インタビュー

胸焼けの原因となる胃食道逆流症とはどんな病気?

胸焼けの原因となる胃食道逆流症とはどんな病気?
加藤 真吾 先生

横浜市立大学附属病院 がんゲノム診断科

加藤 真吾 先生

稲森 正彦 先生

横浜市立大学医学部 医学教育学主任教授

稲森 正彦 先生

目次
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この記事の最終更新は2015年05月05日です。

食後、特に甘いものや刺激の強いものを食べ過ぎた時、胃もたれや胸焼けを感じる方は多いのではないでしょうか。時間の経過とともに治る胸焼けなら問題ありませんが、胸焼けが慢性的にある方は、胃食道逆流症GERD(gastroesophageal reflux disease)です。胸焼けはなぜ起こるのでしょうか。今回は、胸焼けを引き起こす胃食道逆流症について、ご紹介します。

胃食道逆流症の原因は胃酸が食道側に逆流することです。食道粘膜は胃酸から食道を守ることができないため、胃酸が食道内に逆流すると、粘膜障害を引き起こします。健康な人の場合、胃酸が食道内に逆流しないよう、食道と胃のつなぎ目の部分は下部食道括約筋(lower esophageal sphincter; LES)によって、十分な力で下部食道が閉じられています。しかし、この胃酸の逆流を防ぐ機能が障害されてしまうと、胃食道逆流症が引き起こされてしまうのです。

胃食道逆流症の仕組み
胃食道逆流症の仕組み

胃酸が逆流するのを防ぐ機能(胃酸逆流防止機能)が正しく働かなくなってしまう原因は、大きく分けて2つ挙げられます。

  1. 下部食道括約筋圧(LES圧)が低下:その原因には、食道裂孔ヘルニア(つなぎの部分の固定が弱くなり、本来おなかの中にあるものが胸のほうへとびだしてしまう病気)を患っていたり、カルシウム拮抗薬や硝酸薬の服用している場合が挙げられます。
  2. 食道側からの圧力(LES圧)を超える腹圧の上昇:LES圧を超える腹圧の上昇は、中高年の肥満者や妊婦に多くみられます。

下部食道括約筋圧(LES圧)の低下、またはLES圧を超える腹圧の上昇により、胃酸が食道内に逆流してしまいます。この逆流した胃酸により、胸焼けなどの症状が引き起こされるのです。

典型的症状は胸やけ・逆流感であり、その他の症状として、前胸部痛・慢性的なせきなどの呼吸器症状や咽頭部違和感(のどの痛みやつっかえる感じ)・嗄声(しわがれ声)などがあります。また上部消化管内視鏡を行うと、逆流した胃酸により食道に粘膜障害が起こっていることがあります。

典型的症状である胸焼けが週2回以上あれば、胃食道逆流症と診断します。(胃食道逆流症は症状のみに焦点を当てた病名です)
一方、逆流性食道胃炎(reflux esophagitis; RE)は内視鏡で食道に粘膜障害があった場合のことを言います。内視鏡で粘膜障害が見つからなくても、胸焼けの症状がある場合も存在するため、この2つは全く同じではありません。

胃酸分泌抑制薬であるプロトンポンプ阻害薬(Proton Pump Inhibitor; PPI)による治療が一般的です。その他、H2ブロッカー(胃酸分泌抑制作用)、粘膜保護薬、消化管運動機能改善薬などが用いられます。PPIの有効性は高く、90%以上が改善します。また薬による治療がうまくいかない場合の選択肢として、外科手術により胃酸の逆流を抑制する治療もあります。

普段の食生活では、脂肪の多い食べもの、アルコール、コーヒー、炭酸飲料、チョコレートなどは逆流症状を悪化させるので、避けましょう。

記事1:胸焼けの原因となる胃食道逆流症とはどんな病気?
記事2:食道アカラシアとはー食道が十分に開かなくなる病気

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