A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは、A群β溶血性レンサ球菌(A群レンサ球菌、溶連菌)に感染することによって喉の奥にある咽頭や扁桃などの上気道が炎症を起こす病気で、日本をはじめとする世界中でよく見られます。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎では2~5日程度の潜伏期間の後、急な発熱や体のだるさ、喉の痛みなどの症状が現れます。細菌性の感染症であるため、抗菌薬による治療が有効です。
本記事では、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の主な原因や感染経路、予防方法についてお伝えします。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の原因は、A群レンサ球菌への感染です。A群レンサ球菌は感染する部位によって、咽頭炎のほかにもとびひ、蜂窩織炎、扁桃炎など、さまざまな病気の原因となります。
また、A群レンサ球菌特有の病気として猩紅熱や劇症型溶血性レンサ球菌感染症があります。猩紅熱とはA群レンサ球菌による全身性の感染症で、発熱が生じるほか、頬や体幹、四肢などに皮疹が生じる病気です。特に子どもがかかりやすい病気といわれています。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症とはレンサ球菌に感染することにより、急速に軟部組織の壊死、循環不全、急性腎不全、さらに多臓器不全をもたらすことがあるまれな病気です。ときに命に関わることもあります。劇症型溶血性レンサ球菌感染症はあらゆる年齢でかかりますが、特に30歳代以上の大人に多いといわれています。
A群レンサ球菌以外にも咽頭炎の原因となる微生物はあります。ウイルスでは、ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、EBウイルスなどが咽頭炎の原因になることがあります。
A群レンサ球菌のような細菌性の感染症の場合、抗菌薬を服用することによって治癒が期待できますが、ウイルス性の感染症の場合には抗菌薬を服用しても効果がありません。
A群レンサ球菌の感染経路は、細菌による感染を起こしている人から細菌が手などを介して拡がる“接触感染”が一般的です。そのため、人と人との接触機会が多い家庭や学校などでは集団感染が起こりやすいといわれています。
A群レンサ球菌の特徴として、感染性がもっとも強いのは症状が強く現れる急性期といわれています。発症前には2~5日ほどの潜伏期間がありますが、この間に感染性があるかどうかはよく分かっていません。また、症状がないもののA群レンサ球菌を保菌している“健康保菌者”もいますが、健康保菌者から感染が拡がることはまれと考えられています。
A群レンサ球菌の感染予防には、感染者との濃厚接触で主に手を介して拡がるので正しく手指衛生を行うことが重要です。通常のせっけんや液体せっけんによる流水手洗い、または手指消毒用のアルコールによる擦りこみのどちらも有効です。
家庭内で感染者が出た場合には、一般に治療開始から24時間ほどで感染力がなくなります。同様に家庭内でも手指衛生をきちんと行いましょう。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は一年を通じて見られる感染症ですが、流行期は冬から春といわれています。日頃から手洗いなどの感染症予防を行いましょう。
また、発熱や喉の痛みなどA群溶血性レンサ球菌咽頭炎を疑う症状が現れた場合には、内科や耳鼻科の受診を検討しましょう。子どもの場合には小児科の受診を検討しましょう。
WHO Western Pacific Region Office, Field Epidemiologist、東京都立小児総合医療センター 感染症科 非常勤
日本小児科学会 小児科専門医・小児科指導医日本小児感染症学会 暫定指導医米国感染症学会 会員欧州小児感染症学会 会員米国小児感染症学会 会員米国病院疫学学会 会員米国微生物学会 会員
小児患児に感染症が多いにも関わらず、それぞれの診療科が独自に感染症診療を行うという小児医療の現状を変えるべく、2008年トロント大学トロント小児病院感染症科に赴任。感染症症例が一挙に集約される世界屈指の現場において多くの臨床経験を積むとともに、感染症専門科による他診療科へのコンサルテーションシステム(診断・助言・指導を行う仕組み)を学ぶ。2010年帰国後、東京都立小児総合センターに小児感染症科設立。立ち上げ当初、年間200件~300件だったコンサルタント件数は現在1200件を超える。圧倒的臨床経験数を誇る小児感染症の専門家がコンサルタントを行うシステムは、より適正で質の高い小児診療を可能にしている。現在は後進育成にも力を注ぐ。
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