独立行政法人 労働者健康安全機構 岡山ろうさい病院(以下、岡山ろうさい病院)は、岡山県岡山市南区で唯一の地域医療支援病院として、救急医療や急性期医療の中心的な役割を担っています。
2024年に手術支援ロボット“ダヴィンチ”を導入し、医療体制のさらなる拡充を目指す同院の取り組みについて、院長である伊達 勲先生にお話を伺いました。
当院は、労働災害に見舞われた方々を支援するため1955年に開院し、およそ70年間にわたり整形外科を主軸とした地域医療に専念してきました。岡山市内では大規模な総合病院が北区に集中しており、当院は南区で唯一の地域医療支援病院として地域医療の中心的な役割を担っています。
当院では、整形外科のほかにも脳神経外科、循環器内科、消化器内科などに注力しており、脳卒中や心不全などの救急医療や消化器疾患の内視鏡治療などを積極的に行っています。中でも脳神経外科は、特発性正常圧水頭症のほか痙縮や神経膠腫(グリオーマ)など、特殊な疾患に対応できることが強みです。さらに、神経膠腫の手術を受けられた患者さんを“グリオーマサポートセンター”で受け入れ、放射線療法や化学療法などの集学的治療でサポートしています。
当院の救急搬送の受け入れ台数は、2023年に3,000台を突破しました。2024年には救急科を開設し、認定看護師を含む3名の看護師を配置するなど、救急医療の体制をさらに強化していく方針です。
当院の整形外科は外傷、関節、脊椎や脊髄に関する疾患に幅広く対応し、計358床の病床のうち100床を割り当てるほど、最も力を入れている診療科の1つです。特に、脊椎手術においては県内でも豊富な治療実績を誇り、手術中にCT撮影を行える医療機器“O-arm type2”を西日本の医療機関で初めて導入するなど、常に医療技術の向上に努めています。
また、2024年には手術支援ロボット“ダヴィンチ”を導入し、外科や泌尿器科を中心に低侵襲(体への負担が少ない)ながん治療を提供できるようになりました。今後も地域内で完結できる医療体制を目指して、ロボット支援手術を積極的に行っていきたいと考えています。
当院の“治療就労両立支援部”は、地域の企業や産業医と協力し合って、患者さんの治療と就労の両立をサポートしています。がん、糖尿病、脳卒中からメンタルヘルスの不調を抱える患者さんまで、職場復帰が難しい方々を支えるのも当院の務めです。
また、労働災害の1つとして知られるアスベストに関する疾患については、“アスベスト疾患ブロックセンター”で診断や治療を行っています。全国にある労災病院の大半はアスベスト関連の部署を設けていますが、当院のように別棟に“アスベスト疾患研究・研修センター”を設置し、アスベスト対策に力を入れている病院は少ないかと思います。当院は、ルーツである労災病院としての役割を全うし、これからも地域で働く方々をしっかり支えていきます。
当院は、病院の取り組みをより多くの方々に知っていただけるように、積極的に広報活動を推進しています。取り組みの一例としては、“緑の風”や "ろうさい通信”などの広報誌の発行が挙げられます。ホームページでも病院の取り組みを紹介していますが、この地域に比較的ご高齢の方が多いことを考慮し、地元紙である山陽新聞でも積極的に広報活動を行っています。
そのほか、特定の疾患を医師が分かりやすく説明する市民公開講座のほか、救急蘇生法や模擬手術などを気軽に体験できる“救急・防災フェア”を開催し、地域の皆さんが健康に関心をもっていただけるように努めています。
*広報誌『緑の風』のバックナンバーはこちら
当院では、岡山市南区と玉野市からの患者さんが全体の約7割を占めます。そのため、地域の方々が必要とする医療を幅広くカバーしていくことが最優先となります。
その一方で、得意分野である整形外科や脳神経外科などの医療技術を磨きつつ、救急医療の担い手として救急車の受け入れと入院治療を拡充していく方針です。これからも当院は地域に根差した医療にまい進し、職員一丸となって誰もが元気に働けるような街づくりに貢献したいと思います。