理学療法士は、怪我や手術後に動くことが困難と人なった人を手助けします。具体的には、以下のような疾患を持つ人が対象となります。
など。
理学療法士は、患者さんが体力をつけたり、再び動けるようサポートをするだけでなく、痛みや障害を軽減したり、予防することもできます。
理学療法士は、病院、クリニック、介護施設、学校、リハビリテーションセンター、もしくは家にてケアを行います。
彼らは下記の目的をもって、身体機能や運動に焦点をあてた様々な治療法を用います。
しかし、運動療法の中には有用ではないものもあります。それどころか、かえって症状を長引かせたり、さらには新たな問題を引き起こしかねないものもあります。
多くの保険プランでは、運動療法に対する支払いには回数の制限が設けられています。治療の効果がない場合、自己負担した費用が無駄になってしまうといえます。
また、治療による効果が得られないときに不必要な検査や注射、手術などを受けようとされる方もいますが、これらにも費用がかかるうえ、リスクも伴います。
アメリカ運動療法協会は、一般的な運動療法ではあるものの多くのケースで有用ではない運動療法を、Choosing Wiselyシリーズの一環として5つ挙げています。これらは、時に害となったり、不要な検査や治療を受けねばならなくなる原因となります。また、前述の通り費用も更にかかることになってしまいます。その5つの運動療法とは何か、デメリットとメリットを挙げながら解説します
問題:温熱寒冷療法では、温かいパックや冷たいパックを使ったり、体の深部を温めるために超音波などを用います。これにより背中や肩、膝の痛みが緩和されたり、運動前後にリラックスできる可能性はあります。しかしながら、これらが持続的な効果を発揮するという根拠は何一つありません。
例:複数の研究によって、運動プログラムに組み込まれた深部温熱超音波は、膝の関節炎には有効でないと示されています。理論的な根拠のある運動法や、他の方法を取り入れたほうがよいでしょう。
危険性や害:普通多くの人は、痛みを抱えている時に体を動かすことには抵抗を感じるでしょう。理学療法士が用いる温熱寒冷療法は、この抵抗感を助長する可能性があります。しかし、体を動かさなければ問題は深刻になる一方であり、やがては必要ではなかったはずの医療行為、例えば膝の手術や背中へのステロイド注射まで行なわなければならないことになってしまいます。
問題:多くの高齢者は、運動不足や入院、手術などが原因で筋力が低下しています。これにより、歩く、バランスをとる、椅子から立ち上がるなど、様々な日常動作に支障が出ていることもあります。更に、転倒のリスクまでも高まってしまいます。
このような高齢者の方でも、適切な筋力トレーニングを行うことで、筋力を取り戻したり転倒を防ぐことができます。
理学療法士は、トレーニングマシーン、フリーウエイト、ゴムバンドを使用したトレーニング、器具を使わない自重トレーニングなど、筋力をつけるための様々な方法を指導してくれます。
しかし、「運動があまりに簡単すぎる」と感じることもあるかもしれません。おそらく、理学療法士は患者に怪我をさせてしまわないかとリスクを感じているのでしょう。
とはいえ、複数の研究により、負荷の高いプログラムにおいて最も高い効果が得られることは明示されており、介護施設にいる高齢者に対しても同様のことがいえると示されています。理学療法士は、対象者の能力にあったプログラムを用意するべきです。プログラムが易しすぎる場合、理学療法士は、荷重や負荷をかける回数を増やしたり、他の運動も追加するべきなのです。
危険性や害:筋力トレーニングの負荷が不十分であれば、時間とお金を無駄に遣ってしまうことになります。筋力の低下により起こる上述の問題は解消されず、転倒のリスクは依然として残ったままとなります。
問題:高齢者や手術後の患者には、深部静脈血栓症(DVT:下肢の静脈に形成される血の塊。多くは足にできる。)のリスクがあります。DVTに対する主な治療として、血栓を溶解させる薬を投与してベッドで安静臥床をとる方法が多くみられます。
安静臥床の目的は、血栓が他部位に飛ばない(移動しない)ようにすることです。血栓が肺に飛んでしまうと、肺の血管を塞ぐ「肺塞栓症(PE)」という命に関わる問題にまで発展します。
