C型肝炎はかつて、治療することが難しい病気でした。しかし近年新しい薬が次々と登場し、C型肝炎の治療は大いに進歩を遂げました。これにより、C型肝炎は治療可能な病気になりました。
この記事では、C型肝炎の治療の進歩について、さらには治療後の注意点について、大阪市立大学肝胆膵病態内科学教授の河田則文先生にお話をお伺いしました。
C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)によって引き起こされる肝臓の病気です。肝硬変や肝臓がんの原因としても有名です。肝炎ウイルスの検査は各都道府県の健診に組み込まれていることがあります。そうでない場合も検査は都道府県などが指定した医療機関であれば無料で受けることができます。ちなみに、大阪府の抱える肝炎の専門病院は全国でも有数の多さとなっています。
つい数年前、2014年の前半まではC型肝炎はインターフェロンという薬で治療をしていました。しかし、インターフェロンは副作用の強い薬です。若い人以外には積極的に勧められる治療ではなく、高齢の方は治療に踏み込めずに躊躇されていたこともありました。それでも、C型肝炎の患者さん全体の50%程度までしかウイルスを排除できなかったのです。
しかし、そのようなC型肝炎の治療を根本から変えたのが、2014年の秋に日本から出たインターフェロンを使わない飲み薬「ダクラタスビル」と「アスナプレビル」です。この2剤を飲むだけで、治験においては85%のケースでC型肝炎ウイルスを排除できるという結果が出ました。実際の臨床ではさらに良い成績が出ています。さらに副作用は軽微で、80歳以上の患者さんも治療を受けることができます。これにより、今まで治療ができなかった方も治療を受けられるようになりました。
その後、さらに新しい薬である「レジパスビル/ソホスブビル」が2015年に登場したことにより100%近い治癒率になりました。これは1日1回12週間にわたって飲む薬です。2015年の末には「オムビタスビル/パリタプレビル」も登場しました。近い将来にはさらに改良され、6-8週間飲むことで治療が可能になります。かつては非常に手ごわかったC型肝炎ウイルスを、いとも簡単に消すことができるようになったのです。
C型肝炎の治療後にも大切なことがあります。
治療期間が終わった後、C型肝炎ウイルスが消えたとします。そこで患者さんに注意していただきたいのは「焼け野原はそこまで簡単に元通りにならない」ということです。つまり経過観察は必要であり、治療後に診療を受けなくてよいということではないのです。あくまで慢性疾患として取り扱わなくてはいけません。なぜなら、まだ「肝臓がんになりやすい素地」が残っているからです。
そのため、人によって期間は異なりますが、概ね半年に1回は定期的に検査を受けて頂くことが大切です。これは、もし肝臓がんにかかったとしても、治療するにあたっては早期発見こそが大切だからです。特に肝がんの大きさが直径2cm以内の状況で早期発見ができれば、十分に治療が可能になります。
大阪市立大学病院では、C型肝炎ウイルスが排除された方にはインターフェロンによる治療の時代からの長い経過だと、15年ほど通院されている方もいます。その中でもおよそ60人程度の方で肝臓がんが出現しているのです。
大阪市立大学医学部附属病院 病院長補佐、大阪市立大学医学部附属病院 肝胆膵内科部長、大阪市立大学医学部附属病院 輸血部部長、先端予防医療部MedCity21 副部長、大阪市立大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学 教授
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