口唇口蓋裂は、上くちびるや上あごに割れがみられる生まれつきの病気です。出生後に確認できる病気ですが、近年では、出産前の胎児のときでもエコー検査によって発見されることが多くなってきています。また、口唇口蓋裂は、適切な治療を受ければ健康な人と比べて遜色ない社会生活を送ることができるようになる病気です。
今回は、口唇口蓋裂の出生前診断から手術を含めた治療方法について、神奈川県立こども医療センター形成外科部長 小林眞司先生にお伺いしました。
口唇口蓋裂は、口唇(上くちびる)や口蓋(上あご。口の天井部分)が割れてしまうことがある生まれつきの病気です。口唇や口蓋の割れは、口の片側もしくは両側にあらわれます。また、鼻から喉の奥、さらに口蓋垂(喉の奥にあるやわらかな突起)にかけて割れがみられることもあります。
口唇口蓋裂は、割れ方のタイプによって分類されています。大まかには、以下のようなタイプがあります。
口唇裂は、生まれる前の胎児診断でわかることがあります。エコー検査*(超音波検査)では赤ちゃんの顔の造形や特徴をみることができるためです。
エコーの描写がうまくいけば、目の位置やあごの位置などの特徴がそのままあらわれ、口唇裂の有無がおおむね推測できます。ただし、撮り方や赤ちゃんの姿勢によってはうまくうつらないこともあります。
エコー検査…超音波の反射を映像化し、母親の胎内の状態をみる画像検査法。
口蓋裂は、胎児診断では調べることができません。エコー検査では赤ちゃんの口の中はうつらないためです。特に、口蓋裂(上あごが割れる)だけでは、胎児診断で発見することは困難です。
エコー検査によって口唇裂が発見される時期は、早くて妊娠20週目頃です。しかし、30週目以降で発見されることも多くみられます。
口唇口蓋裂の診断は、出生後にはじめて確定的になります。前述したように、エコー検査ですべての異常が明らかになるわけではないためです。
エコー検査の所見と出生後の症状は、以下のような場合に異なることがあります。
などが挙げられます。
口唇口蓋裂の多くは、遺伝と環境の相互作用で引き起こされる遺伝子の変異(多因子遺伝)によって発症すると考えられています。多因子遺伝とは、ひとつの遺伝子ではなく遺伝要因や環境要因(生活習慣など遺伝以外の原因)の影響で、姿・形・体質などがあらわれるという遺伝現象です。
口唇口蓋裂の患者さんは、およそ500人にひとり生まれます。なお、口唇裂・口唇口蓋裂の患者さんと口蓋裂の患者さんとでは、発症率が異なります。
口唇口蓋裂の再発率(家族内で複数人が発症すること)は、兄弟が何名発症したか、近親者に罹患者が何名いるか、といった状況によって違いがみられます。また、分類される形態(タイプ)によっても異なります。
口唇口蓋裂の問題は主に顔貌、言語、かみ合わせ、耳管機能(滲出性中耳炎*など)に集約されます。治療によって機能的な障害が残らない状態まで改善できることがほとんどです。
口唇口蓋裂の治療法は日々進歩しており、適切な時期に適切な治療を受ければ、ほとんどの方が健常者に比べてそん色なく社会生活を送ることができます。
特に、手術前にあごの形を整える「術前顎矯正治療法」が行われるようになって以来、手術方法も変化し、かつ手術回数の大幅な軽減にもつながりました(術前顎矯正治療について詳しくは後述)。
口唇口蓋裂の治療法は医療機関によって異なります。ここでは、「神奈川県立こども医療センターが2019年現在行っている治療法」をご紹介します。
当センターにおける口唇口蓋裂の治療では、日本形成外科学会認定の形成外科専門医をはじめ、経験を重ねてきた医師によるチーム医療(新生児科・遺伝科・総合診療科・耳鼻咽喉科・矯正歯科・小児歯科・言語治療科など)が行われ、長期的経過観察を含めた体制が整っています。
