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口唇口蓋裂とは?出生前診断から治療まで
口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)は、上くちびるや上あごに割れがみられる生まれつきの病気です。出生後に確認できる病気ですが、近年では、出産前の胎児のときでもエコー検査によって発見されることが多く...
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口唇口蓋裂とは?出生前診断から治療まで

公開日 2018 年 04 月 10 日 | 更新日 2018 年 04 月 10 日

口唇口蓋裂とは?出生前診断から治療まで
小林 眞司 先生

神奈川県立こども医療センター形成外科部長

小林 眞司 先生

目次

口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)は、上くちびるや上あごに割れがみられる生まれつきの病気です。出生後に確認できる病気ですが、近年では、出産前の胎児のときでもエコー検査によって発見されることが多くなってきています。また、口唇口蓋裂は、適切な治療を受ければ健康な人と比べて遜色ない社会生活を送ることができるようになる病気です。

今回は、口唇口蓋裂の出生前診断から手術を含めた治療方法について、神奈川県立こども医療センター形成外科部長 小林眞司先生にお伺いしました。

口唇口蓋裂とはどんな病気?

赤ちゃん

上くちびる、上あごに割れがみられる病気

口唇口蓋裂は、口唇(上くちびる)や口蓋(こうがい:上あご。口の天井部分)が割れてしまうことがある生まれつきの病気です。口唇や口蓋の割れは、口の片側もしくは両側にあらわれます。また、鼻から喉の奥、さらに口蓋垂(こうがいすい:喉の奥にあるやわらかな突起)にかけて割れがみられることもあります。

分類は多岐にわたる

口唇口蓋裂は、割れ方のタイプによって分類されています。大まかには、下記のようなタイプがあります。

  • 上くちびるが割れる(口唇裂)
  • 上くちびると歯ぐきが割れる(口唇顎裂)
  • 上くちびる、上あごから口蓋垂まで割れる(口唇口蓋裂)
  • 上あごだけが割れる(口蓋裂)

口唇口蓋裂のエコー検査でわかること

エコー検査機

口唇裂はおおむね発見できるが、発見できないこともある

口唇裂は、生まれる前の胎児診断でわかることがあります。エコー検査*(超音波検査)では赤ちゃんの顔の造形や特徴をみることができるためです。

エコーの描写がうまくいけば、目の位置やあごの位置などの特徴がそのままあらわれ、口唇裂の有無がおおむね推測できます。ただし、撮り方や赤ちゃんの姿勢によってはうまくうつらないこともあります。

エコー検査…超音波の反射を映像化し、母親の胎内の状態をみる画像検査法。

口蓋裂はほとんどわからない

口蓋裂は、胎児診断では調べることができません。エコー検査では赤ちゃんの口の中はうつらないためです。特に、口蓋裂(上あごが割れる)だけでは、胎児診断で発見することは困難です。

妊娠20~30週目に発見されやすい

エコー検査によって口唇裂が発見される時期は、早くて妊娠20週目頃です。しかし、30週目以降で発見されることも多くみられます。

エコー検査の所見と出生後の症状は異なる場合がある

口唇口蓋裂の診断は、出生後にはじめて確定的になります。前述したように、エコー検査ですべての異常が明らかになるわけではないためです。

エコー検査の所見と出生後の症状は、下記のような場合に異なることがあります。

  • エコー検査では口の片側が割れているようだったが、出生後に両側の割れが確認された
  • エコー検査では口唇裂がみられたが、出生後に口蓋裂もあるとわかった

など

エコー検査の種類、エコー写真

妊婦のエコー検査

2Dエコー

エコー検査には、2D(平面)、3D(立体)、4D(動画)という3種類があります。口唇口蓋裂は、主に2D(平面)で判別されます。

正常例

口唇口蓋裂
小林先生ご提供

片側唇顎裂(上くちびると上あごの片側に割れがある場合)

小林先生ご提供

右側完全唇顎口蓋裂(右側の上くちびるから鼻の穴の入り口まで割れがある場合)

右側完全唇顎口蓋裂エコー、顔貌
小林先生ご提供

3Dエコー

右側完全唇顎口蓋裂(右側の上くちびるから鼻の穴の入り口まで割れがある場合)

3D右側完全唇顎口蓋裂エコー、顔貌
小林先生ご提供 

口唇口蓋裂の原因と起こる確率

親子

原因の大半は多因子遺伝

口唇口蓋裂の多くは、遺伝と環境の相互作用で引き起こされる遺伝子の変異(多因子遺伝)によって発症すると考えられています。多因子遺伝とは、ひとつの遺伝子ではなく遺伝要因や環境要因(生活習慣など遺伝以外の原因)の影響で、姿・形・体質などがあらわれるという遺伝現象です。

およそ500人にひとりが発症

口唇口蓋裂の患者さんは、およそ500人にひとり生まれます。なお、口唇裂・口唇口蓋裂の患者さんと口蓋裂の患者さんとでは、発症率が異なります。

再発率は場合により異なる

口唇口蓋裂の再発率(家族内で複数人が発症すること)は、兄弟が何名発症したか、近親者に罹患者が何名いるか、といった状況によって違いがみられます。また、分類される形態(タイプ)によっても異なります[注1]

[注1]…福島義光監修.遺伝カウンセリングマニュアル 改定第3版. 南江堂.2016.472p.

