院長インタビュー

人間愛に基づいた医療によって教職員の健康と地域医療を守る――北陸中央病院

人間愛に基づいた医療によって教職員の健康と地域医療を守る――北陸中央病院
清水 淳三 先生

公立学校共済組合 北陸中央病院 病院長

清水 淳三 先生

目次
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富山県小矢部市にある北陸中央病院は、地域包括ケア病棟を備えて急性期から慢性期まで一貫した医療を展開しています。地域に根ざした医療を展開する一方で、公立学校共済組合が運営する病院として公立学校の教職員に向けた人間ドックや診療なども行っています。

そんな同院が担う役割や今後の展望について、病院長である清水 淳三(しみず じゅんぞう)先生にお話を伺いました。

MN
病院外観

当院は1964年にこの地に設立され、2024年に60周年を迎えました。当初は富山県、石川県、福井県、新潟県、長野県の公立学校の組合員やその家族を結核から守ることを目的に診療しておりましたが、結核患者さんの減少を受けて急性期医療を担うようになり、1994年には結核病床も閉鎖となりました。

小矢部市は他の地方都市と比べても高齢化・人口減少が急速に進んでおり、現在の人口は3万人を割り込むまでになっています(2024年8月時点)。このため当院では2014年に医療型療養病棟、2016年には地域包括ケア病棟を開設し、合計193床の病床(医療型療養病棟・53床/地域包括ケア病棟・53床/一般病棟・57床/人間ドック居室・30床)と16の診療科を有するケアミックス病院へと進化を遂げました。急性期を脱した患者さんの回復期、慢性期まで一貫した医療を提供することにより、地域医療に貢献してまいりたいと考えています。

内科、外科、歯科など多岐にわたる診療科の中でも当院の強みは呼吸器(肺など)の診療にあります。私は呼吸器外科を専門にしており、小矢部市・砺波市・南砺市の3つの市からなる砺波医療圏における、ただ1人の呼吸器外科専門医(日本呼吸器外科学会)でもあります。このため他の医療機関から患者さんをご紹介いただくことも多くあり、私が当院に赴任する以前は1年間にほんの数例だった呼吸器外科手術数は現在70~80例ほどにまで増加しています。

呼吸器の病気については治療だけでなく予防にも力を入れており、小矢部市の肺がんCT検診を実施していることも特徴です。肺がんは早期発見・早期治療によって完治が望める病気です。肺がんCT検診は、これまで見つけることが難しかった小さな病変も発見できますので、1人でも多くの方に検査を受けていただきたいと思います。

整形外科では外傷のほか、リウマチやスポーツ医療の診療に力を入れています。市内には小矢部ホッケー場などがあり、ホッケーが盛んに行われているため、患者さんの中には学生さんやホッケー選手もおられます。スポーツ医療においては治療に加えてリハビリテーションも重要になりますが、当院では整形外科とリハビリテーション科が密接に連携し、患者さんの競技復帰をサポートしています。

当院を利用する組合員は、北陸3県および新潟県、長野県の公立学校の教職員です。地元の富山県や石川県にお住まいの方は毎年人間ドックを受診してくださっていましたが、最近は北陸新幹線の開通を受けて、福井県や長野県から足を運んでくださる方も増えてきました。当院では人間ドックの結果をデータベース化して保存してあり、このデータを用いた研究が盛んに行われています。たとえば数年にわたる血糖値の変化に着目した研究では、糖尿病予備軍の患者さんが何年くらいで糖尿病を発症するのかを明らかにすることが可能になります。

内科医の中には人間ドックのデータベースを基に、多くの論文を執筆・発表している医師もおります。診療は地域を中心にLocal(ローカル)に、発信はGlobal(グローバル)に――これは私が日々、職員たちに伝えていることです。地域に根ざした診療を行いながら、研究や論文発表などアカデミックな分野で活躍する医師が外科や脳神経外科にいることも当院の特徴と言えるでしょう。

小矢部市との連携により2023年12月からスタートしたのが、生後4か月までの赤ちゃんとお母さんを対象にした“産後ケア”です(小矢部市民に限り5回まで)。少子高齢化が進行する社会において、赤ちゃんは未来への希望といえる存在です。一方で近年は核家族化が顕著になっており、出産後のお母さんを支える仕組みが求められています。産後ケアはまさに、赤ちゃんのことを大切に考え、お母さんたちに優しい事業と言えるでしょう。

トイレ、洗面所、シャワー、Wi-Fi完備の専用の個室で日中の数時間を過ごしていただく産後ケアは、各分野のスペシャリストがお母さんと赤ちゃんをサポートします。赤ちゃんの身体測定や沐浴を行うのはもちろん、お母さんには管理栄養士による栄養相談や助産師による育児相談などを受けていただけます。お昼ご飯もこちらでご用意いたしますので、ゆっくり休息を取り、リフレッシュしていただければ幸いです。

先方提供
院内で開催される病院長コンサート

私が病院長に就任した2012年以降、小矢部市民健康フォーラムと題した講演会を年に1度開催しています。この講演会は地域の方々に医学的知識を分かりやすくお伝えすることを目的にしており、がん生活習慣病など毎回テーマを変え、その領域の専門家にお話をしていただいています。また小矢部市のケーブルテレビでは毎月第3週(月~日)に放映される健康サポート番組に当院のスタッフが出演しています。こちらも「医療情報が分かりやすい」と、ご好評をいただいています。

このほか病院内の取り組みとして、入院患者さんに向けた“ミニコンサート”があります。療養病棟を有する当院には長期にわたり療養生活を送っている患者さんもおられるため、少しでも癒やしになれば……と考えて月に一度、私が病棟ロビーに立ち、歌をご披露しています。また、七夕とクリスマスの年に2回は外来患者さんにも聞いていただけるように玄関ロビーにて“病院長コンサート”を開催しており、かれこれ10年以上続けています。リクエストもお受けいたしますのでぜひ足をお運びください。

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私は金沢大学医学部を卒業して医師になり、呼吸器外科医として経験を積みました。病院長になった今、日々職員たちに伝えている「診療は地域を中心にローカルに、発信はグローバルに!」というフレーズは、かつて私が恩師にいただいた言葉でもあります。私は今もこの言葉を実践し、忙しい合間を縫って年に1~2編は英語で論文を執筆しています。医師になって45年ほどになる現在まで、書き上げた英文論文は60数編にのぼるでしょうか。

少々堅い話をしてしまいましたが、当院としてはあくまでも“親しみやすい病院”を目指しています。そのために地域のニーズを迅速に取り入れて対応し、これまで以上に地域医療に貢献してまいります。また、組合員の心身の健康を守るために相談事業や人間ドックにも注力します。教職員の健康維持に貢献していくとともに地域の市民病院的な役割を担うべく、スタッフ一同研鑽を重ねてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

*病床数や診療科、医師、提供する医療の内容等についての情報は全て2024年9月時点のものです。

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  • 公立学校共済組合 北陸中央病院 病院長

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