滲出性中耳炎…鼓膜の奥に液体がたまる中耳炎のことを滲出性中耳炎といいます。通常は、主に、耳管(鼻腔と中耳を連絡している管)に付着している口蓋帆張筋(こうがいはんちょうきん)が収縮し耳管を開口させることによって、鼻腔内からの滲出物を排出しています。口蓋裂の場合、口蓋帆張筋が左右に分断されていて、耳管の開口ができないため、滲出物は鼻腔から中耳へと進んでいきます。その滲出物が貯まった状態が滲出性中耳炎、です。放置すれば難聴の原因となりますので、口蓋裂のあるお子さんは、耳の中が見やすくなる生後半年位までには耳鼻咽喉科にかかって診察を受け、必要に応じて鼓膜切開や鼓膜にチューブを入れる手術を行います。
当センターで行っている口唇口蓋裂の治療法をなるべく具体的にお話しします。
出生前…胎児診断で発見された方に対して、出生前にインフォームドコンセント(医師による説明と患者さんの同意)を行う。
出生後…術前顎矯正治療および全身状態のチェック(新生児科・遺伝科・総合診療科・耳鼻咽喉科・矯正歯科・小児歯科など、当センターには口唇口蓋裂の治療に必要となる科がそろっており、それぞれが経験を重ねてきました。)
口唇裂(上くちびる)だけの場合…3~4か月頃、極小三角弁による口唇形成術
口唇顎裂(上くちびると上の歯ぐき)の場合…生後なるべく早く術前顎矯正治療(必要があれば)、その後に口唇形成術
口蓋裂(上あご)だけの場合…1歳前後、ファーラー法による口蓋形成術+滲出性中耳炎の手術(必要があれば)
口唇口蓋裂(上くちびる、上あごから口蓋垂まで)の場合…生後なるべく早く術前顎矯正治療を行い、その後の生後6か月頃~、極小三角弁による口唇形成術+GPP+ファーラー法による口蓋形成術+滲出性中耳炎の手術(必要があれば)
口唇口蓋裂の治療法は、出生後に行う術前顎矯正治療の結果により手術の時期・順番などがかわります。口唇口蓋裂の生じている範囲がとても広い場合や、お子さんが術前顎矯正を嫌がってできない場合など、手術回数は複数回に及ぶことがあります。
しかし、ほとんどの患者さんでは、手術後の腫れも少ないために、手術後すぐに抜管(麻酔中に入れる呼吸の管を抜くこと)し、覚醒させる(目を覚ます)ことができます。
術前顎矯正治療は、裂が広い場合に対する手術の前に行う準備です。主に、口蓋裂(上あごの割れ)が狭くなるよう、プレートやテープを装着して矯正します。プレートやテープは、多くの場合、生後5~6か月まで常に装着します。装着している間は、10日~2週間に1回の通院が必要です。術前顎矯正治療により裂が狭くなれば、口唇・顎・口蓋の手術を一緒に行うことができます。
口唇形成術は、上くちびるの割れを閉じる手術のことです。口唇形成術には主にミラード法、小三角弁法、フィッシャー法があります。
私たちは「三角弁が目立つ」という小三角弁法の欠点を解決するために、三角弁を2mm以下にする「極小三角弁法」というデザインを考案し、使用しています。
乳児期に歯ぐき(歯の生えてくるところ)の割れを閉じる手術のことを、歯槽歯肉骨膜形成術(Gingivoperiosteoplasty)といいます。割れているあごの周囲の粘骨膜を剥離して縫合することにより、割れているあごに骨を形成させる手術です。乳幼時期は骨形成能力が旺盛であるといわれており、生後に行う口唇形成術と同時に行うことで、その後に骨が形成されれば、顎裂部骨移植術(学童期に歯ぐきの割れを閉じるために腰部から採取した腸骨海綿骨を移植する手術)を行わずにすむので、手術回数を1回減らすことができます。
顎裂部骨移植術を行う場合は6歳頃に行います。6歳以下だと十分に骨が取れないからです。
歯ぐきは将来きれいに永久歯が並ぶための土台として重要な場所です。治療では、この歯ぐきの割れ目(顎裂部)に自分の骨(腸骨の海綿骨)を移植します(顎裂部骨移植術)。治療時期は6歳から10歳ぐらいで、十分な骨の量が取れて、裂部の永久歯が萌出する前に行うという考えが一般的です。2019年現在では、当センターや申請を受理された機関では歯科矯正治療も保険適用され、顎裂部骨移植術と歯科矯正治療の組み合わせは、口唇口蓋裂治療の重要な位置を占めています。いつまでも健康でいるためには、歯は重要な要素のひとつであることは言うまでもありません。
口の中の天井部分(口蓋)に割れがみられる状態を口蓋裂といいます。
