すいとうしゅよう

膵島腫瘍

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

膵島腫瘍(すいとうしゅよう)とは膵神経内分泌腫瘍(すいしんけいないぶんぴつしゅよう)やpNETとも呼ばれます。神経内分泌腫瘍(NET:Neuroendocrine tumor)とは、ホルモンを作る「内分泌細胞」から発生する腫瘍の総称であり、全身のさまざまな臓器に生じます。

このうち膵神経内分泌腫瘍は、すい臓の神経内分泌細胞である膵島細胞(ランゲルハンス島)から発生します。たとえば、インスリノーマガストリノーマなどが、膵神経内分泌腫瘍に含まれます。

膵神経内分泌腫瘍には、良性のものと悪性のもの(がん)があります。ただし、悪性の膵神経内分泌腫瘍とすい臓がんは異なります。すい臓がんは悪性度が高く進行も速いため、治癒を目指すことが難しいがんとして知られています。一方、膵神経内分泌腫瘍は進行速度が比較的穏やかであるといわれています。また、悪性度は分泌されるホルモンなどにより異なります。

膵神経内分泌腫瘍は、世界的にみても発症頻度が非常に低い、まれな腫瘍として知られています。日本における有病患者数は、人口10万人あたり約2.23人と推測されています(2008年の報告)。

原因

膵神経内分泌腫瘍の原因は、現在のところわかっていません。

また、遺伝性疾患のMEN-1などに伴って起こる膵神経内分泌腫瘍は、遺伝により発症することもあります。ただし、遺伝により起こる膵神経内分泌腫瘍は全体の一部であり、ほとんどの神経内分泌腫瘍は遺伝しません。

なお、すい臓がんなどのリスク因子として知られている過度の飲酒や喫煙と、膵神経内分泌腫瘍との明らかな相関関係は認められなかったという報告があります。

症状

神経内分泌腫瘍には、産生するホルモンによる症状があるタイプとないタイプがあります。

  • 機能性の膵神経内分泌腫瘍:腫瘍から分泌されるホルモンにより、体に何らかの症状が現れるもの。
  • 非機能性の膵神経内分泌腫瘍:ホルモンの過剰産生がなく症状が生じないもの。

以下は、主な機能性膵神経内分泌腫瘍と、それぞれに現れる代表的な症状です。

インスリノーマの症状

インスリノーマとは、腫瘍からインスリンというホルモンが過剰に分泌される膵神経内分泌腫瘍です。主に次のような低血糖症状がみられます。

  • 動悸
  • 冷や汗
  • 思考の低下
  • 眠気
  • 意識障害
  • 異常な行動

など

ガストリノーマの症状

ガストリノーマとは、腫瘍からガストリンというホルモンが過剰に分泌される神経内分泌腫瘍です。すい臓のほか、十二指腸の内分泌細胞から発生することもあります。胃酸が大量に分泌されることで、次のような症状が現れます。

など

VIPオーマの症状

VIPオーマとは、胃酸を抑え、腸液の分泌を促すVIP(血管作動性腸管ペプチド)が過剰に分泌される神経内分泌腫瘍です。すい臓のほか、十二指腸に発生することもあり、以下の症状を引き起こします。

など

グルカゴノーマの症状

グルカゴノーマとは、腫瘍からグルカゴンというホルモンが過剰に分泌される膵神経内分泌腫瘍です。グルカゴンは、血糖を上昇させる作用や、タンパク質の分解を促す作用を持ちます。これらの作用が過剰に働くことで、以下の症状がみられます。

・下腹部から太ももの紅斑(遊走性壊死性紅斑)

など

セロトニン産生腫瘍の症状

セロトニン産生腫瘍(カルチノイド腫瘍)とは、腫瘍からセロトニンをはじめ、さまざまな物質が過剰分泌される神経内分泌腫瘍です。肺をはじめ全身の多様な臓器に発生し、すい臓の内分泌細胞からも発生することがあります。セロトニン産生腫瘍が肝臓に転移すると、心臓や肺に重い障害をきたすことがあります。

