インタビュー

ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは

ALS(筋萎縮性側索硬化症)とは
加藤 宏之 先生

介護老人保健施設恵仁ホーム 施設長

加藤 宏之 先生

この記事の最終更新は2016年04月24日です。

映画やドラマでクローズアップされる機会が増え、ALSという名前の認知度は高まりました。しかし、病気について正しい知識を持つ方は少ないのではないでしょうか。国際医療福祉大学 脳神経内科の加藤宏之先生にALS(筋萎縮性側索硬化症)についてお話をうかがいます。

身体を動かすための運動神経系(運動ニューロン)だけが選択的に変性して消失していく病気です。運動神経以外は障害されることがなく、それがなぜなのかは残念ながらわかっていません。

運動神経が働かなくなると、随意運動ができなくなります。随意運動とは、自分の意思で手足を動かす、食べる、話す、呼吸をするなどの機能です。これらの機能が数年かけて徐々に失われていくのです。

運動神経系は、脳から筋肉まで2つの神経系に分かれています。脳から脊髄(あるいは延髄)につながる上位運動ニューロンと、脊髄(あるいは延髄)から先へつながる下位運動ニューロンのどちらも障害されるという特徴があります。

たとえば、手足が動かなければ「歩く」という行為ができなくなるため、結果として寝たきりになります。口や喉の運動神経が動かなくなれば、「話す」という行為ができなくなるため、結果として自分以外の他者とのコミュニケーションがとれなくなります。また、「食べる」という行為ができなくなれば、栄養がまったく摂れないため命に関わりますし、「上手に」食べるという行為ができなければ誤嚥が起き肺炎の原因になります。

運動神経系の働きでもうひとつ重要なことは、「呼吸する」という行為です。呼吸は一見、無意識に行っていることのようですが、実は体が呼吸筋や横隔膜を使って随意的に(自発的に)行っているのです。この「呼吸する」という行為ができなくなると、結果として窒息してしまいます。ALSにかかった場合、この自発呼吸ができなくなるまで早い場合で2年、最長でおよそ5年といわれています。

通常は50~60代で発症しますが、もっとも多い発症年代は60~70代です。ただし、非常に稀ですが若い年代で発症することもあります。30歳以前に発症するケースがおよそ5パーセント程度、40歳以前に発症するケースがおよそ10パーセント程度といわれています。

日本には、2015年現在で1万人弱の患者さんがいらっしゃると報告されています。つまり、人口10万人あたり5人前後の患者さんがいらっしゃることになります。

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    ALS(筋萎縮性側索硬化症)、多系統萎縮症、脊髄小脳変異症、パーキンソン病など神経難病医療のエキスパートとして広く知られる。現在は介護老人保健施設恵仁ホーム 施設長として学術、臨床の両面で後進の指導にも力を入れる。

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