口唇口蓋裂はそもそも受け口になる病気だと思われている方が多いのですが、口唇口蓋裂を発症すると必ず受け口になるというわけではありません。受け口は、一般的には手術、特に口蓋形成術によって引き起こされることが多いと考えられています。
口蓋裂の治療では、歯の後ろから口蓋垂(いわゆるのどちんこ)までの割れを閉じる手術である口蓋形成術が行われます。
口蓋形成術のひとつである「ファーラー(Furlow)法」は、あごの発育抑制をなるべく減らすことができ、言語発達に影響が出にくい方法とされています。
軟口蓋に対してはZ形成術(Z型に切開して縫い合わせる術式)を行います。硬口蓋に対しては粘膜骨膜を剥離したあと、引っ張って中央に寄せることで裂を閉鎖します。
このようにして全ての傷口を粘膜・骨膜で覆うことができ、縫合終了時には、縫合部はすべて線状の痕となります。ファーラー法は、傷口を全て自分の粘膜・骨膜で覆うために、他の方法よりも受け口になるリスクを抑えてくれます。
上あごに広い割れがみられる口蓋裂の患者さんで、ファーラー法を実施しました。これから歯科矯正治療を行う予定です。言語(しゃべり方)もよいです。
ファーラー法は、あごの発育抑制を減らし、言語発達にもよい影響をもたらします。しかし、一般的にファーラー法は全ての唇顎口蓋裂に対して行われていません。その最大の理由は、口蓋裂の幅が広い場合に対処できないためです。
私たちはファーラー法の利点のひとつである「硬口蓋粘骨膜を広い範囲で剥離する」ことにより閉鎖しています。このようにすることで広い裂幅の口蓋裂も閉鎖することができます。
術前顎矯正治療を行うと、数か月間で急速に矯正することから、受け口(歯の噛み合わせが逆になること)になる可能性が高くなります。また、ファーラー法は、口蓋形成術の中でも受け口になるリスクを抑えてくれる手術ですが、他の口蓋形成術と同様に上あごに侵襲を加えるために、上あごの成長を多少抑制するかもしれません。術前顎矯正治療と口蓋形成術の手術の後は、上顎前方牽引法などの矯正治療(噛み合わせや歯並びを整える治療)を行います。
手術回数が1回で済む可能性がある術前顎矯正を併用した治療法は、従来の手術・入院諸費用と比較して医療費を抑えることができます。
一般的には、少なくとも口唇形成術、口蓋形成術、顎裂部骨移植術、鼻修正術の計4回の手術・入院が必要です。この合計4回の手術費用は、約115~148万円程度になり、その度の入院費を考えると費用はさらに増大します。
一方、手術回数が1回の場合の手術費用は、約74万円程度で、入院も1回だけです。また、患者さん本人だけでなく、ご家族の精神面や交通費などを考慮すると、さらに負担を軽減することができます。
必ず1回で終了するわけではありませんが、手術回数を少なくすることは、日本の医療経済的にもよい影響があると考えます。
当センターで2010年から2015年の5年間に手術を行った片側唇顎口蓋裂 78例の言語評価(言語評価年齢:5才7か月±1才3か月)は、以下の通りです。
口唇口蓋裂は「口唇裂」「口唇顎裂」「口唇口蓋裂」「口蓋裂」と大まかに分類されています。
上くちびるから上あごを越えて口蓋垂まで割れている状態を「唇顎口蓋裂」といいます。
上くちびると上あごの片側に割れがみられる「片側唇顎口蓋裂」の患者さんです。右側に唇顎口蓋裂がみられるため、術前顎矯正によりあごの位置を整え、口唇・顎・口蓋形成術を実施しました。こちらの患者さんの場合、言語(しゃべり方)もよく、かみあわせも良好ですが、鼻の変形を伴うため、成長終了時には鼻修正術を予定しています。今までに行った手術は1回だけです。
上くちびると上あごの片側に割れがみられる「片側唇顎口蓋裂」の患者さんです。右側に唇顎口蓋裂がみられるため、術前顎矯正プレートを用いてあごの位置を整えました。術前顎矯正治療終了時には、上あごにみられた割れが狭くなっています。
こちらの患者さんでは、口唇・顎・口蓋形成術を実施し、言語(しゃべり方)もよく、11歳時のかみ合わせは良好です。鼻の変形を伴うため、成長終了時には鼻修正術を予定しています。今までに行った手術は1回だけです。
