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日本の若者は「不定芽(FUTEIGA)」か? 若者から日本を元気にするために ~第4回NPO全世代フォーラム レポート~

日本の若者は「不定芽(FUTEIGA)」か? 若者から日本を元気にするために ~第4回NPO全世代フォーラム レポート~
メディカルノート編集部 [医師監修]

メディカルノート編集部 [医師監修]

この記事の最終更新は2017年06月16日です。

「最近の若者は……」みなさんもそういった言葉を耳にした機会があるのではないでしょうか。

1980年代より「ゆとり教育」が実施され、大幅な学習量の精選と授業時間の削減が行われました。そうした教育を受けた現代の若者は「ゆとり世代」と呼称され、彼らは一部の人々から甘やかされた、いわれたことしかできない世代という評価を受けることがあります。

しかし、現代の若者はそんなにも腑甲斐ない世代なのでしょうか?本当はゆとり世代というイメージを覆すような「不定芽(普通は出るはずのないところから出る芽)」となり、世のなかをよい方向へと変えていくことができる世代なのではないでしょうか。

そうした問いを社会に投げかけ、若者のリアルな生態を研究していくべく、『⽇本の不定芽』研究プロジェクトが動き始めました。このプロジェクトを推進するのはNPO法人全世代。元WHO西太平洋地域事務局長の尾身茂先生が中心となり、有志とともに設立した全世代は、すべての世代に公平な社会福祉の実現を目指し様々な取り組みを進めています。

本記事では、2017年5月27日に開催された「第4回全世代フォーラム」の内容から、全世代の取り組みや、「日本の不定芽」をテーマとして若者のあり方や日本のこれからについて考えるトークセッション・オープン座談会の様子をレポートします。

尾身先生

始まりの挨拶をする 尾身茂氏(NPO全世代 代表理事)

NPO法人全世代は、2015年に立ち上がった「誰もが納得できる社会をつくる」ために活動する団体です。立ち上げには医師、教員、文化人、弁護士、実業家など多彩な実務経験から問題意識をもつ人々が集まり、創立からこれまでの約2年間、市民の問題意識を吸収する講演・座談会の運営やデジタルプラットフォームの開発など、市民参加型のアプローチを通して日本が抱える問題の解決に向き合ってきました。

現在、全世代は主に3つの取り組みを進めています。

 

1つは「医師の地理的偏在の解消」です。

全世代は医師の地理的偏在の解消に向け、都道府県の枠を超えた全国レベルで早期に実効性のある解決策を組み立て、厚生労働省に提案してきました。こうした取り組みは新聞にも取り上げられ、国における医師偏在の解消に向けた議論の活性化に大きく寄与しました。

 

2つめは「待機児童解消プロジェクトの推進」です。

これは深刻な社会問題のひとつである「待機児童問題」解消のために、現在病院職員の子どもだけが主に利用している全国で2,700ある病院内の保育所を地域住民に開放していこうという取り組みです。

このプロジェクトの推進のため、全世代は支援金の協力を募るクラウドファンディングを開始しました。その結果2017年1月には約1,200万円もの支援金を集めることに成功しました。これからのプロジェクト推進に期待が集まっています。

「待機児童解消プロジェクト」については、『待機児童解消のために「病院内保育所」を開放するというアイデア』もご参照ください。

 

そして3つめが、本フォーラムのメインテーマである『日本の不定芽』研究プロジェクトです。

これは社会の原動力である若者を応援すべく、全世代の若者メンバーを中心として構成されたWING(WAKAMONO Initiative for the Next Generation)によって立ち上げられたプロジェクトです。

どうしたら常識や定石が蔓延する日本社会を変えていくことができるのか、そのためには若者が「不定芽」となって新しい風を吹かせることが必要なのではないか。そうした考えから立ち上がったWINGが、今回の第4回全世代フォーラムで日本のこれからを考えるイベントを企画しました。

