腎がんの代表的な症状は、背中や腰の痛み、血尿、腫瘤に触れるの3つで、腎臓のどの部分に腫瘍ができるかによって異なります。しかし、こういった症状は多くの場合、進行した状態でないと現れません。初期の腎がんの多くは自覚症状がなく、早期発見・治療するにはエコーやCTなどの画像検査を定期的に受けることが重要です。
今回は、獨協医科大学病院泌尿器科主任教授の釜井隆男先生に、腎がんの症状についてお話しを伺いました。
初期の腎がんは、患者さんの自覚症状がほとんどありません。腎がんの代表的な症状は、進行した状態でないと現れないことがほとんどです。そのため、初期の段階で腎がんがみつかった患者さんの多くは、人間ドック*や、腎がんとは関係のない腹痛などから画像検査を受け、腎臓に腫瘍が映ったことで偶然みつかるというケースです。また、腎がんが転移した臓器の症状が先に現れ、検査をした結果腎がんがみつかるケースもあります。
人間ドック…さまざまな検査を実施し、体の隅々まで調べるもの。
腎がんが転移しやすい部位としては
が挙げられます。
初期の腎がんでは画像だけでなく、血液検査の値にも異常がみられます。血小板数が低下し、LDH(酵素の1種)とCRP(タンパク質の1種)とカルシウムが上昇している場合は、何らかの異常で腎臓がダメージを受けているというサインです。また、長期的に夕方になると原因のわからない熱(不明熱*)が出る場合や、食欲不振などから体重が減少するといった症状がある場合は、何らかの悪性腫瘍がある可能性が疑われます。なるべく早期に病院を受診し、画像検査(エコー*やCT*など)などの精密検査を受けることをお勧めします。
不明熱…不明熱の定義は、38.3℃以上の発熱が3週間以上続き、1週間の検査でも原因がわからないとされる。不明熱の原因として挙げられるものは、感染症、非感染性炎症性疾患、悪性腫瘍などがある。
エコー…超音波を身体にあてて、身体内部を映像化する検査。
CT…エックス線を使って身体の断面を撮影する検査。
進行した腎がんの代表的な症状は
の3つです。
用を足す際に血の混じった真っ赤な尿(血尿)が出たり、腹部や腰を触るとボコっとした腫瘤に触れたりするなどの症状が現れます。なお、膀胱炎*などで血尿が出る場合は痛みや違和感を感じますが、腎がんの血尿で痛みを感じることはあまりないといわれています。
また、腎がんの患者さんのなかには背中や腰の痛みから、泌尿器科ではなく整形外科などを受診する方もいます。その結果、その他の症状がでるまで、腎がんをみつけられないこともあるのです。
膀胱炎…膀胱が炎症を起こす病気であり、排尿痛や血尿などの症状が現れる
腎臓のどの部位に腫瘍ができるかによって、腎がんの症状は異なります。
たとえば、腎臓のなかでも腎盂(じんう)*という場所に腫瘍が飛び出していた場合は腫瘍の大きさが小さくても、血尿がでやすくなります。また、骨に転移した場合には、背中や腰の痛みが現れます。
腎盂(じんう)…尿を収集して膀胱へと送るはたらきをしている袋状の部分。
腎がんの患者さんのなかには、「頻繁に病院に通っていたのに、どうして早く腎がんをみつけられなかったのか」とおっしゃる方もいます。このような方の場合、病院に通っていても画像検査を受けていなかったことが、発見が遅れてしまった1つの要因と考えられます。最初に述べたように、初期の腎臓がんはあまり自覚症状が現れません。そのため、腎がんを早期発見するためには、検査で腎臓の画像を撮る必要があるのです。
どの程度の進行具合で腎がんを発見したかによって、治療法や予後は大きく変わります。もちろん、早期に発見できた場合は、患者さんの心身ともに負担の少ない治療ができますし、予後もよいと予想されます。腎がんの早期発見と治療のためには、「定期的に健康診断を受け、エコー*やCT*などの画像検査で腎臓の様子を調べることが大切」ということを、もっと多くの方々に知ってもらう必要があると強く感じています。
エコー…超音波を身体にあてて、身体内部を映像化する検査。
CT…エックス線を使って身体の断面を撮影する検査。
(腎がんのステージ(病期)については詳しくは、記事1『腎がんのステージ(病期)と原因について』をご参照ください)
(腎がんの治療法について詳しくは、記事3『腎がんの治療法と術後の生活について』をご参照ください)
獨協医科大学病院 泌尿器科主任教授
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