  • 皮膚が赤くなる
  • ほてり
  • 腹痛
  • 下痢
  • 喘息のような発作(気管支収縮)
  • 心臓の疾患

など

ソマトスタチノーマの症状

ソマトスタチノーマとは、インスリンなど、さまざまなホルモンの分泌を抑えるソマトスタチンが過剰に分泌される神経内分泌腫瘍です。分泌が抑制されたホルモンの作用に応じ、糖尿病など、多様な症状が現れます。

  • 糖尿病
  • 脂肪便
  • 胆石
  • 体重減少

など

検査・診断

問診

機能性の膵神経内分泌腫瘍が疑われる場合は、問診により現れている症状の確認などが行われます。

血液検査

インスリン、グルカゴンなどの血液中のホルモン濃度が正常域を超えて上昇しているかを確認します。

セロトニン産生腫瘍では尿中の5-HIAAという酸が高くなるため、尿検査が行われることもあります。

画像検査

腫瘍が存在する部位や転移の有無、腫瘍の性質を調べるために、超音波検査、造影CT検査、MRI検査、内視鏡を用いた超音波断層検査(EUS)などが行われます。

最近では神経内分泌腫瘍に特異的なソマトスタチン受容体シンチグラフィーという検査も日本で可能になっています。これらの画像検査は、症状が出ない非機能性の膵神経内分泌腫瘍を診断するために役立ちます。また、典型的な膵神経内分泌腫瘍の場合、検査で得られた画像により、すい臓がんとの見極めを行えることもあります。

生検・病理検査

超音波内視鏡などを用いて、腫瘍細胞を採取します(生検)。その後、病理診断を行える医師が細胞を顕微鏡で観察し、膵神経内分泌腫瘍の場合に発現する特殊なタンパク質を確認します。この検査により、最終的な診断を確定させることができます。

症状のない膵神経内分泌腫瘍の診断

自覚症状のない非機能性の膵神経内分泌腫瘍は、健康診断などで偶然みつかることが多いといわれています。

治療

膵神経内分泌腫瘍の治療方法は、手術治療、薬物療法、局所療法の3つです。

手術

膵神経内分泌腫瘍では、腫瘍を切除するための手術治療が第一選択とされています。

現時点では、手術による腫瘍の「完全切除」が、根治を目指せる唯一の方法といわれています。そのため、安全な手術が可能と判断された膵神経内分泌腫瘍では、治癒を目指した完全切除が選択されます。

また、進行して転移などがみられる状態でも、切除手術を行うことで、症状の緩和や経過の改善が見込めるケースもあります。この場合、体内から腫瘍を減らすために、一部を残して大部分を切除する「減量切除」が選択されることもあります。

薬物療法

安全な切除が難しい症例など、手術の適応とならない膵神経内分泌腫瘍には、薬物を使った治療が行われます。また、腫瘍の減量切除後に薬物療法が追加されることもあります。

治療で用いられる薬剤には以下のものがあります。

分子標的薬

腫瘍細胞にターゲットを定めて作用する薬です。腫瘍の増大を抑える作用があります。

ソマトスタチンアナログ製剤

腫瘍の増大を抑えたり、縮小させたりする作用があるとされています。また、ホルモンの過剰な産生を抑えることで、症状を和らげられることがあります。

抗がん剤

悪性の腫瘍細胞を死滅させることで、腫瘍が大きくなることを抑えます。

その他

このほかに、患者さんに現れている症状に応じた治療薬が処方されることがあります。

局所療法

局所療法は、肝臓への転移がみられる場合に、すい臓に発生した原発巣ではなく、肝臓の腫瘍に対して行われます。局所療法には、ラジオ波焼灼術、肝動脈塞栓術(TAE)、肝動脈化学塞栓術(TACE)などがあります。どの方法を選択するかは、肝臓に転移した腫瘍の数や位置などにより変わります。

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