しかしながら、研究によって安静臥床がPEの予防に有効ではないことが示されています。血栓ができている人のうち、歩行制限を課されなかった人のほうが、ベッド上で安静にしていた人に比べてPEになりやすい、ということはないのです。
また、臥床せず歩行することには、多くのメリットがあります。気分もよくなりますし、足の痛みや腫れも緩和されます。加えて、DVTに伴う様々な足の問題に対するリスクを軽減できます。
理学療法士は、抗凝固薬が効き始めるたら速やかに歩行介助を始めます。もしくは、理学療法士、医師が患者に自力でどれだけ動いてよいかを教えてくれるでしょう。
危険性や害:安静臥床は、血栓を大きくしたり、更なる血栓を生じさせてしまう可能性があります。また、肺炎など、合併症のリスクも高まるでしょう。体力自体も落ちてしまいます。
以下の場合は安静臥床が必要になるかもしれません。
問題:人工膝関節全置換術後、多くの場合、24時間以内に運動療法を開始します。
理学療法士は、どのように膝を動かし、歩き、ベッドや椅子に座ったり、また立ち上がったりするのかを指導します。こうして、自らの膝関節を再び自らの力で動かせるよう手助けします。また、早い段階で運動療法を始めることは、足に血栓ができるリスクを軽減し、入院期間を短縮することにもつながります。
しかし、外科医の中には、持続受動運動(CPM)器具をあわせて使用することを推奨する医師もいます。CPM器具とは、臥床している間も1日数時間にわたり膝を動かし続ける器具です。理学療法士がこの器具をどのように使えばいいかを指導します。
しかし、研究によると、運動療法にCPM器具を追加しても痛みは改善しません。また、CPM器具によって膝を曲げやすくなったり、伸ばしやすくなったりすることもありません。更には、元通りの運動性を取り戻したり、生活の質(QOL)を向上させることもありません。
つまり、運動療法にCPM器具を追加したとしても、得られるものは変わらないのです。
危険性や害:CPMは大きく重い器具であり、装着することは容易ではありません。また、CPMを借りるための金銭も発生します。ベッドから自ら起き上がったり運動するかわりに、ベッド上にいる時間が長くなることも懸念されます。
以下のような場合においては、CPMの使用が有用であることもあります。
問題:理学療法士はしばしば治りが遅い傷や、慢性的な傷、感染による傷の治療に携わることがあります。一つの治療法として、渦流浴装置を用いて創部を水に浸し、清潔にする方法があります。しかし、渦流浴に治療効果があるという根拠はほとんどありません。また、感染症に罹患してしまうリスクもあります。
以下に、創部を清潔に保つよう洗浄するための、より安全で体に優しく効率的な方法を挙げます。
傷の治療に渦流浴を用いるべきではありません。肉離れなどのスポーツ外傷には有効なケースもありますが、その効果は証明されていません。
医師が理学療法士にかかるよう勧めてきたときには、以下の項目を参考にして、自分自身で理学療法士を選ぶこともできます。
米国の場合、理学療法士は、自分が施術する州で免許を受けている必要があります。中には特定の症状や、特定の部位のみを治療できる理学療法士もいます。さらに、米国理学療法士委員会は、理学療法士を様々な専門領域ごとに認定しています。具体的には以下のような専門領域があります。
理学療法士に以下のように聞くといいでしょう。
また、保険会社に対して次のことを確認しましょう。
どのような治療が行われるのか尋ねましょう
理学療法士による治療として望ましいのは、患者自身が動く「能動的な方法」です。運動を行うことで、病気や怪我をする前のように動けるようになることもあります。施術台やベッドに横たわるような、受動的な治療は避けましょう。
翻訳:Choosing Wisely翻訳チーム 学生メンバー・大阪医科大学 荘子万能
監修:小林裕貴、徳田安春先生
群星沖縄臨床研修センター センター長 、筑波大学 客員教授、琉球大学 客員教授、獨協大学 特任教授、聖マリアンナ医大 客員教授、総合診療医学教育研究所 代表取締役、Choosing Wisely Japan 副代表、Journal of General and Family Medicine 編集長
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