院長インタビュー

地域住民の皆さんが少しでも長く元気で暮らせるように-五條病院の取り組み

地域住民の皆さんが少しでも長く元気で暮らせるように-五條病院の取り組み
森安 博人 先生

南和広域医療企業団五條病院 院長

森安 博人 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年12月21日です。

奈良県五條市にある南和広域医療企業団 五條病院(以下、五條病院)は、1972年に奈良県立五條病院として設置された病院です。2018年12月現在は、主に回復期・療養期の医療を担う病院として地域住民の皆さんの健康を支えています。

この地域は、全国各地と同じく高齢化の進む地域です。医療ニーズも変化しつつある中で、五條病院はどのような取り組みを行っているのでしょうか。病院長である、森安博人先生にお話を伺いました。

 

病院外観(五條病院よりご提供)

当院は、南和広域医療企業団を母体とする3病院のうちの1つです。以前は県立五條病院として急性期医療を担っていましたが、南和地域の公立病院再編に伴い地域医療センターとして回復期や療養期を担う病院となりました。

少子高齢化が進んでいる当地域において、回復期・療養期のニーズは高まりつつあります。そのような中で当院は、ほかの2病院や地域の医療機関と連携しながら住民の皆さんの健康な生活を支えています。

 

総合受付(五條病院よりご提供)

当院はこの地域の回復期医療を担う病院として、他の医療機関や施設との連携に努めています。第一に急性期病院での治療を終えて、リハビリ・栄養療法に取り組まれる患者さん、第二に在宅療養をしていて一時的に体調を崩された患者さん、第三に介護疲れを防ぐためのレスパイト目的の患者さん入院の受け入れを積極的に行っているのが特徴です。このような役割は、地域包括ケアシステムを有効に機能させるためにも重要だと考えています。

 

リハビリテーションの様子(五條病院よりご提供)

2018年12月現在、診療科は内科と整形外科の2つの診療科のみですが、いずれも高齢化が進む地域では最重要の科目です。内科では肺炎肺気腫心不全慢性腎臓病糖尿病胆石症などが、整形外科では腰痛、関節痛や骨粗しょう症をベースにした骨折が、高齢化に伴い増えていきます。骨折をきっかけに寝たきりになってしまう方も多いので、骨粗しょう症対策や転倒予防、筋力低下に対するアプローチは非常に重要です。内科も整形外科も今後は治療だけでなく予防にも力を入れて、高齢者特有の疾患の予防に取り組んでいきたいと考えています。

 

食事介助の様子(五條病院よりご提供)

口から食べること関するこだわりは、当院の特徴です。

肺炎脳梗塞などの治療をしたあと、なかなか食事が摂れないという方がたくさんいらっしゃいます。そうした方を対象に、リハビリと並行して嚥下訓練や栄養療法を積極的に行っています。
肺炎や脳梗塞などの急性期医療は、特に問題なければ2週間ほどで終わります。しかし、大事なのはその後の身体機能の回復です。病気や入院生活などによって嚥下機能が低下してしまった状態のままで自宅に戻ると、脱水や低栄養状態を起こして再入院したり、足腰に力が入らなくなり寝たきりになったりする原因にもなります。

当院では、言語聴覚士、管理栄養士、医師、看護師がチームを組んで、嚥下回診を週に1回行っています。この回診では、対象となる患者さんの嚥下機能の状態を診て、食事形態を選択していきます。通常時の診療ではチェックする機会の少ない栄養状態や口腔内の状態も診るほか、患者さんの状態に適した食事を提案して食欲を促していきます。口で食べる喜びを再認識していただくとともに栄養状態をよくしてから退院してもらえるようにしています。

栄養状態の改善は、リハビリテーションを進めるためにも非常に重要です。

嚥下機能や栄養状態、そして全身の機能を少しでも回復させて患者さんの元々いた日常に近い場所に帰っていただく。それが当院の主要な役割のひとつです。

 

カンファレンスの様子(五條病院よりご提供)

健康に対する意識の高い方は人間ドックを受診されますし、勤務者の方は職場の健康診断もあります。しかし、この地域は農業など自営業をされている方が多く、定期的な健康診断を受けない方もおられます。

こうした方を少しでもフォローできるよう、今後は生活習慣病を中心とした予防活動に力を入れていきたいと考えています。その一環として当院では禁煙外来を開設して禁煙指導に努めています。

一般的に、地方における喫煙率は高く健康を損なう一因となっています。また、都会と比べて車による移動が多いために運動量が少なくなりがちで、糖尿病脂質異常症といった生活習慣病を患う方が多くみられます。当院では、病院を挙げて特定検診の受診を勧めるとともに、対象者の支援にも取り組んでいます。今後も、地域に根差した、めんどうみのいい病院として、地域住民の皆さんが健康に対する意識を高められるような活動を積極的に行っていきたいです。

当院で働くスタッフは看護師を中心に地元出身の方が多く、地元愛にあふれた方が大勢います。地域の皆さんに愛される医療を実現するにあたって非常に心強いことです。診療部門では、常勤、非常勤の意欲のある若手医師とベテラン医師とのバランスがうまく取れていて、活力と経験知が融合したよい雰囲気になっています。

地元といえば、この地域では、ほうじ茶でお米を炊く「茶粥」が郷土食として昔から食されてきました。当院では、食欲の低下した患者さんにこの茶粥を提供しています。通常の白粥が食べられなくても、昔から親しんだ茶粥なら食べられるという患者さんも少なくありません。このように、患者さんの好みに合わせて食事内容も調節しています。

 

 

これからの日本の医療は、急性期医療だけでは完結しえないものとなっていきます。若い医師の方々には、回復期、療養期医療もしっかり見据えた、視野の広い医療を意識するよう心がけていただきたいです。

健康や病気のことで何かあれば、当院になんでも相談してほしいと思います。当院ができることは当院でしっかりやり、少しでも皆さんが健康的な生活を長く続けるお手伝いをしたいと考えています。

これからも、地域にとってめんどうみのいい病院であり続けられるよう努めてまいります。

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