上くちびると上あごの片側に割れがみられる「片側唇顎口蓋裂」の患者さんです。左側に唇顎口蓋裂がみられるため、術前顎矯正によりあごの位置を整え、口唇・顎・口蓋形成術を実施しました。こちらの患者さんの場合、言語(しゃべり方)もよく、10歳時のかみあわせは良好ですが、鼻の変形を伴うため、成長終了時には鼻修正術を予定しています。今までに行った手術は1回だけです。
上くちびると上あごの片側に割れがみられる「片側唇顎口蓋裂」の患者さんです。左側に唇顎口蓋裂がみられるため、術前顎矯正によりあごの位置を整え、口唇・顎・口蓋形成術を実施しました。こちらの患者さんでは、言語(しゃべり方)もよく、10歳時のかみあわせは良好ですが、鼻の変形を伴うため、成長終了時には鼻修正術を予定しています。今までに行った手術は1回だけです。
上くちびると上あごの片側に割れがみられる「片側唇顎口蓋裂」の患者さんです。左側に唇顎口蓋裂がみられるため、術前顎矯正によりあごの位置を整え、口唇・顎・口蓋形成術を実施しました。こちらの患者さんでは、言語(しゃべり方)もよく、10歳時のかみあわせは良好ですが、鼻の変形を伴うため、成長終了時には鼻修正術を予定しています。今までに行った手術は1回だけです。
上くちびると上あごの片側に割れがみられる「片側唇顎口蓋裂」の患者さんです。左側に唇顎口蓋裂がみられるため、術前顎矯正によりあごの位置を整えました。口唇・顎・口蓋形成術を実施し、6歳時に顎裂部骨移植術を行いました。今までに行った手術は2回です。こちらの患者さんでは、言語(しゃべり方)もよく、10歳時のかみあわせは良好ですが、鼻の変形を伴うため、成長終了時には鼻修正術を予定しています。
上くちびると上あごの片側に割れがみられる「片側唇顎口蓋裂」の患者さんです。左側に唇顎口蓋裂がみられるため、術前顎矯正によりあごの位置を整え、口唇・顎・口蓋形成術を実施しました。こちらの患者さんでは、言語(しゃべり方)もよく、10歳時のかみあわせは良好ですが、少し鼻の変形を伴うため、成長終了時には鼻修正術を予定しています。今までに行った手術は1回だけです。
上くちびるからあご(歯ぐき)まで割れが及んでいて左右の皮膚や骨が離れている状態を「完全唇顎裂」といいます。両側例の治療は片側例よりも難しくなります。
上くちびるからあごまで割れがみられる「両側完全唇顎裂」の患者さんです。あごの割れは軽度です。今までに行った手術は1回です。
くちびるの両側に割れがみられた「両側完全唇顎裂」の患者さんです。割れと割れの間(中間顎)が大きく突出していたため、術前顎矯正によりあごの位置を整え、口唇形成術とGPP(歯肉骨膜形成術)*を行いました。こちらの患者さんでは術後の鼻や人中の形態は良好ですが、鼻柱がまだ少し短く、今後も治療を継続する必要があります。
GPP(歯肉骨膜形成術)…歯ぐきの割れを閉じる手術のひとつ。
上くちびるからあごまで割れがみられた「両側完全唇顎裂」の患者さんです。中間顎が大きく突出していたため、術前顎矯正によりあごの位置を整え、口唇形成術とGPP(歯肉骨膜形成術)を行いました。16歳時点で矯正歯科治療中です。
上くちびるから顎(歯ぐき)を超えて口蓋垂まで割れが及んでいて、左右の上くちびるが割れている状態を「完全唇顎口蓋裂」といいます。前歯が生えてくる骨は前方に飛び出していることもあります。
上くちびると上あごの両側に割れがみられる「両側完全唇顎口蓋裂」の患者さんです。前歯の生えてくる骨が飛び出して左に曲がっています。術前顎矯正プレートを用いてあごの位置を整えました。術前顎矯正治療終了時には、上あごにみられた割れが狭くなっています。
そのあとに、口唇・顎・口蓋形成術を実施しました。こちらの患者さんでは、言語(しゃべり方)もよく、5歳時顔貌は良好です。歯並びの乱れを伴うため、今後、矯正歯科治療を予定しています。今までに行った手術は1回だけです。
