インタビュー

子どもの胃腸炎—家庭でのケア

子どもの胃腸炎—家庭でのケア

国立成育医療研究センター 小児医療系レジデント

吉村 聡 先生

窪田 満 先生

国立成育医療研究センター 総合診療部 統括部長(チャイルドライフサービス室長)

窪田 満 先生

この記事の最終更新は2016年02月02日です。

胃腸炎の主な症状は下痢や嘔吐ですが、下痢や嘔吐を繰り返したり、吐き気により水分・食事の摂取量が低下したりする結果、脱水状態に陥ってしまうことに注意しなければなりません。この記事では、家庭でできる子どもの胃腸炎のケアについてご紹介します。

脱水状態になった場合、身体に水分を補給する必要があります。中等症以下の脱水の場合には、家庭でも実施可能な経口補水療法が有効であり、病院での点滴療法よりもむしろ推奨されます(子どもの胃腸炎—下痢や嘔吐が主症状)。経口補水療法は点滴による治療と同等の効果がありながら安価で、子どもが注射の痛みを感じなくてよいといった利点があります。

経口補水療法とは、経口補水液を少しずつ飲ませていくことで水分を補給する治療法です。

経口補水液はナトリウムなどの電解質を多く含んだ液体で、嘔吐や下痢による脱水を適切に治せるように成分が調整されています。経口補水液の適切な摂取によって嘔吐を起こしにくく、下痢も長引かなくなるなど、症状そのものを改善させる効果もあります。また、味は徐々に改良されており、子どもでも飲みやすくなってきています。

経口補水液は薬局やドラッグストア、病院の売店、インターネット通販などで入手可能です。入手出来ない場合や、子どもが飲むのを嫌がって水分補給が滞り、その結果脱水の徴候が強くなった場合には病院を受診するようにしましょう。

授乳中の乳児についてはそのまま授乳を継続しましょう。また、かつて乳児用ミルクを1/2あるいは2/3濃度に希釈するという治療が推奨されていましたが、いくつかの研究で、薄めたミルクは症状の回復を遅らせ、栄養状態の改善も悪いことが示されており、現在では希釈せずに飲める量を与えるのが良いといわれています。

それでは経口補水療法の具体的な方法を見ていきましょう。

「少量ずつ」「頻回に」飲ませることが何よりもポイントです。一度にたくさん飲ませると嘔吐してしまい、かえって脱水がひどくなる場合があります。

はじめはティースプーン1杯(5ml)を5分に1回程度のペースでゆっくりと飲ませていきます。ペットボトルの蓋でも代用可能です。吐かずに飲めるようであれば、1回の量を増やしたり、投与間隔を短くしたりして飲ませる量を徐々に増やしていきます。体重1kgあたり50~100ml (例:10kgであれば500~1000ml))を3~4時間以内に投与することを目安とし、4時間経過以降は、嘔吐や下痢のたびに水分の喪失分として、10kg未満なら60~120ml、10kg以上なら120~240mlを加えていきます。

*関連記事:『子どもの嘔吐にはどんな対処法がある? 家庭でできる看病(ホームケア)のポイント』

補水が完了すれば、普段通りの食事をしてかまいません。消化管を休めるよりも栄養状態を改善することのほうが早く回復できると考えられています。おかゆやよく煮たうどんのように、子どもが食べやすいものから再開すると順調に食べられるようになっていくでしょう。また、同じ「卵」という食材でも料理の形態によって消化の良し悪しに違いがあります。半熟卵は完熟卵よりも消化が良いです。りんごも、すり下ろすとさらに消化が良くなります。

基本的に、煮る、蒸すなどの加熱で食材が柔らかくなり、また薄味に調理すると消化が良いです。一方で、焼く、炒める、揚げるという調理法は消化が悪くなります。食材を食べやすい大きさにすることも口腔内での動きを助け、消化を良くします。

私たちが子どものとき、体調を崩すと、私たちの親はおかゆを作り、りんごをすり下ろして与えてくれました。おかゆには何らかの塩分が入っており、十分に水分も摂取できました。それらは非常に消化の良いものであり、親が子を想う愛情に裏打ちされた、心のこもったリーズナブルな、手間をかけた料理だったのです。

ただし、症状が改善したら少しずつ硬くするのではなく、速やかにいつもの食事に戻すことも、栄養のバランスを崩さないようにするためには重要です。

 

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