先天性心疾患(生まれつきの心臓病)があると、日常生活に大きな支障が出てくると思われる方もいるかもしれません。しかし、心疾患の患者さんは必ずしも一日中安静にしていなければいけないということはなく、心臓に大きな負担がかからない程度であれば運動や旅行も可能です。小児の心臓外科手術の発展や今後の成人先天性心疾患の診療体制の確立により、ますますこの分野は進歩し、患者さんの日常生活の幅が広がっていくと期待されます。成人先天性心疾患の診療体制の確立に尽力されている聖路加国際病院 心血管センター 特別顧問の丹羽公一郎先生に、成人先天性心疾患と日常生活についてお話しいただきました。
先天性心疾患の患者さんが飛行機に乗ることは危険ではないと考えています。しかし飛行機内は湿度が非常に低いので、脱水にならないように注意が必要です。脱水になると血栓(血液のかたまり)ができやすいことは知られていますが、特に心疾患の方はできやすいといえます。水分補給・お酒を飲み過ぎない・身体(足)を適度に動かすとよいでしょう。また、飛行場が大きい場合は、長距離を歩かなければならないという問題が出てきます。重症の方は長い距離の歩行を避けるために車椅子を使用するなど、心臓や身体へなるべく負担がかからないようにすることをお勧めします。
また、渡航先での緊急事態に備えて、かかりつけの医師に紹介状や旅行用診断書を書いてもらうことをお勧めします。その場合、旅行の内容に関しては身体の状態や病状などをみて、医師と相談して決めるのがよいでしょう。
先天性心疾患の患者さんの運転免許の取得は、通院などで車の運転が必要となる場合がありますし、心不全があっても運転操作は、体力を必要とせず簡単なので推奨しています。ただし、ペースメーカーなどの心臓デバイスを植え込んでいる場合は、運転の制限がありますので注意が必要です。担当医と相談してください。
歩くなどのリハビリテーションの要素を含んだ有酸素運動は推奨されます。ただし、競争をともなうような運動や、バーベルを上げるなどの運動は脈拍ではなく血圧が上がってしまうため好ましくありません。有酸素運動によって筋肉の心臓といわれるふくらはぎを動かすと、足の静脈血が心臓に戻り、血液の循環が良好になるため、過度(肩で息をしなければいけない程度以上)でなければ勧めています。また、先天性心疾患の患者さんは、こどもの頃にあまり運動をしないように育てられてきたこともあり、メタボリックシンドロームの方が増えつつあります。生活習慣病という観点からも、適度な運動は推奨されます。
千葉市立海浜病院 循環器内科
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