インタビュー

口唇裂・口蓋裂とはなにか―原因不明の場合が多い先天性の異常

口唇裂・口蓋裂とはなにか―原因不明の場合が多い先天性の異常
稲川 喜一 先生

川崎医科大学 医学部 臨床医学 元形成外科学教授

稲川 喜一 先生

この記事の最終更新は2016年02月03日です。

お子さんが誕生される際に、健康を願わない親御さんはいないでしょう。しかし残念ながら新生児が罹患する病気は多数存在します。また、生命に支障をきたす異常ではないものの、お子さんの生活を考える上で、積極的な治療を行ったほうがよいものも少なくありません。先天性外表異常といわれる口唇裂口蓋裂もそのひとつですが、チーム医療の確立により後遺症なく治療ができるようになってきました。この記事では、川崎医科大学 形成外科学教授稲川喜一先生に口唇裂、口蓋裂とはどのようなものであるのか解説していただきます。

胎児が母親の子宮で成長するとき、顔は左右から伸びるいくつかの突起がくっつくことによって作られます。この際にくっつかない部分が残ってしまうと、その部位に裂け目が残ってしまいます。結果として、唇が割れたままになってしまう「口唇裂」や、口蓋が裂け口腔と鼻腔がつながった状態になる「口蓋裂」となります。

口蓋裂には、一見口蓋に裂け目がないように見えても、粘膜の下の筋肉の断裂がおきているケースがあります(粘膜下口蓋裂)。また、歯茎の骨が分かれたままになっているケースもみられますが、このような状態は顎裂(がくれつ)といいます。

この口唇裂と口蓋裂は合併することがあります。口唇裂と顎裂の合併を口唇顎裂(こうしんがくれつ)、口唇裂と顎裂さらに口蓋裂の合併を口唇顎口蓋裂(こうしんがくこうがいれつ)とよびます。

これらの先天性外表異常が発生する頻度は、日本人では約500人に1人の割合といわれています。また比較的日本人に多い先天異常となっています。

口唇裂の例

原因はいわゆる「発生学的な異常」、つまり妊娠の初期(顔や口蓋が形成される妊娠2~3か月ごろ)に胎児に異常な力が加わったりすることにより引き起こされます。しかしながら、なぜ妊娠初期にこのようなことが起こるのかはっきりとした原因が分からないものが圧倒的に多く、口唇裂口蓋裂の患者さん全体の7割程度が原因不明です。そのため、口唇裂・口蓋裂のお子さんが産まれたとしても、お母さんはあまりナーバスになる必要はありませんし、自分自身を責める必要はありません。

妊娠中にお子さんが「口唇裂・口蓋裂」になるリスクを高めてしまう原因としては、母体の葉酸不足・栄養障害・精神的なストレスが挙げられます。また副腎皮質ステロイド薬や鎮痛剤など、先天性外表異常を誘発する薬(催奇性薬剤)を使った場合もリスクは高まります。加えて風疹(ふうしん)にかかったり、放射線照射を受けたりすることなども要因として挙げられています。一部では遺伝によるものもあると考えられており、発生率は高齢出産になるほど高いといわれています。原因となる遺伝子も報告されつつありますが、単一の要因ではないため基本的にはこれもあまり気にする必要はありません。

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