院長インタビュー

地域住民の“暮らしの基盤”づくりのお手伝いを――知多厚生病院の取り組み

地域住民の“暮らしの基盤”づくりのお手伝いを――知多厚生病院の取り組み
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]院長インタビュー

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愛知県知多郡美浜町にある知多厚生病院は、1964年にJA愛知厚生連の病院として開設しました。その後、診療体制の拡充を図り、知多半島南部において急性期医療から回復期医療、在宅診療までシームレスに地域医療を支えています。同院の役割や今後の展望について、病院長の高橋 佳嗣(たかはし よしつぐ)先生にお話を伺いました。

知多厚生病院ご提供

当院は1964年にJA愛知厚生連の9番目の病院として開設されました。現在は、知多半島医療圏の第2種感染症指定医療機関、地域災害拠点病院、へき地医療拠点病院、などに指定されています。また、コロナ禍では新型コロナウイルス感染症患者さんの入院を積極的に受け入れたり、中部国際空港セントレアで感染対策を実施したりするなど、地域医療において重要な責務を担ってきました。

救急においては、医療圏における2次救急(入院や手術を要する重症患者への救急医療)を担っています。救急車による搬送数は年間で約1,800台(2023年度実績)を受け入れています。
当院にいらっしゃる患者さんの多くが、過去にご来院経験のある方が大半です。地域の特性として高齢化が進み、若年人口は減少しておりますが、長く通院されている方も多く、地域に根ざした医療を提供できていることを感じます。

外科では胃や大腸、すい臓などの消化器のがん治療を中心に行い、特に早期の胃がん大腸がんについては、患者さんへの体の負担が少ない腹腔鏡下手術を導入しています。外科において特に力を入れているのが呼吸器外科です。愛知医大で教授職をされていた矢野先生が呼吸器外科部長に着任され、診療体制が強化されました。矢野先生は診療のレスポンスがとても早い方です。その結果、がんを早期に発見するケースが増えたことで、体への負担が少ない胸腔鏡下手術での対応も増えることになりました。結果として、当院で治療を完結できる患者さんが多くなり、患者さんの身体的負担はもちろんのこと、精神的負担、経済的負担も軽減できていると感じます。

小児科では、午前中は咳や発熱、下痢といった急性疾患の一般外来を行い、午後は予約制で、てんかんや気管支喘息アトピー性皮膚炎などを扱う慢性疾患外来、乳児健診、予防接種外来を行っています。診療にあたっているのは、日本小児科学会認定専門医と日本アレルギー学会認定専門医を持つ医師です。近隣にはお子さんを診ることのできる開業医の先生が少なくなっており、入院治療ができる当院は、地域の小児科診療を支える貴重な存在と自負しています。

内科では地域の皆さんにどんなときでも安心して受診していただけるよう、幅広い疾患に対応しています。その中で診療体制が充実しているのが糖尿病外来です。日本糖尿病学会認定専門医の資格を持つ医師が3名在籍しており、患者さんの治療だけでなく、普段の食事などのアドバイスなども行っています。当院では、糖尿病の治療と共に、療養指導や合併症の予防を行う糖尿病教育入院も1週間コースと2週間コースを設けて実施しています。医師、看護師、管理栄養士、薬剤師などといった多職種がチームとなって患者さんの入院生活をサポートし、状態の改善を目指します。糖尿病の治療は日進月歩で進んでおり、新しいお薬も登場しています。専門医が在籍している外来は当院の大きな強みであり、実際に多くの患者さんに来院いただいています。

当院がある知多半島南部でも、国内の傾向と同様に高齢者の人口が今後も増加していくと予想されています。アルツハイマー病による軽度認知障害、軽度の認知症に対しては、2023年に日本で承認されたばかりの治療薬であるレカネマブが投与できる体制を整えました。導入して間もないこともあり、今年(2024年)の9月時点の症例数は16件ですが、今後は症例を積み重ねていきたいと考えています。お困りの方はぜひご相談ください。

当院は愛知県から知多半島の“へき地医療拠点病院”の指定を受けています。へき地医療拠点病院とは、山間部や離島に存在する“へき地診療所”へ医師を派遣したり、医師のいない地区などで巡回診療をしたりする病院のことです。当院の診療圏には篠島・日間賀島といった離島があることから、篠島に附属診療所である“篠島診療所”を開設して、外来と在宅診療を行っています。一般診療以外にも、小児・高齢者を含めた各種予防接種の実施や、年2回の保育園の検診も担当しており、島民の皆さんの健康管理は重要な使命だと感じています。

また、当院は愛知県から“地域災害拠点病院”にも指定されています。災害時には地域の医療機関と連携して24時間体制で重症患者に適切な医療を提供することが求められるため、当院では定期的に自治体や消防組合と合同で防災訓練を実施しています。知多半島は東南海地震で大きな被害が想定されるエリアにあるので、もしもの場合には当院が中心となって災害医療を提供しなければなりません。また、災害拠点病院の責務として、広域災害が発災した際には被災地の拠点病院に駆けつけ医療を行う災害派遣医療チーム(DMAT)を編成し、緊急派遣する体制も整えています。

当院では、地域の皆さんに健康に関する情報を積極的に発信するため、さまざまなイベントを開催しています。その1つが栄養管理室が実施している調理実習で、地域の皆さんに参加いただく形で、健康増進を目的に定期的に開催しています。過去には“高血圧予防”“風邪に負けない体をつくる食事”“飲み込みが悪くなった人の食事”をテーマに開催しました。また、糖尿病教室も定期的に開催しており、食事や薬、フットケアなどをテーマに講演を実施しています。そのほかにも、地域の産業祭が開催された際には、ブースを出して健康相談もしています。

地域医療においては、“何かあったら、(知多)厚生病院”と思ってもらえるような病院が身近にあることが一番大切で、当院がその“頼られる病院”にならなければなりません。そのためにはただ病気を診るだけでなく、患者さん一人ひとりの体を診て、健康を通して生活の基盤を作っていただくお手伝いをすることが大切だと考えています。たとえば、高齢の方が倒れた場合、ただ診療をしてお帰りいただくのではなく、場合によってはしばらく入院をして、ご家族と相談しながら、生活できる状態を整えて自宅に戻るという配慮が必要になるのではないでしょうか。それが“私たちは保健・医療・福祉の活動を通じて、地域住民が安心して暮らせる地域社会作りに貢献します”という当院の理念につながると考えています。

今後、少子高齢化が加速する中で、当院がこの地域で果たすべき役割はますます大きくなると思っています。地域の皆さんの健康と快適な生活に少しでも貢献できるよう、当院の理念を胸に尽力してまいりますので、ご支援を心よりお願い申し上げます。

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