元 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 社会精神保健研究部 部長
伊藤 弘人 さん
かんの内科 院長
菅野 一男 先生
医療法人社団 明芳会 イムス三芳総合病院 内分泌(甲状腺)・代謝(糖尿病)センター センター長
貴田岡 正史 先生
一般的なイメージでは、「糖尿病」と「うつ病」はなかなか結びつかない病気かもしれません。医療現場でも最近知られるようになったことですが、糖尿病の患者さんはうつ病になりやすく、逆にうつ病の患者さんも糖尿病になりやすいという傾向があります。
たとえば糖尿病患者さんが100名いると、その中で10名程度、約1割の患者さんがうつ病を併発しています。それは、糖尿病を持たない一般の方の約2倍ものうつ病発症率です。
なぜこのような関係になっているかはまだ研究の段階ですが、生理学的な要因と生活習慣が複合しているのではないかと考えられています。たとえば糖尿病患者さんは食事制限など生活上の制限が必要で、長引く治療がストレスになることが、うつ病の発症のきっかけの一つではないかと言われています。
またうつ病の患者さんは、やる気がおこらずに運動不足になる、自己管理が難しくなるなどの結果として、生活習慣が悪化して糖尿病になるのではないかとも考えられています。それ以外にも様々な生理学的な要因が重なって糖尿病が引き起こされるのではないかと推測されていますが、まだ研究段階にあります。
糖尿病患者さんがうつ病にかかることにより、血糖のコントロールが悪くなり、糖尿病の合併症を起こしやすくなってしまいます。
うつ病になると活動量が低下しますし、引きこもってアルコールを飲んだり、薬を飲まなくなってしまったりと自己管理が低下するリスクが高まります。結果として、うつ病の患者さんは血糖値のコントロールが悪くなってしまい、心血管障害や腎障害などの糖尿病合併症を起こしやすくなってしまいます。近年、糖尿病患者さんでうつ病を合併すると死亡率が高まるとの研究が複数報告されるようになってきました。
糖尿病が悪化した結果、さらにうつ病が悪化する。ほうっておくと悪循環に入ってしまうので、それを断ち切ることが重要です。
かなりのケースで糖尿病患者さんのうつ病は見逃されている可能性が高いです。うつ病になってしまった患者さんは、治療を中断して通院しなくなるケースも多くあるので、医者の側が気付いていないこともしばしばあります。
うつ病の症状としては下記のような症状があげられます。このような症状が出てきたら、主治医の先生に相談してもらうことが重要です。欧米と比較すると日本では精神的な病気に対して抵抗感を持ってしまいがちです。しかし欧米ではうつ症状は「こころのカゼ」と呼ばれるほど一般的なものですし、早期の段階で治療をしておくことが、予後の改善にもつながります。少しでもおかしいなと思うことが2週間以上続くようでしたら主治医の先生に相談してみてください。
体重が減った
食欲がない
眠りすぎる
動きや話し方が遅くなった
性欲が減った
悲しい気持ちが消えない
以前は楽しめていた活動に興味を持てない、楽しめない
集中したり、物事を決めることが難しい
自分を大切に思えない
失敗したわけではないのに罪悪感がある
死にたいと思う
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。