院長インタビュー

長きにわたり広島市の医療を担ってきた、歴史あるJR広島病院の取り組み

長きにわたり広島市の医療を担ってきた、歴史あるJR広島病院の取り組み
小野 栄治 先生

JR広島病院 理事長・病院長

小野 栄治 先生

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この記事の最終更新は2017年11月08日です。

医療法人JR広島病院の歴史は、1920年に広島駅の構内に設置された「広島鉄道治療所」という治療施設がはじまりです。その後1940年に病院に昇格し、名称も広島鉄道病院に変わりました。原爆で全壊した病院は、広島市南区大須賀町から、同市の東区二葉の里へ移転しました。 終戦後の混乱期、その後の様々な変遷を経て、2016年1月には、現在地に新築移転し、同年4月には、JR西日本鉄道株式会社の一部門である「広島鉄道病院」という企業病院から、一般医療法人JR広島病院として法人化しました。そのような長い歴史を持ち、2015年6月に開院から75周年を迎えた同院の取り組みについて、院長である小野栄治先生にお話を伺いました。

1920年に駅の構内からはじまり、1940年には有床病院となった当院ですが、はじめは当時の鉄道省、その後の国鉄の職員や、その家族のみが利用できる職域病院でした。それから40年ほどのときを経た1982年、医療機関としてより大きな役割を果たすため、一般住民の方々にもご利用いただける保険医療機関へ変わりました。その後、1987年に行われた行政改革による国鉄分割民営化の制定によって、日本国有鉄道がJRへと移行しました。 その変革の中で全国にあるJR各社で病院を持つことになり、JR東日本は仙台と東京、JR西日本は大阪と広島、JR北海道は札幌、JR東海は名古屋、JR九州は北九州と、それぞれが地域の医療を担う病院を構えています。当院は、JR西日本の有する病院のひとつとして、広島市東区の地域住民の方々を中心に利用いただいています。

広島市東区の総合病院として、新たに医療環境を整備してさらなる医療の質の向上をめざし、2016年1月に新病院をオープンしました。病床規模は275床となり、そのうち緩和ケア病棟が20床、地域包括ケア病棟が41床、一般病床が214床となっております。また、標榜診療科(病院が外部に広告できる診療科名)には新たに、リウマチ・膠原病内科や緩和ケア内科、人工透析外科が加わり、さらに化学療法センター、内視鏡センター、ハイパーサーミア・温熱療法室なども立ち上げました。それにより、がん診療に対する急性期病院としての機能の充実を図るだけでなく、人工透析センターや独立した検診センターなどを新設し、地域ニーズに応えられるような取り組みにも力を入れています。

当院では、広島市東区の地域ニーズの高い部門を設け、今後も中核病院としての役割をより一層強化充実できるよう努力を重ねています。

2016年1月に設置された当院の人工透析センターでは、主として比較的状態の安定した慢性期の患者さんの治療を行っています。長く安定した透析を行なうため、手術などによる動静脈シャント作成や維持管理、糖尿病、循環器疾患などの合併症に対しても担当科と連携した治療を行なっています。また、患者さんの状況によっては腹膜透析も施行するなど、それぞれの患者さんに応じた治療選択を柔軟に行なえるような体制をとっています。また、時には進行したガン患者さんに発生した難治性腹水に対して腹水除去濃縮再静注(CART療法)も行っています。一方、JR広島駅をはじめ、さまざまな駅から交通アクセスのよい当院では、通院透析患者さんだけでなく、広島に観光にいらした透析患者さんの受け入れも積極的に行っています。また、合併症を起こすことも多い透析患者さんの治療に対しては、人工透析外科と外科やその他の診療科の医師、看護師、薬剤師、さらにリハビリ科など診療科の垣根を超えたチーム医療で患者さんをサポートします。

当院の緩和ケア内科は、2016年1月の新築移転に際し設立された診療科です。

20床の病棟はすべて個室となっており、自宅のように安心して過ごしていただけるよう努めています。緩和ケア認定看護師だけでなく、院内スタッフが丁寧に対応させていただいており、患者さんと、ご家族の方のご希望に寄り添い、少しでも穏やかに過ごしていただけるよう様々な工夫と努力を重ねています。その一環として、2月は節分、3月はひな祭り、8月は納涼会……といったように、患者さんに院内にいながらも季節を感じていただけるようなイベントを行い、ご家族との思い出つくりや、患者さんご自身の思いに寄り添いながらサポートさせていただいています。

