院長インタビュー

埼玉県西部の医療の中心的な存在、埼玉医科大学病院

埼玉県西部の医療の中心的な存在、埼玉医科大学病院
篠塚 望 先生

埼玉医科大学病院 病院長

篠塚 望 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

埼玉県毛呂山町にある埼玉医科大学病院は、特定機能病院の認可を受け大学病院として研究や医療人材の育成を行う一方、埼玉県西部の二次救急(入院や手術が必要な重症患者への医療)や先進的な医療、地域に根ざした医療までを担う総合病院です。難病への対応など専門性を追求する各診療科のほか、個別の疾患にとらわれない総合的な診療にも取り組む同院の地域での役割や今後ついて、病院長である篠塚 望(しのづか のぞみ)先生に伺いました。

当院は1972年の埼玉医科大学創立とともに開設し、埼玉県西部の中核的な病院として急性期を主軸とした地域医療に貢献してきました。1994年には高度な医療技術が国に認められて特定機能病院となり、難病の治療や遺伝子診療などの先進的な医療にも取り組んでいます。また、近隣にある埼玉医科大学国際医療センター(日高市)と連携して地域の救急医療も引き受けています。医療圏としては、東は川越市から西は秩父市、北は吉見町や東松山市にまで及びますが、訪問看護や巡回バスでの健診などで広いエリアをカバーしています。

当院の立地は、秩父連峰を望む緑あふれる毛呂山に位置します。都会と違って広々とした景観が自慢ですが、病院数が少なく少子高齢化の影響で廃業するクリニックも目立ちます。だからこそ、この地域では病院間での紹介に止まらず、地域の医療機関がどのように連携していくかが問われています。当院、強みである高度医療や急性期医療にしっかり取り組む一方で、患者さんファーストの“断らない病院”を目指し、地域の先生方としっかり連携を取りながら医療に取り組んで参ります。

埼玉医科大学外観
病院外観(埼玉医科大学病院ご提供)

当院は41の診療科を揃える総合病院であるとともに、入院や手術を要する重症患者さんを365日24時間体制で受け入れる二次救急を提供する病院でもあります。より重篤で緊急性の高い三次救急の患者さんは日髙の国際医療センターで受け入れており、それぞれの特徴を活かして機能を分担しています。二次救急においては直接駆け込んで来られる患者さんも多く、当院での年間の手術件数のうち1/3は救急で、地域に根ざした急性期の病院として重要な責務を果たしています。

また2008年から地域のクリニックと連携して“地域連携小児夜間・休日診療”体制をスタートしました。これによって当院の救急センター内で、近隣の小児科医の先生方による一次救急医療を提供できるようになりました。お住まいの地区によっては近くに小児科のクリニックがない場合もあるので、このような取り組みを通じてより迅速な診療に役立てています。

当院は急性期をはじめとする専門医療を行っていますが、特に高齢の患者さんは複数の疾患があり、また認知症を合併することも多く、十分な時間をかけて総合的に診療する必要があります。そこで当院は2007年に総合診療内科を設置し、その中にプラチナ(高齢者総合診療)外来を設けることにより、症状に関わらず幅広く対応できる診療体制を整えました。さらに2022年には病院診療部を新設し、内科専門医と指導医(専門医を指導する医師)によって診療科を限定しない初期診察を行っています。これらの窓口は、どこの診療科に行けばいいか分からない患者さんにとって大きな安心感につながると考えています。

私が現役の医師だったころは、開腹手術から甲状腺の治療まで幅広く担当していました。現在は専門医制度もありますので、昔と比べてスペシャリストを目指す若手医師が増えています。しかし当院のように高齢者の方々が多い地区では、一つの分野だけでなく総合的に診療できることがますます重要となります。高齢化社会や症例の多様化を踏まえ、これからは医療従事者としてのあり方を若手医師に啓発していければと思います。

2009年に開設したアイセンター(眼科)では年間3,000名ほどの患者さんを診療し、全国的に見ても非常に多くの眼科治療を提供しています。病棟内に眼科専用の手術室が併設されている点が特徴的で、40床の病床を活用して年間2,000件に及ぶ入院手術を行っています。白内障をはじめ、網膜剥離(もうまくはくり)など緊急性が高い疾患に対しても、豊富な臨床経験と充実した診断治療機器で治療に臨んでいます。

また、消化器系の疾患を担当する消化器一般外科では鼠径(そけい)ヘルニアや大腸穿孔(腹膜炎、腸閉塞)など急性の消化器疾患に24時間体制で対応しています。埼玉県は全国でも鼠径ヘルニアの手術数が多い県ですが、当院もその例に漏れず、2022年は201件の手術を行いました。

近年、高齢を理由に手術をあきらめる方が少なくありません。当院はからだへの負担が少ない腹腔鏡手術を積極的に取り入れ、少しでも患者さんのQOL(生活の質)を高められるように一人ひとりに合った治療方法を提案しています。

当院は2015年に難病センターを開設し、170名以上の難病指定医(難病に関する医療について専門性のある医師)が中心となって難病に対応しています。2018年度には埼玉県の難病診療連携拠点病院として認定され、特定機能病院としての医療技術をフル活用しながら難病の治療からゲノムによる遺伝診療まで幅広く取り組んでいます。また新薬の開発に向けた治験のほか、アルツハイマーの遺伝子治療に取り組むなど、大学病院として新たな治療方法の確立にも積極的に取り組んでいます。

2021年に当院は「アフターコロナ外来」を設置し、新型コロナウイルス感染症の療養後に見られるさまざまな症状に対して診療を始めました。主に感染症科と精神科の医師が中心となり、コロナの後遺症に悩む患者さんの身体面や精神面をケアしています。既存の診療体制に縛られず、常に地域の方が困っていることを先回りして対応するように心がけています。

また予防医療の観点からさまざまな健診を行う中央検査部では、地域の方がより気軽に健診できるように巡回バスでの健診やワンコイン検査を行っています。診断データを通じた病気の早期発見はもちろん、大学病院としての臨床研究とも結びつけて新たな検査法の確立や基礎医学の向上に役立てています。

さらに当院の関連施設となる在宅療養支援診療所“HAPPINESS館クリニック”では、訪問看護によってご自宅で療養生活を送られている方々を支えています。看護においては、“1%の科学と、99%の思いやり”をモットーにご本人や家族の意思を尊重し、QOLの向上を目指して予防的支援から看取りまでフォローします。

当院は“For Patients(患者さんのために)”を合い言葉に医療体制を整え、患者さん第一の診療を実践しています。そのため救命医療においては“断らない病院”をモットーにし、また総合診療内科によって全人的な医療の提供に努めています。埼玉県では医師や病床の数が不足している状況が続いていて、今後は関連施設や地域の医療機関との連携がますます重要になります。当院は引き続き急性期医療をはじめとする役割を全うし、地域医療の最後の砦として皆さんに信頼して頂けるような医療を提供していきます。

実績のある医師をチェック

Icon unfold more