上くちびると上あごの両側に割れがみられる「両側完全唇顎口蓋裂」の患者さんです。術前顎矯正プレートを用いてあごの位置を整えました。術前顎矯正治療終了時には、上あごにみられた割れが狭くなっています。
そのあとに、口唇・顎・口蓋形成術を実施しました。こちらの患者さんでは、言語(しゃべり方)もよく、5歳時顔貌は良好です。歯並びの乱れを伴うため、今後、矯正歯科治療を予定しています。今までに行った手術は1回だけです。
上くちびると上あごの両側に割れがみられる「両側完全唇顎口蓋裂」の患者さんです。術前顎矯正プレートの反応が鈍かったために、中間顎骨切り術という、前方に突出している骨を切ったあとに、その骨を下げる手術を行いました。
そのあとに、口蓋形成術を実施しました。こちらの患者さんでは、言語(しゃべり方)もよく、5歳時顔貌は良好です。歯並びの乱れを伴うため、今後、矯正歯科治療を予定しています。今までに行った手術は2回です。
上くちびると上あごの両側に割れがみられる「両側完全唇顎口蓋裂」の患者さんです。術前顎矯正プレートの反応が鈍かったために、中間顎骨切り術という前方に突出している骨を切る手術を行いました。
そのあとに、口蓋形成術を実施しました。こちらの患者さんでは、言語(しゃべり方)もよく、5歳時顔貌は良好です。歯並びの乱れを伴うため、今後、矯正歯科治療を予定しています。今までに行った手術は2回です。
上くちびると上あごの両側に割れがみられる「両側完全唇顎口蓋裂」の患者さんです。術前顎矯正プレートでは矯正することができなかったために、生後6か月に中間顎骨切り術という前方に突出している骨を切る手術を行いました。そのあとに、口蓋形成術を実施しました。
言語(しゃべり方)もよく、5歳時顔貌は良好です。1本の前歯が先天的に欠損し、他の前歯は低形成でかつ歯並びの乱れを伴うため、今後、矯正歯科治療を予定しています。こちらの患者さんでは、今までに行った手術は2回です。
左から順に、術前顎矯正開始前、術前顎矯正プレート終了時、口蓋形成術開始直前、5歳時
上くちびると上あごの両側に割れがみられる「両側完全唇顎口蓋裂」の患者さんです。術前顎矯正プレートを用いてあごの位置を整えました。術前顎矯正治療終了時には、上あごにみられた割れが狭くなっています。口唇・顎形成術を行いました。
そのあとに、口蓋裂の幅が広いために1歳6か月で口蓋形成術を実施しました。
こちらの患者さんでは、言語(しゃべり方)もよく、5歳時顔貌は良好です。歯並びの乱れを伴うため、今後、矯正歯科治療を予定しています。今までに行った手術は2回です。
上くちびると上あごの両側に割れがみられる「両側完全唇顎口蓋裂」の患者さんです。
口唇・顎・口蓋形成術を実施しました。こちらの患者さんでは、言語(しゃべり方)もよく、17歳時顔貌は良好です。今までに行った手術は、口唇形成術+GPPと口蓋形成術の2回です。
上くちびると上あごの両側に割れがみられる「両側完全唇顎口蓋裂」の患者さんです。
口唇・顎・口蓋形成術を実施しました。こちらの患者さんでは、言語(しゃべり方)もよく、14歳時顔貌は良好です。歯並びの乱れを伴うため、矯正歯科治療中です。今までに行った手術は、口唇形成術+GPP、口蓋形成術、顎裂部骨移植術の計3回です。
お子さんに口唇口蓋裂があるとわかったとき、ご両親はとても不安に思われ、心配されるかと思います。
しかし、多くの口唇口蓋裂は、脳の発達には影響がみられない場合、適切な時期に適切な治療を受ければ、他の子どもと同じように生活できるようになります。学校に行ったり、結婚したり、子どもを産んだりするといった社会的生活には支障がないことがほとんどです。
出生前診断で口唇口蓋裂の可能性があるといわれたときは、その診断を活かして、病院に相談しながら必要なケアやサポートを受けるようにしてください。病院では、医療スタッフや認定遺伝カウンセラーが連携し、十分なサポートが行えるように取り組んでいます。
神奈川県立こども医療センター 形成外科 部長
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