食欲不振:医師が考える原因と対処法|症状辞典

食欲不振

なんとなく食事が食べたくない、以前のように食べられない、このような症状のことを食欲不振といいます。

  • このごろ食欲がない…好きなものもあまり食べたくない
  • 「何が食べたい?」と、聞かれても何も思い浮かばない
  • いつもお腹のあたりに違和感がある

このような症状があるとき、原因として考えられることはどのようなものがあるでしょうか。

日常生活上の原因で食欲不振が起こるケースもあります。

ストレスは自律神経の交感神経を過剰に刺激します。そうなると消化吸収を促進している副交感神経の働きが抑制され、食欲が起こりにくくなることがあります。

ストレスが強いときは

ストレスの原因を取り除いたり離れたりすることも大切ですが、すぐには難しい場合には、趣味やスポーツなどに没頭できる時間を作るのも良いでしょう。短いひとときでもリラックスできる環境を整えることで気分転換をはかりましょう。

高温多湿が続くといわゆる夏バテを起こすことがあります。夏バテは病気ではありませんが、消化器機能が低下し食欲不振に陥ることもあります。

夏バテ気味のときは

夏バテ防止のためには、日頃から疲れを溜めず体調を整えておくことがポイントになります。夏場はついシャワーだけですませてしまいがちですが、ぬるめのお湯にゆっくりつかるのもおすすめです。就寝時はクーラーのかけすぎも体力を奪う一因です。

生活習慣の乱れも自律神経の不調から食欲不振を招きがちです。睡眠不足、運動不足、暴飲暴食などが続いているときには、生活習慣を見直すいいタイミングかもしれません。

生活習慣が乱れているときは

1日3食、できるだけ決まった時間に食事をとるようにしましょう。早寝早起きの習慣をつけ、生活リズムを整えることができればなお良いでしょう。

また、体を動かすことでエネルギーが消費され、気分転換できると自然に食欲が湧くこともあります。ウォーキングなどの手軽にできる運動を、できるだけ毎日の生活のなかに取り入れてみてはいかがでしょうか。

つわりとは、妊娠によるホルモン変化が原因で吐き気を感じたり、実際に吐いてしまうことです。妊娠初期に現れますが、多くの場合、食欲不振を伴います。

妊娠かなと思ったら

食欲不振が見られなおかつ妊娠の可能性がある場合、まずは産婦人科を受診しましょう。

もし妊娠していた場合、使用できる薬には限りがありますので、食欲不振があるからといって安易に市販の胃薬などを飲んだりせず、まずは医師の確認を受けることが大切です。

つわりであった場合には、妊娠5~6週頃から症状が出て、12~16週頃に落ち着くことがほとんどです。

加齢によって運動する機会が減るとエネルギーの消費量も減り、食欲不振になりがちです。また、家族や友人との死別、環境の変化などによる心因性の食欲低下も見られます。

ほか、高齢者の食欲不振は味覚・嗅覚の低下や、歯の衰えなども関係しているのではないかといわれています。

食事を取りやすくする工夫

食べられないからといって回数を減らすより、食事の機会は毎食設けるようにし、その上で食事内容を工夫してみるとよいでしょう。

歯や飲み込みの状態に合わせ、刻んだり、食べやすい食品を選ぶことは大切です。会話をしながらの楽しい食事も食欲を増進させます。一人暮らしならばデイサービスなどを利用してみてはいかがでしょうか。

以上のような対処法を試してみても改善されない場合には、医師への相談が必要な場合もあります。一度受診を検討してみましょう。

次のような消化器の病気が食欲不振を引き起こすことがあります。

胃炎/胃・十二指腸潰瘍(じゅうにしちょうかいよう)

胃の炎症である胃炎や、胃や十二指腸の壁が傷つく胃・十二指腸潰瘍も食欲不振の一因です。みぞおちの痛みや不快感、胸やけ、吐き気、胃もたれなどがみられることがあります。

胃潰瘍
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十二指腸潰瘍
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逆流性食道炎

胃酸の逆流により食道に炎症が起きる病気です。食欲不振の他、げっぷ、胃もたれなどの症状がよくみられます。逆流した胃酸を気管に吸い込むことで咳が出ることもあります。

逆流性食道炎
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機能性ディスペプシア

胃の運動機能障害による食欲不振、胃もたれなどを起こす病気です。

食事と関係して食後の胃もたれ、あまり食べられないなどの症状が出るタイプと、食事と関係なくみぞおちあたりに痛みが表れるタイプに分かれるとされています。

機能性ディスペプシア
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肝炎

ウイルスやアルコール、なんらかの病気などの影響で肝臓が炎症を起こしている状態です。

炎症の程度により、肝臓の機能に障害が出ている場合には、食欲不振の他に、皮膚や白目が黄色くなったり、だるさ、吐き気などの症状が現れることもあります。

甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)

甲状腺ホルモンの分泌が低下する病気です。男女比は1:10程度と女性に多く見られます。

初期症状はほとんどありませんが、次第に元気がでない、声のかすれ、皮膚の乾燥、足のむくみなどが出現します。抑うつ症状が出たり、疲れやすくなるのも特徴です。

甲状腺機能低下症
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神経性無食欲症(しんけいせいむしょくよくしょう)

いわゆる拒食症のことです。太ることを過剰に恐れて過度の食事制限を行い、無理に体重を落とそうとする摂食障害の一種になります。

自分では異常があると気づきにくい病気といわれているため、まわりが異変を感じたら受診に繋げることができるとよいでしょう。

摂食障害
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うつ病

気分の落ち込み、喜びや興味の減退が2週間以上続く病気です。日本では100万人以上のうつ病患者がいるともいわれています。

気分の落ち込みや憂うつさ、集中力欠如、イライラといった心理的な症状の他、疲れやすさ、頭痛、肩こりなどの身体症状が現れることもあります。

うつ病
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がん全般

がんは体のどの部位にもでもできる可能性があり、多岐にわたる症状を示します。特に胃など消化器系のがんの症状として、食欲不振、吐き気などがみられることもあります。

食欲不振が長引き、他の気になる症状もあるようであれば受診のタイミングといえます。内科もしくは消化器内科などへの受診がよいでしょう。

医師にはいつから食欲不振があるのか、食事量はどれぐらいなのか、体重の変化などを伝えるようにしましょう。食欲不振以外の症状についても、いつから、どのような症状があるのか、できるだけ詳しく伝えると診断の手がかりになることもあります。

受診の目安

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 過去半年〜1年で、ダイエットをしているわけではないのに5kg以上痩せた
  • 胸やけ、胃もたれ、胃痛、微熱、咳などがある

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 短時間でよくなり、その後繰り返さない
原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。