長期生存が可能となった先天性心疾患は、小児期の手術後も生涯にわたって経過観察を行うことが重要です。しかし、自身の病気への理解不足から、成人期に診療を自己中断してしまうケースも少なくありません。長期的な経過観察の重要性と診療の自己中断によって起こる問題について、聖路加国際病院 心血管センター 特別顧問の丹羽公一郎先生にお話しいただきました。
診療体制の構築のほかに、成人先天性心疾患で問題となるのは、患者さん自身による診療の自己中断です。小児期に適切な手術が行われていても、疾患や手術法に特徴的な心臓の形態・機能異常が進展し、数年〜数十年後(成人期)に治療を必要とすることがあります。たとえば、ファロー四徴症の修復手術では、術前からあった異常が術後も残存する遺残症(遺残肺動脈狭窄)や術前にはなかった異常が術後に新たに生じる続発症(肺動脈弁逆流)などがあります。
先天性心疾患手術の多くは根治手術ではなく、このような遺残症や続発症を伴う場合があります。また加齢にともない、心機能の悪化・不整脈・心不全などの疾患が悪化する、後期合併症が起こる場合もあります。これらは、20歳代では症状としてあらわれていない場合でも、30、40歳代になるにつれてあらわれる可能性があります。不整脈などの症状があらわれてから病院にこられたときには、すでに心臓の状態が悪いというケースもあり、生涯にわたって経過をみていく必要があるのです。定期的に状態を診ることで、悪化しないように再手術や治療などの予防も行うことができます。
「移行期医療の確立に重要なこと」でも述べますが、診療の自己中断の背景には、小児期に自分の病気のことを詳しく知らないということがあります。胸にある手術痕をみれば、過去に心臓の手術を行ったということはこどもでも理解できるでしょう。しかし、具体的な病名や今後病気とどのように付き合っていくべきか、ということを親や医師から教わらなければ、生涯にわたる定期的な経過観察の必要性を知ることが難しいように感じます。先天性心疾患は糖尿病やてんかんといった慢性疾患のように、継続的な管理を行うことによって、よい状態を保つことができます。
先天性心疾患は継続的に付き合っていく病気なのだということ、長期的な経過観察が必要であるということを強くお伝えします。また、成人先天性心疾患の診療体制の構築を早急に行うと同時に、開業医や学校医、産業医などと協働しながら、先天性心疾患患者が診療の自己中断を行わないように指導することも重要であると考えています。そして、後述するとおり患者さんへの教育も診療体制の構築のひとつです。
千葉市立海浜病院 循環器内科
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