関節痛:医師が考える原因と対処法|症状辞典

関節痛

受診の目安

夜間・休日を問わず受診

急ぎの受診、状況によっては救急車が必要です。
どうしても受診できない場合でも、翌朝には受診しましょう。

  • 安静にしていても耐えられないほどの関節の痛みがある
  • 発熱や全身倦怠感を伴っている
  • 新生児や乳児が特定の手足を動かさない

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 関節が腫れて発赤し、熱をもっている
  • 市販薬を使用しても関節の痛みがとれない
  • 全身の痛みや頭痛、しびれなど関節以外の症状がある

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 日常生活に支障はないが、関節の痛みが慢性的に続いている

NTT東日本関東病院 整形外科 部長・脊椎脊髄病センター長

山田 高嗣 先生【監修】

関節痛とは、何らかの原因で関節が炎症を起こしたり、関節内の構造物に損傷が起こったり、クッションの機能を果たす軟骨が消失して痛みが生じることで、膝や背骨、手指など全身のあらゆる関節に生じます。しかし、中には思わぬ病気が原因となっている場合もあります。

  • 関節痛のほか発熱や頭痛などの症状もあり、体を動かすのが億劫
  • 安静にしても関節の痛みが引かない
  • 関節の痛みが一度だけでなく、何度も繰り返し現れる

こういった場合に原因として考えられるものには、どのようなものがあるのでしょうか。

関節痛は、以下のような病気によって引き起こされることがあります。

変形性関節症

変形性関節症は、関節にある軟骨がすり減ることで関節に痛みが出る病気で、主に膝や腰、手指の第一関節に生じやすいといわれています。軟骨は骨が受ける衝撃を和らげたり骨同士の摩擦を防いだりするクッションのような役割がありますが、加齢や体重増加、筋力低下、外傷、スポーツ、肉体労働などさまざまな要因ですり減ります。

軟骨が減少することで、関節を動かす際に痛みが生じたり動かしにくくなったりします。症状が進行すると骨に負担がかかるため、骨が変形したり、痛みが激しくなり安静時にも痛みが生じたりすることがあります。

変形性関節症
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関節リウマチ

関節リウマチとは、免疫機能の異常によって関節に炎症が生じる病気です。

関節の内側を覆う滑膜という組織で炎症が生じ、滑膜が異常に増殖することで関節が腫れて痛みをきたします。炎症が進行すると関節が破壊され、関節の変形などを引き起こします。

関節リウマチの原因はまだ解明されていませんが、遺伝的な要因や細菌・ウイルス感染などが関係していると考えられています。主な症状は、手足の指や手首の関節の痛みや腫れ、朝のこわばりなどです。そのほか全身の倦怠感や微熱、食欲低下など全身に症状が現れることもあります。日本の患者数は推定約83万人で、30~40歳代の女性に発症しやすいといわれています。

関節リウマチ
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痛風

痛風とは、関節に尿酸の結晶が沈着して激痛を伴う病気です。尿酸は、体内で細胞の核に存在するプリン体が代謝される際に生じる物質で、血液中に過剰にたまると関節に尿酸の結晶が沈着します。白血球が尿酸の結晶を破壊すると炎症が起きるため、痛みや腫れなどが生じます。

痛風の症状は足の親指の付け根や足首、膝といった関節のほか、手の関節にも発生する可能性があります。痛風は男性に多く発症するとされており、暴飲暴食や肥満などが原因の1つと考えられています。

痛風
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化膿性関節炎

化膿性関節炎とは、黄色ブドウ球菌やレンサ球菌、肺炎球菌などが関節に侵入し、化する病気です。多くは膝や足関節、股関節に発症し、安静時でも強い痛みを感じるほか、腫れや熱感、発赤などが生じたり、発熱や倦怠感などの全身症状が現れたりすることがあります。乳幼児や高齢者、免疫力が低下している人に発症しやすいといわれています。

感染経路としては、別の感染巣から細菌が血流にのって関節に到達するケースや、関節付近にある皮膚や筋肉などに生じた感染が関節に波及するケース、外傷などが原因で細菌が関節に侵入するケースなどがあります。発症すると数日で関節が破壊されたり、骨髄(こつずい)にも感染が波及したりする場合があるため、早期に適切な治療を受ける必要があります。新生児や乳児の場合、患肢を動かすことを嫌がり、まるで麻痺したようにみえる偽性麻痺が生じるのが特徴的です。

化膿性関節炎
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偽痛風

偽痛風とは、ピロリン酸カムという物質の結晶が関節内に沈着することで、痛風に似た急性関節炎を起こす病気です。

高齢者に多発し、男女差はありません。膝関節に発症することが多く約半数を占め、続いて足関節・手関節などの大関節に多くみられます。発熱などの全身症状を伴うこともあり、化膿性関節炎と間違われやすい病気です。

ピロリン酸カム濃度をコントロールできる原因療法はなく、関節炎に対する対症療法を行います。

偽痛風
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市販薬を使用しても関節がひどく痛む場合や、安静にしていても関節痛がある場合などは注意が必要です。関節痛のほかにも何らかの全身の症状が現れている場合や、症状がいつまでもよくならない場合には、軽視せずに早めに受診することがすすめられます。

受診する場合には、まずは整形外科がよいでしょう。かかりつけの病院がある人はそちらで相談してみるのも1つの方法です。

受診する際には、いつから関節痛の症状があるのか、どのようなときに痛みが強くなるのか、症状が徐々に悪化しているか、ほかにどのような症状があるのか、などについて詳しく医師に伝えましょう。

以下のような日常の生活習慣によって関節痛が引き起こされることがあります。

過度な運動は軟骨がすり減る要因の1つで、特に急に動いたり止まったりするスポーツは膝関節に大きな負担をかけます。サッカー、バスケットボール、テニス、ジョギングなどは膝関節に大きな負担をかけるため、関節痛のある人は注意が必要です。

運動をする際に意識したいこと

スポーツを行う際は入念にストレッチを行い、関節に過度な負担がかからないよう配慮することが重要です。特に普段スポーツの習慣がない人は膝関節を支える筋肉が衰えている場合があるため、急にスポーツを長時間行ったり負荷の大きい動きをしたりすると膝関節に負荷がかかり、痛みが生じる可能性があります。

肥満の人は特に膝関節へ大きな負担がかかり、軟骨がすり減りやすくなります。歩いているとき、膝には体重の約2~3倍もの負荷が、階段の上り下りでは約4倍の負荷がかかっていると考えられています。

肥満を解消するために

体重を減らすためには、食事の見直しや適度な運動が必要です。食事は主食と主菜、副菜の組み合わせを意識し、たんぱく質や糖質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素をバランスよく取りましょう。

運動は水中歩行や水泳、太極拳・ヨガなど、膝関節に負担をかけず、無理なく続けられるものを選ぶとよいでしょう。

生活習慣を改善してみても症状がよくならないときは、思いもよらない病気が原因のこともあります。軽く考えず、できるだけ早めに医療機関を受診しましょう。

原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。