Harper PS. Practical Genetic Counselling 7th eds. Routledge.2010.416p.

口唇口蓋裂の治療

病院

治療方法は確立されている

口唇口蓋裂の大半は命にかかわることがなく、脳や精神の発達の遅れはみられません。そこで、手術によって機能的な障害が残らない状態まで改善できることがほとんどです。適切な時期に適切な治療を受ければ、健常者に比べてそん色なく社会生活を送ることができます。

ただし、原因となる遺伝子や手術跡などを全て取り除くことは難しく、何もなかったかのようにすっかり治ってしまうとは言い難いでしょう。

治療方法は手術

口唇口蓋裂の治療方法は手術です。上くちびるや上あごを個別に手術する場合や、異常がみられる全ての部分を一度に手術する場合があります。

症状が重い場合には、術前顎矯正治療(じゅつぜんがくきょうせいちりょう)を行うことがあります。術前顎矯正治療とは、手術での負担をなるべく減らすため、口やあごの形を整えておく準備のことです。

術前顎矯正治療とは?-プレートを用いた治療

術前顎矯正治療は、手術の前に行う準備です。主に、口蓋裂(上あごの裂け目)が狭くなるよう、プレートやテープを装着して矯正します。

プレートやテープは、多くの場合、生後5~6か月まで常に装着します。装着している間は、10日~2週間に1回の通院が必要です。

スケジュールや手順は決められている

病院では、診断された口唇口蓋裂のタイプに合わせて治療を行うことが重視されています。

<口唇口蓋裂の治療の主なスケジュール>

  • 出生前…胎児診断で発見
  • 出生後…術前顎矯正治療、合併症の検索
  • 4~8ヶ月頃…口唇形成術、口唇・顎・口蓋形成術
  • 1歳前後…口蓋形成術

など

<口唇口蓋裂の形態により実施>

  • 哺乳指導
  • 言語発達の訓練
  • 滲出性中耳炎の有無

など

口唇口蓋裂の手術回数

手術

一般的には複数回に及ぶ

口唇口蓋裂は、裂け目が生じている部分に応じて個別に手術を行うことが一般的です。また、術前顎矯正治療を行っても口唇口蓋裂の生じている範囲がとても広い場合や、お子さんが術前顎矯正を嫌がってできない場合なども、手術回数は複数回に及びます。

<口唇口蓋裂の手術の種類>

  • 口唇形成術(上くちびるの割れを閉じる手術)
  • 口蓋形成術(歯の後ろから口蓋垂までの割れを閉じる手術)
  • GPP歯肉骨膜形成術(歯ぐき(歯の生えてくるところ)の割れを閉じる手術)

など

術前顎矯正で手術回数が減らせる

口唇口蓋裂の治療では、術前顎矯正で顎裂を狭くして手術を一度に実施することもできます。術前顎矯正が成功すれば、上くちびる・上あご・口蓋の手術に1回で着手できる可能性が高くなります。

手術後に起こり得る症状

通院 赤ちゃん

受け口になる可能性

術前顎矯正を行うと、数か月間で急速に矯正することから、受け口(歯の噛み合わせが逆になること)になる可能性が高くなります。手術の後は、矯正治療(噛み合わせや歯並びを整える治療)が行われます。

必ず受け口になるわけではない

口唇口蓋裂はそもそも受け口になる病気だと思われている方が多いのですが、口唇口蓋裂を発症すると必ず受け口になるというわけではありません。受け口は、一般的には手術、特に口蓋形成術によって引き起こされることが多いと考えています。口蓋裂の手術であるFurlow(ファロー)法は受け口になるリスクを最小限に抑えてくれる手術の一つです。

終わりに

子ども

お子さんに口唇口蓋裂があるとわかったとき、ご両親はとても不安に思われ、心配されるかと思います。

しかし、多くの口唇口蓋裂は、脳の発達には影響がみられない病気です。適切な時期に適切な治療を受ければ、他の子どもと同じように生活できるようになります。学校に行ったり、結婚したり、子どもを産んだりするといった社会的生活には支障がないことがほとんどです。

出生前診断で口唇口蓋裂の可能性があるといわれたときは、その診断を生かして、病院に相談しながら必要なケアやサポートを受けるようにしてください。病院では、医療スタッフや遺伝カウンセラーが連携し、十分なサポートが行えるように取り組んでいます。

口唇口蓋裂や症候群性頭蓋縫合早期癒合症の患者さんの生活や心身への負担を考え、生涯一度といった少ない手術回数で治療を終えられるよう、術式に工夫を重ねている。症候性頭蓋縫合早期癒合症(クルーゾン/アペール/ファイファー/アントレー・ビクスラー症候群)研究班の代表者も務め、治療開発と病態解明に尽力し続けている。

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