用酸素ボンベを運ばなくてはならない患者さんが通院するのは、とても困難なことです。

そこで当院では、在宅医療を行う先生方との連携を図り、HOTやNPPV導入後の定期的なフォローアップをお願いしています。幸い横須賀市は、全国的にも在宅医療の体制づくりが盛んに行われている地域です。そのような環境を生かして、HOTやNPPVの導入を積極的に進めています。

COPDの患者さんが合併症として肺がんを患うことはあります。通院中に調べたレントゲンで見つかることも珍しくありません。横須賀市立うわまち病院では、COPDや肺がんの病状に合わせて、手術や放射線治療、抗がん剤、そして、がん免疫療法などを、患者さんと話し合いながら選択します。放射線治療に関しては、肺がんの部位や広がりで定位照射と呼ばれる治療も可能です。

COPDの症状を軽減するためには、患者さん自身による日々の自己管理が非常に重要です。そこで当院では、患者さんの自己管理能力を高めるための指導を積極的に行っています。

たとえば、自力で痰を出す排痰訓練や、吸入薬の治療効果を高めるための適切な吸入指導をしっかりと行うようにしています。また、急な呼吸困難が起きたときにパニック状態に陥らないようにするために、呼吸困難時の呼吸法を指導します。

そのほか、COPDの増悪()を引き起こす原因となる、インフルエンザ肺炎を起こさないようにするために、ワクチン接種を推奨しています。

上原先生

COPDは、“たばこ病”ともいわれていますが、過去に喫煙したことを責める必要はありません。昔の喫煙率は現在とは大きく異なり、COPDの患者さんに多い60〜70代の方々が20代の頃は、成人男性の約80%に喫煙習慣があったといわれています。その頃は、喫煙を今の健康意識とは違った見方であったと思います。

ですから、過去にとらわれるのではなく、これから禁煙を続けていくことで、病気の進行を食い止め、残った肺を上手に活用できるようにしていきましょう。

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    上原 隆志 先生

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