そもそも「不定芽」とはいったい何を指すのでしょうか。

不定芽とは普通は出るはずのないところから出る芽のことです。これを人間に例えるなら不定芽は、社会の常識を変えるエネルギーを持つ存在であり、そうした存在こそが若者なのではないかとWINGは考えました。

今の日本には元気がなく、社会の柔軟性が欠けているという声もあります。そうした世のなかに対して、若者が「不定芽」として芽を吹き、花開けば、社会に漂う閉塞感や窮屈感を吹き飛ばすことができるかもしれません。

しかし自然界では、普通ではない不定芽は摘み取られてしまうことがほとんどです。また人間の社会でも「出る杭は打たれる」というように、常識から外れた若者は否定され、新しい意見の創出をあきらめてしまうことがあります。さらに最近の若者はゆとり世代と呼ばれ、安定を求め、常識からはずれない、自分からなかなかアクションを起こせない世代だともいわれています。これでは日本に新しい風を吹かすことができる、元気のある若者が存在できる場がなくなってしまうのではないでしょうか。

そこでWINGは、若者が本当は何を考えているのか、不定芽が元気になり多様な意見を発信できる社会をどう作っていくべきかを明らかにするため、⽇本社会における若者のリアルな⽣態を調査することにしました。

そうして企画されたのが「第4回全世代フォーラム」のトークセッション&オープン座談会です。

フォーラムの参加者は総勢80名以上にのぼり、そのうち約30名の若者が集まりました。トークセッションには実業家の林千晶さん、オープン座談会には経産省の若手官僚である藤岡雅美さんが招かれました。

トークセッション、オープン座談会では、一体どんな議論が展開されたのでしょうか。

トークセッション

ゲスト:林千晶氏((株)ロフトワーク創業者/共同代表、MITメディアラボ所長補佐)

モデレーター:高津晶氏(NPO全世代代表理事、(株)ルーフ取締役社長)

トークセッションではゲストの林千晶さんと、全世代代表理事の高津晶さんが「日本の不定芽」についてそれぞれの視点からディスカッションしました。

林千晶さんは現在、ご自身が一から立ち上げた会社、株式会社ロフトワークの代表を務められている方です。林さんは海外で記者として取材・執筆活動に従事するなかでインターネットを通じた事業の魅力に気づき、人が「生きててよかった!」と実感できるサービスを立ち上げようと一念発起。日本に帰国後、クリエイティブ・エージェンシーのロフトワークを起業しました。会社立ち上げ当初、資金が不足していた際には「君のやることが好きだから投資するよ」と林さんの描くビジョンに共感する方が現れ、その方の支援により会社を作り上げていくことができたというエピソードを持っていらっしゃいます。自らの感性や意思を信じて前進し続ける林さんの姿勢は、数多くの人々から注目を集めています。

またモデレーターをつとめた高津晶さんは、資生堂のヘアケアブランド「TSUBAKI」の開発で総指揮を担当された方です。高津さんは当時、TSUBAKIのターゲットをあえて女性に絞り、コンセプトを「日本の女性は美しい」にしようというアイディアを提案。そして自らSMAPに対して「日本の女性を応援するプロジェクトを一緒に創らせてください」とオファーをしました。そうして完成した「Dear WOMAN」という曲とともに流れるTSUBAKIのCMは視聴者を引き付け、大きな反響を巻き起こしました。高津さんはこうした大きなプロジェクトを信念をもって成し遂げていったというご経験を持っていらっしゃいます。

そんなアイディアと自発性にあふれ、まさに「不定芽のモデル」ともいえるような2人はこれまでそれぞれの活動でどういった気持ちをもって動いてきたのかについて意見を交わしました。

