概要
原田病とは、メラニン色素を産生するメラノサイトと呼ばれる細胞に対して慢性的な炎症を起こす自己免疫疾患のひとつです。原田病は、別名、フォークト-小柳-原田病という名称でも知られています。
メラニンとは髪の毛や皮膚、目の色の素として知られていますが、他にも網膜、耳、中枢神経などにもメラニンは存在していて、それぞれ重要な役割を果たしています。原田病ではメラニン色素細胞が攻撃されてしまうため、メラニンに関連した臓器が障害され、視力の低下や耳鳴り、脱毛、白髪、皮膚の白班などの症状が出現します。原田病は自己免疫疾患のため、ステロイドを主体とした免疫抑制療法が治療の中心となります。
原因
原田病は、メラノサイトと呼ばれる細胞に対し、自己免疫反応が生じていることで発症すると考えられています。メラノサイトはメラニンを産生する役割を持った細胞で、目や皮膚、髪の毛など全身に存在しています。
免疫細胞は、ウイルスや細菌など外部からの刺激に対して自分の身体を守るため、防衛反応に重要な役割を担っています。原田病は、免疫反応が病原体でなく自分自身の細胞(原田病ではメラノサイト)を攻撃している、いわば免疫が誤作動を起こした状態と考えられています。
原田病はアジア人や中東系の人種に多く、また兄弟や双子での発症例も報告されています。そのため、HLA型(ヒト白血球抗原)に応じた発症のしやすさの違い、その他の遺伝子に関連した病気のなりやすさの違いなどもあるのではないかと推察されています。
症状
原田病の症状は、皮膚、目、耳、中枢神経などメラニンの存在する組織に関連したものが出現します。
初期症状として、頭痛やめまい、嘔吐や微熱を見ることがあります。病状がさらに進行すると、網膜剥離やぶどう膜炎、緑内障、白内障、虹彩後癒着などを発症するほか、目の充血、かすみ、もののゆがみ、視力障害を見るようになります。視力障害が進行すると失明、耳に関する症状が進行すると感音性難聴と呼ばれるタイプの難聴を来すことがあります。
初発症状を認めるようになってから数か月から数年たつと、皮膚や髪の毛の色が薄くなるようになります。視力や難聴に関しての症状は治療により改善が期待できますが、皮膚や髪の毛の脱色に関連した症状は永続的に続くことが多いです。また、中枢神経系の症状として、髄膜炎症状(頭痛や発熱、首の固さなど)を発症することがあります。さらに原田病では、脳の認知機能に影響が及ぶこともあります。
検査・診断
原田病では網膜剥離やぶどう膜炎、緑内障、白内障など、目に関連した症状を呈することが多いため、眼科的な検査が重要になります。一般的な眼科的な診察に加えて、蛍光眼底造影検査、光干渉断層計、エコー検査などを実施します。こうした眼科領域の検査のほか、聴力に関連する耳鼻科領域をはじめ各種分野の検査を実施します。
眼科領域の検査
蛍光眼底造影検査や光干渉断層計では、網膜剥離を観察することが可能なため、原田病の初期段階における微細な病変部位も検出することができます。
エコー検査では、脈絡膜と呼ばれる眼球の一部が分厚くなっていることを観察することができます。病期が進行すると、目に関連した変化はより明らかになり、たとえば眼底検査では夕焼け状眼底と呼ばれる特徴的な変化を見ます。
耳鼻科領域の検査
原田病では感音性難聴というタイプの難聴を呈します。難聴は患者さん自身が必ずしも自覚している症状ではないため、潜在的な難聴を起こしていないか確認します。
その他の検査(内科領域など)
原田病では髄膜炎を合併することもあるため、髄液を採集して内容物を検査する髄液検査HLA型を特定するため遺伝子検査などを実施します。
治療
原田病の治療は、ステロイドを用いた免疫抑制療法が主になります。病初期においては、自己免疫反応を強力に抑えることを目的に大量のステロイドを点滴で投与、炎症反応が抑制できた段階で減量し、その後は症状の改善状況を観察します。
ステロイド使用が長期化すると、不眠、興奮、易感染性、胃潰瘍、糖尿病の誘発、骨粗しょう症、大腿骨頭壊死など副作用が生じることがあるため、なるべく早く投薬を中止できるよう努力します。しかし、経過の過程で原田病の病勢が再燃することもあるため、ステロイド容量の調整には慎重な姿勢が求められます。
原田病の治療に関して長期的に良好な予後を得るためには、早期の段階から診断し、早期治療介入を行うことが大切です。
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