インタビュー

口唇口蓋裂の手術治療後のケアと東京都立小児総合医療センターのチーム医療

口唇口蓋裂の手術治療後のケアと東京都立小児総合医療センターのチーム医療
玉田 一敬 先生

東京都立小児総合医療センター 形成外科医長

玉田 一敬 先生

この記事の最終更新は2016年04月13日です。

口唇口蓋裂は長期的なサポートを必要とする疾患の一つです。東京都立小児総合医療センターは、口唇口蓋裂のお子さんに対してチームで医療を提供し、身体面の治療はもちろん精神的なサポートも行っています。口唇口蓋裂の治療後の経過を踏まえて、東京都立小児総合医療センターにおける口唇口蓋裂治療の方針とチーム体制について、自らもメンバーの一人である東京都立小児総合医療センター形成外科医長の玉田一敬先生にお話しいただきました。

これまでの記事をまとめると、口唇口蓋裂には以下のような治療プランが考えられます。下記はあくまで東京都立小児総合医療センターでの治療の流れですが、参考にしてみてください。

  1. 出生
  2. 哺乳指導、必要に応じて口蓋床の作成
  3. 2~3ヶ月頃に口唇裂手術
  4. 1〜1歳半頃に口蓋裂手術(同時に滲出性中耳炎に対して鼓膜チューブの挿入を行うこともある)
  5. 言語や歯科の指導はその後も続け、就学などのタイミングで修正手術について適宜相談
  6. 顎裂に対しては8~10才頃を目安として骨移植

より詳細なスケジュールは、東京都立小児総合医療センター形成外科 口唇口蓋裂チームのホームページでご確認いただけます。

東京都立小児総合医療センターでは、口唇裂手術の場合は10日間、口蓋裂手術の場合は8日間の入院を基本としています。欧米や日本の一部の医療機関では、より短期間の入院で治療を行う施設もありますが、我々は退院後の家庭でのケアの負担も考慮し、この日数を設定しています。なお、口蓋裂の手術後は約1週間軟らかい食事を食べていただき、その後外来で創部(手術に伴ってできた跡)をチェックした後、ほぼ通常通りの食事が可能となります。

主なものには構音に関する問題(言葉の聞き取りやすさ)、咬合に関する問題(咬み合わせの状態)があります。これらはいずれも成長に伴って変化していくため、チーム診療を継続しながら外来で経過観察を行っていくことになります。また、学校での人間関係など、社会生活が円滑に進んでいるかどうかに関しても注意して確認します。

創が落ち着くまでには個人差がありますが、概ね半年~1年かけて徐々に目立たなくなっていきます。傷跡の状況に応じて飲み薬、軟膏、テープを貼ることもあり、個々の状況に応じて対応します。

口唇口蓋裂は出産直後から成人するまでの長期間にわたる治療が必要となり、チームアプローチが重要です。東京都立小児総合医療センターの口唇口蓋裂チームには形成外科・小児歯科・矯正歯科・耳鼻いんこう科・リハビリテーション科(言語聴覚士を含む)・心理福祉科・看護部・新生児科などが関わっており、必要に応じて他科の協力を仰ぎながら診療にあたります。

我々のチームでは、月に一度チームカンファレンスを行っています。そこではいつも特定の議題に関して話し合われるわけではなく、口唇口蓋裂の患者さんが各科を受診した際に明らかとなった情報をもとに、一つの診療科だけでは解決できないようなテーマを持ち寄って、複数の科で検討が行われます。また、その場で決定された方針が確実にチームの中で共有されるように心がけています。

先ほど述べましたように、我々のチームでは心理福祉科の医師にもメンバーに加わってもらっています。身体科(身体疾患を診察・治療する診療科)の医師だけでは、こころの問題や社会的な問題に対して十分に対応できない場合もあります。口唇口蓋裂という体の部分のみならず、それ以外の心理社会的な部分を含めた全体的なマネジメントができるよう、心理福祉科の先生にもチームに入っていただき、総合的なサポートを行っているのが我々の口唇口蓋裂チームの大きな特徴です。

我々の口唇口蓋裂チームは、お子さんが持っている能力をフルに発揮し、自分自身の人生をめいっぱい楽しむことができるようサポートすることを目標としています。

例えば、妊婦健診時の超音波検査で口唇裂があるように見えたとき、私たちはお父さん・お母さんの希望に応じて、出産前に口唇口蓋裂の治療についてお話しするようにしています。あらかじめ出産後の治療スケジュールを具体的に知っておくことで、ご両親にとっても精神的な準備期間を長く取ることができます。医療スタッフとご家族が揃ってお子さんをケアしていくことで、その子の人生をよりよいものにすることができると思っています。

私が口唇口蓋裂のお子さんを手術する際に考えていることは、「ほんの少しでも上手に手術してあげられれば、そのぶんだけ患者さんの人生が幸せになる可能性がある」ということです。

そして、そのために、非常にシンプルで当然のことのように思われるかもしれませんが、どのようなときであっても自分のできる最高の結果を出すように心がけています。

手術は、患者さんの状態も、そして術者の状態もいつも一定ではありません。常に最高の結果を出すために自問自答し、努力を継続している者だけが、ときとして訪れる非常にプレッシャーのかかる状況下でも平常心で手術を行えるのだと思います。だからこそ、いつも最高の結果を出すことを心がけ、常に自分の最高点を極めるように意識しています。

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