林さんは不定芽という概念に対して、「それぞれの個人は異なる価値観を持つ不定芽だと思う。熱意や意志に従って生きることが大切だ」とコメント。そんな意見をもつ林さんに対して高津さんは「彼女の創る世界はナチュラルだと思う、だからこそ人の心を動かしていく」と語りました。そして2人から「若い人の行動は、世間でいわれている言葉に沿って進められるだけでなく、自分のなかから自然に湧いてくる熱や意思を追いかけるものであってほしい」という想いが語られました。

座談会

スピーカー:若者世代の参加者、

オブザーバー:林千晶氏、高津晶氏、

進行:WINGメンバー北野芳英氏、西山友梨氏(大学院生)

続いて「若者は不定芽か?若者が活躍できる社会とは」というテーマのもと、若者を中心としたオープン座談会が行われました。座談会企画の中心となったのはWINGの大学院生メンバーである北野芳英さんと西山友梨さん。若者の問題に対して等身大の感覚で考えることができる彼らが中心となって、このフォーラムに集まった方々とどんなディスカッションを交わすべきか、若者へどんな問いを投げかけるべきか、開催に向けて企画を作り上げてきました。

WINGの大学院生メンバーである北野芳英さんと西山友梨さん

座談会では「ゆとり世代といわれることに対してどう感じるか?」「若い世代の意識調査の資料について、どう感じる?」といった議題のもと、若者の活発な意見が飛び交いました。大学生から大学院生、社会人、そしてビジネスマンからアーティストなど多種多様な立場の若者がそれぞれの視点から考えた「若者の意見」を活発に交わしました。

また若者の意見を聞いた大人の方々から、議題や若者の意見について考えを伺う機会も設けられました。ここでは「仕事は社会貢献のためにするものだ」という若者の意見に対して「私たちが若者だったときに同じ質問を問われたら、家族を食べさせるためと答えるだろう。時代が変わり、当たり前とされる認識も大きく変容したことを強く感じる」といった意見も聞かれるなど、世代でいかに価値観が変わってきたのかが浮き彫りとなるセッションとなりました。

座談会

座談会を進行するWINGメンバーと、藤岡雅美氏(経済産業省 産業人材政策室 室長補佐)

また議題のひとつとして2017年5月に公開され、その内容がSNSで話題となった経産省の次官・若手プロジェクトの資料「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」が取り上げられ、さらに本資料の政製作メンバーの経済産業省 産業人材政策室 室長補佐の藤岡雅美さんも座談会の場にご登場されました。

本資料は20~30代の省内では若手といわれる世代で構成された経産省の有志チームが日本社会の課題についてまとめたものです。資料では国内外の社会構造の変化が要約されており、そうした背景を踏まえたうえで日本が打ち出していくべき中長期的な政策の軸となる考え方が検討されています。

経産省 次官・若手プロジェクト資料「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」表紙図

経産省 次官・若手プロジェクト資料「不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~」表紙図

座談会では資料の内容に対する質問が飛び交ったとともに、経産省のチームがどのような議論を重ね、どういった考えをもって資料をまとめ上げたのかについて、目の前で意見が交わされました。

今回の座談会を終えて藤岡さんは「もっと若者の意見を聞きたい。こうしたディスカッションの場をもっと設けていきたい」と思いを明らかにし、今後も全世代とともに連携を取りながら若者が活躍できる社会について議論を深める機会を作っていきたいと話しました。

大宅さん

フォーラムの終わりの言葉を述べられる大宅映子氏(全世代 代表理事)

本フォーラムでは、様々な議題のものと、これからの日本を考える非常に貴重な機会となりました。全世代の代表理事である大宅映子さんは終わりの言葉として「この場だけで議論が終わるのではなく、今日の参加者がさらにつながりのある人をあつめて、さらに多くの人でテーマについて考えていきたい。本当に“全世代”になるように、これからも活動を活性化させていきたい」と語りました。

2017年11月11日には第5回のフォーラム開催が決定しています。これからもこうした機会を通してよりよい日本の未来を考える場が活性化していくことに期待が集まります。

 

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