インタビュー

口唇裂・口蓋裂の診断から治療までの流れ―口唇裂・口蓋裂をもつこどものために(1)

口唇裂・口蓋裂の診断から治療までの流れ―口唇裂・口蓋裂をもつこどものために(1)
稲川 喜一 先生

川崎医科大学 医学部 臨床医学 元形成外科学教授

稲川 喜一 先生

この記事の最終更新は2016年02月06日です。

口唇裂(こうしんれつ)・口蓋裂(こうがいれつ)は、治療によって限りなく良い状態まで治すことが可能です。ただ、長い年月がかかるためご家族の多大な努力も必要となります。しかし、専門の医療チームと協力することで、問題は一つ一つ解決されていくでしょう。治療以外の面で特別なことは必要なく、子どもたちを健やかに育てていくことができます。

本記事では、川崎医科大学附属病院「口唇裂・口蓋裂ケアチーム」の資料をもとに、口唇裂・口蓋裂をもつお子さまの診断から治療までの流れについて、川崎医科大学形成外科学教授稲川喜一先生にご説明いただきます。

口唇裂口蓋裂は500人に一人の割合で生まれる頻度の高い先天性外表異常です。人間の唇や上あごは、妊娠7週から12週ころにかけてできあがります。しかし、何らかの原因が重なり組織(筋肉や皮膚)がくっつかず、割れ目が残ったまま生まれると「口唇裂・口蓋裂」と診断されます。

・「口唇裂」の手術…割れ目を閉鎖することで、正常な形に治すために行います。

・「口蓋裂」の手術…割れ目を閉鎖して、口の中の環境を整えることで、正しい言葉を話し、上手に食べられるようになるため、また歯並びや上あごの形を美しくするために行います。

口唇裂口蓋裂」専門の医療チームは、その診断を受けたご家族が安心できるよう、治療の詳しい説明や、総合的な専門医療を行います。また、「出生前情報提供」を行い、妊娠中に告知されたお母さまやご家族へ、ご出生以後の治療や養育に関して具体的にお話するなどの支援を行います。詳細は医療機関にお尋ねください。なお、医療機関ではそれぞれが以下のような役割を担います。

  • 産科医(妊娠中の管理・次の妊娠におけるサポートやアドバイス)
  • 形成外科医(出生後の治療についての情報提供)
  • 助産師・看護師(保健指導・受容支援…家族の不安を軽減するサポート)
  • 遺伝カウンセリング(遺伝情報の提供・心理的サポート)
  • 大学内の小児看護研究室(受容支援)
  • 医事課(費用・保険)
  • 形成外科医(治療・手術)
  • 矯正歯科医(術前矯正・矯正治療)
  • 新生児科・小児科(成長・発達の状態を把握し見守る)
  • 看護師(授乳指導・受容支援・療育指導)
  • 遺伝カウンセリング(遺伝情報の提供・心理的サポート)
  • 大学内の小児看護研究室(受容支援)
  • 医事課(費用・保険)
  • 耳鼻咽喉科医(耳鼻科疾患の管理)
  • 言語聴覚士(授乳指導・言語指導)

口唇裂口蓋裂をもつ子どものために、生まれたらできるだけ早く「ホッツ床」を作製します。ホッツ床とは、上あごの割れているところを覆う装置で、1歳半ごろまで使用します。哺乳を助けてくれるほか、上あごの割れ目を小さくしたり、良い上あごの形をつくる効果もあります。

以下は診断から治療までの大まかな流れです。

・妊娠中

出生前診断/各種説明と情報提供ほか/費用や保険の相談

・生後0~1日

出産/合併症をともなう場合は基礎疾患の診断を行う

・可能な限り早い時期

形成外科受診/耳鼻咽頭の診察/言語聴覚士による発育チェック/ホッツ床 型とり

・7日

出産後の退院(自宅へ)/ホッツ床 装着

・1ヵ月

母子1ヵ月健診/ホッツ床 調整

・3ヵ月

「口唇裂の形成術(約1週間程度の入院)」

・1歳6ヵ月

「口蓋裂の形成術(約1週間程度の入院)」/言語指導/中耳炎を中心とした診察と治療

・2歳

専門外来開始(形成外科医・矯正歯科医・耳鼻咽喉科医・言語聴覚士)必要に応じて治療や手術

・5~6歳

鼻を左右対称にする「外鼻形成術(約1週間程度の入院)」

・7~11歳

上あごの骨に欠損がある場合「骨移植(約10日~2週間程度の入院)」

・~18歳

育成医療(公的な支援)が終了/必要に応じ「細部の修正術」

 

※本記事は、川崎医科大学附属病院「口唇裂・口蓋裂ケアチーム」による『口唇裂・口蓋裂をもつお子さまの健やかな成長のために(リーフレット)』をもとにしています。

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    稲川 喜一 先生

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東京科学大学 病院 歯系診療部門 口腔外科系診療領域 口腔外科 助教

はらぞの ようすけ

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たまだ いっけい
玉田先生の医療記事

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