インタビュー

ADHD(注意欠如多動性障害)とは?大人と子どものADHDの特徴や男女比

ADHD(注意欠如多動性障害)とは?大人と子どものADHDの特徴や男女比
稲垣 真澄 先生

国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 元知的障害研究部長

稲垣 真澄 先生

この記事の最終更新は2017年12月25日です。

ADHDとは発達障害のひとつです。多動性・衝動性・不注意の3つの特徴を有し、それらが年齢に不相応に現れて生活に支障をきたします。ADHDの特徴や男女比、子どもと大人のADHDの違いなどについて、国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 知的障害研究部 部長の稲垣 真澄先生にうかがいました。

ADHDは、多動性・衝動性・不注意の3つの行動の特徴を持つ発達障害です。子どものころから、このADHDの傾向がみられます。しかしながら、子どものころにADHDの傾向があっても周囲のサポートなどでうまくカバーされている場合などはADHD症状による問題が顕在化せず、大人になってからADHDの症状で仕事や社会生活、日常生活に支障をきたすことがあります。近年、これらは「大人の発達障害」として知られるようになってきました。

ADHDの男女比はおよそ3:1といわれています。男性に多い発達障害です。また、男児のほうが多動性・衝動性によるトラブルを生じやすく、問題視されやすいことから比較的早期の受診につながることが多いのではないかと考えられます。

ADHDに限らず、発達障害全般に男性が多い理由は、染色体が関連しているのではないかともいわれています。ヒトの性別を決定する性染色体は、男性はXY、女性はXXです。X染色体を2本もつ女性は一方の染色体に何かしら不具合が起きた際にもう一方の染色体がカバーできます。しかし、男性の染色体はX染色体が1本、Y染色体が1本ですから、不具合をカバーしきれません。

この性染色体の説は一般的な説ではありますが、まだ詳しい理由はわかっていないのが現状です。

子どものADHDは、歩き始める1歳ごろからその症状が出てきます。私が診察をしていてよく保護者の方から聞く行動は「今まで歩かなかったのに、突然走り始めた(歩き始める時期と走り始める時期が同じだった)」というものです。

そのほかにも、下記の行動がみられます。

  • すぐに迷子になる              
  • 興味のあるものを見つけるとすぐに走り出す
  • 高いところへのぼりたがる。
  • 友達とのけんかやトラブルが多い
  • 授業中など、じっとすべき場面で席を立つ
  • 物を乱暴に扱う(おもちゃをよく壊す)
  • 授業中に手を挙げずに答えてしまう など

年齢が上がっていくと、反比例するように徐々に多動性が減ってきます。しかしながら、不注意の特性は年齢を重ねても軽快することはありません。

不注意による行動は、以下が例に挙げられます。

  • 気が散りやすい(注意散漫)
  • 指示と無関係のことをしてしまう
  • 忘れ物や失くし物が多い
  • ケアレスミスが目立つ
  • 約束を守れない(忘れてしまう)
  • 複数のタスクを並行できない、順序だてて物事を行えない など

子どものADHDの症状と対応について、詳しくはこちら

大人になると、先にも述べたように多動性や衝動性による行動は少しずつみられなくなります。その代わりに不注意の症状が目立つようになり、社会生活や日常生活で支障が出てくるようになります。

大人のADHDにおける不注意症状は、前述した子どものADHDの不注意症状と同様のものです。

  • 忘れ物や失くし物が多い
  • ケアレスミスが目立つ
  • 約束を守れない(忘れてしまう)
  • 複数のタスクを並行できない、順序だてて物事を行えない など

衝動性や多動性などが残ることもあり、その場合には下記の症状が現れます。

  • 貧乏ゆすりなど、なんとなく落ち着かない
  • 失言が多い
  • 衝動的に決断・行動してしまう など

 

大人のADHDについての詳細はこちら

女性のADHDの場合は、不注意が目立つことのほうが多く、多動性・衝動性はあまり目立ちません。多動性による離席、衝動性による友達とのトラブルなどを起こさないことから学校生活で問題視されにくく、ADHDの発見が遅れることがあります。

学校生活ではADHDの不注意症状がそれほど問題とならなくても、大人になり社会人として働くようになってから、不注意症状に悩まされるパターンが多いです。ケアレスミスや時間が守れない、仕事の締め切りを守ることができないなど、不注意により仕事でトラブルを抱えることが増えます。

仕事だけでなく、家庭でも困難を覚えます。家事や育児は同時に複数のタスクを行うことを要求されますから、マルチタスクを苦手とするADHDの女性では、うまくそれらをこなせないことが多いのです。

ADHDが疑われた際の相談先は、ADHDの疑いのある方の年齢によって変わります。

子どもの場合は、園や学校の先生に相談するとよいでしょう。園や学校では、厚生労働省が進めている、地域巡回相談が利用できます。

大人の場合は、各都道府県にある発達障害支援センターの相談窓口で相談してみるとよいでしょう。生活の困難の程度によっては病院の受診を勧めてくれます。また、同時に職場でどのように工夫して仕事をしていくか、といったアドバイスを受けることもできます。

  • 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 元知的障害研究部長

    日本小児科学会 小児科専門医日本小児神経学会 小児神経専門医日本てんかん学会 てんかん専門医指導医・てんかん専門医日本臨床神経生理学会 専門医(脳波分野)

    稲垣 真澄 先生

    知的障害、ADHD、自閉スペクトラム症など発達障害医学の専門家。特に読み書き障害、ADHDの診断治療などを専門としており、センター病院の外来診療にも従事している。保護者の養育レジリエンス指標の開発やチック、吃音など顕在化しにくい発達障害のスクリーニング法開発研究でも活躍。関連の研究業績も多数あり、厚生労働省、文部科学省など多くの研究班の主任研究者を務める。研究者の育成にも定評があり、多数の若手が集まる。

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