概要
過食症とは、心理的な原因を抱えることから極端な形で食べ物をとらずにはいられない状態を指します。大量の食事を摂取しますが、肥満恐怖があるため摂食したものを後に吐くといった過食に対しての代償行為があり、体重増加を防いでいます。過食症は神経性過食症とも呼ばれ、神経性食欲不振症とともに摂食障害の1種類として分類されています。神経性過食症は神経性食欲不振症と表裏一体であり、同じ人でも両方の病態を示すこともまれではありません。過食症は、さまざまなストレスをきっかけとして発症することが多く、男女関係、職場の対人関係なども誘因となります。
先進国における過食症の患者は、思春期~青年期女性の間でおおよそ4%と報告されており、神経性食欲不振症よりも多い数字となっています。ただし、実際に医療機関を受診する神経性過食症患者の比率は多くありません。
過食症は神経性食欲不振症と比較して死亡に至るリスクは低いものの、嘔吐からの誤嚥性肺炎、電解質異常からの不整脈などを発症することがあります。過食はストレスをめぐる患者なりの対処行動ともいえるため、これをコントロールするのは本人のみの努力では限界があり、家族や周囲の環境を含めた治療介入がポイントとなる病気です。
原因
過食症は、生物学的要因・心理的要因・社会的要因・文化的要因・家族/家庭環境など、さまざまな要因が複雑に関与しています。過食症はこうした複合的なストレスを原因として発生することが多く、男女関係や仕事における問題を契機とすることもあります。ストレスを抱えた結果、何かしらのストレス解消方法を求めるようになり、過食(むちゃ食い)や自己嘔吐という行為につながることになります。
また、ある種の抑うつ状態で過食症を合併する患者もいます。たとえば、非定型うつ病の人(対人過敏性・過眠・著しい倦怠感・過食などを症状とする)や、発達障害を持っている人が過食症を併発することも珍しくありません。
症状
過食症の発症様式として神経性過食症は大きく分けて、神経性過食症から始まる患者と、神経性食欲不振症から移行する患者の2パターンがあります。
いずれの場合でも、食事を必要以上にとる「むちゃ食い」をしてしまうことが起こります。短時間のうちに大量の食べ物を食べることになりますが、それに伴う体重増加を解消するための絶食・食事制限や、自己誘発性嘔吐・器具を用いた嘔吐・下剤の乱用などといった排出行為が大半のケースでみられます。
こうしたむちゃ食いや排泄行為を反復することに対しては、「異常である」という病識があるため、「どうしてこんなことをしてしまったのだろう」という自己嫌悪や自責感を感じることとになります。病識がはっきりしている点は、同じく摂食障害に分類される神経性食欲不振症と比べて大きな違いであるといえます。
また、過食嘔吐を長年にわたってし続けると、低カリウム血症や慢性腎不全、肝不全、急性腎不全など生命の危険を脅かすような合併症をきたしてしまう場合もあります。
検査・診断
過食症の診断では、むちゃ食いエピソードやそれ対しての代償行為を確認することが重要です。むちゃ食いをしている一定の時間は自分の食行動が制御できず、体重増加を回避するための自己嘔吐などの代償行為がみられ、それを振り返って落ち込むといった状況が一定期間反復しているときに、過食症の診断がなされます。
過食症では、むちゃ食いに関連した生活習慣病の発症や、肝機能障害や腎機能障害、電解質異常を伴うこともあります。こうした身体的な合併症を伴っていないかどうかを確認するために、血液検査で各種評価が行われます。
治療
過食症の治療は外来通院治療が基本であり、安定した治療関係のもとで患者を取り巻く重要な対人関係をめぐる生活環境上の問題を扱います。同時に最近では食行動異常に特化された認知行動療法的アプローチがとられています。過食症の患者では、公私にわたる複合的なストレスが要因になり、ストレスに対処する方策として過食が生じていることが大半です。そのため、過食・嘔吐の背後に潜む不適切な自己評価や対人関係上の問題など、病状発症の根源に対して1つひとつ具体的に明らかにしつつ対処することで治療を進めることになります。
また、過食症の治療においては、家族に対する治療者からの援助も大切です。両親に対する治療者からの心理的な支えは、長期的な観点からも重要なポイントです。また神経性過食症では自助グループなど集団療法の活用も有効とされます。
過食症の経過中には、身体的な問題を抱えることもあります。電解質異常を抱える場合には不整脈を発症するリスクもありますので、入院治療が行われることもあります。さらに、抑うつ気分が強くなることに関連して、自殺が懸念される状況もあるため、患者の生命保護の観点からの入院適応となることもあります。
過食症は、神経性食欲不振症と同様に完治を目指すことが難しい病気であると考えられています。過食による症状を緩和しつつ病気の寛解状況が保てるよう、見守りの姿勢で対処することが重要です。
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