インタビュー

治療費、治療後の生活、社会復帰について―がんと言われたあなたへ part4

治療費、治療後の生活、社会復帰について―がんと言われたあなたへ part4
渡邊 清高 先生

帝京大学医学部内科学講座 腫瘍内科 病院教授

渡邊 清高 先生

この記事の最終更新は2015年05月22日です。

がんと診断された方へ。がん治療のスペシャリストである腫瘍内科医の渡邊清高先生からのメッセージを6回に分けてお届けします。
治療費、治療後の生活、社会復帰などは、がん治療を行っていく上でとても気になることですが、なんとなく医師には相談しにくいかもしれません。part4では、これらのことについてまとめました。

診断技術と治療の進歩により、近年、がん治療の成績もよくなってきています。例えば、乳房、胃、大腸のがんなどは、治療を受けた患者さんのうち5年以上存命されている患者さんの割合が7割を超えるようになってきています。一方で、治療に伴う副作用や合併症をできる限り和らげる方法も進歩してきました。
がん治療においては、治療後の日常生活、仕事などへの影響も非常に大きな問題となります。

しかし、治療が一段落するまではそのようなことを考えられなかったり、また、治療中は今後のことを話題にしづらいのではないかと思ったりして、治療後の日常生活、就労についての不安や心配ごとなどについては、なかなか医療従事者に相談できない方が多いようです。

診断や治療に関する疑問だけでなく、お金はどのくらい必要なのか、これからの生活はどう変わるのかといった経済的・社会的なことでの不安や確認しておきたいことがないか、できる限り早い時期に話題にするようにしています。

これは、治療の準備にあたって、ご本人の年齢・家族構成・予定している治療によって、いろんな制度・助成(高額療養費制度、がん保険、民間の医療保険など)を受けることができますが、これらの中には早めに申請しておいた方がいいものもあるからです。また、介護保険の介護認定に向けた手続きをしておくことは、治療後の生活の準備を進める上でもとても大切です。

また、医療や療養介護について、それぞれの都道府県で独自の制度を設けていることがあります。身近な医療従事者、相談窓口、福祉相談所などに是非気軽に相談して下さい。

また、治療が一段落したときのお話も早い段階からするようにしています。病気の状態によって、治療期間があらかじめ決まっている場合や、治療の効果や副作用の有無を確認しながら治療を継続する場合など、治療のスケジュールが大まかに定まっていますので、仕事や家庭の行事に合わせて調整していきます。これまでの生活リズムを維持したり、社会とのつながりを保ったりすることは、ご本人にとって治療の動機付けにもなると考えています。

こうしたときにも、患者さんが可能な範囲で主体的に話に加わっていくことが大切です。これからどのような生活を送りたいか、どんなことを大切にしたいかという希望によって、治療の方法が変わったり、使用する薬剤の種類が変わったりすることもあります。治療の目的、期待される治療効果、予測される副作用や合併症について、質問したり情報を集めたりした上で、医療従事者に自分の希望を伝えて頂き、一緒に話し合いながら決めていくとよいでしょう。

もちろん、医師を信頼して、「お任せします」とお伝えいただくこともできます。ただ、治療の経過や今後の見込みについて、ご自身の理解できる範囲で知っておくこと、そしてご自身の声で希望をお伝えいただくことは、ご本人やご家族にとって、大切なことです。ぜひ、「お任せ医療」ではなく、「話し合う医療」に参加していただきたいと思います。

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