当院では、特にがん治療に対する取り組みに力を入れております。独立した内視鏡センターや、化学療法センターに加え、隣接する広島県がん高精度放射線治療センターとも連携し、より高度ながん治療ができる仕組みをつくってきました。

広島がん高精度放射線治療センターは、2015年の10月にオープンした高度放射線治療のできる施設です。同センターは当院に隣接しており、さまざまながんに対する治療を密な連携のもとで行っています。広島近隣の地域でもっとも高度な放射線治療を行える施設のひとつで、高精度な放射線治療を行える治療機器が設置してあります。主に放射線治療のみに特化した特徴あるセンターで、ターゲットを絞りながら高い精度を必要とする治療に対して効果を発揮します。

また、同センターで治療をしていただきながらも、引き続き当院に通えるため、治療に専念できる環境が整っています。

電磁波温熱療法(ハイパーサーミア)とは、サーモトロンRF8🄬という電磁波治療器を用いて行う、悪性腫瘍に対する治療のことです。この治療は、がんなどの悪性腫瘍の性質(正常組織に比べて熱に弱い)を利用し、悪性腫瘍を中心とした領域を選択的に42~44℃の高温の温度環境とし、腫瘍を縮小させることを目的とした治療法です。手術や内視鏡治療などが行えない進行がん・再発がんの場合や、体力的に手術が難しいと判断された場合などが主な適応となり、抗がん剤や放射線治療と相乗的な効果が期待できます。また、通院しながら治療することも可能です。脳などの頭蓋内を除いた全身の悪性腫瘍に対応が可能で、さまざまな抗がん治療で改善が困難であると判断される場合でも、温熱療法を加えた治療により、がん病巣の著しい縮小効果が得られる場合もあることもこの治療法の特徴です。治療中は痛みや不快感もなく、約40~50分程度で行われます。この治療を行うために、広島県内のみではなく県外からも患者さんが受診されています。

整形外科では四肢と脊椎の疾患に対する診断・治療を行っております。脊柱間狭窄症や椎間板ヘルニアなどの脊椎疾患に関する神経痛には、保存療法や適応があれば顕微鏡を使用した手術を行います。負担が少ないために多くは翌日から離床が可能です。その他、股関節や膝関節疾患において、極力感染を防ぐ必要のある人工関節などの手術の際には、手術室バイオクリーンルームを使用します。手術室バイオクリーンルームは清潔度の極めて高い空気のなかで手術を行えることが特徴で、細菌など微細なレベルでの清潔度を保っています。

消化器内科では、消化管を中心とした内視鏡での診断と治療に加え、肝胆膵も含めたがんの診療を主に行っています。内視鏡での検査は年間4,000件を超え、消化器の早期のがんに対しての内視鏡治療にも力を入れています。また、手術の必要な消化器の悪性疾患では外科と、肝細胞がん膵臓がん胆管がんに対する肝動脈塞栓術やステント治療などは放射線科と、というようにほかの診療科とも連携しながら治療を行っています。そのほか、新薬の治験にも積極的に参加しています。

平成29年4月に常勤に専門医が赴任し、リウマチ・膠原病領域の様々な疾患の診断、治療に取り組んでいます。この領域の治療は進歩が著しく、最新の知識と経験を持った専門医が診療に当たっています。

当院では前期研修のプログラムで研修中の医師に対しての指導には、それぞれの個性に沿いながら、能力を高める懇切な指導を心がけ、先輩医師がマンツーマンで指導することを原則としています。新人研修だけでなく、後期研修の医師や中堅医師には、それぞれの専門領域での学術活動への支援も行ない、得意分野の診療状況を地域に対して積極的に発信してもらうことも期待しています。また、当院の理念でもある「優しさと誠実な医療」にもあるように、医療者側からの考え方だけにとらわれず患者さんの意向を十分に汲み取り、コミュニケーションを重ねて最適な医療が提供できるような医師になってほしいと思います。若い医師の方々には年毎に新しい診療内容が導入されてくる医療現場において、日々学術的な勉学を欠かさず継続し、自分の目指したい専門領域を見つけ、大きな目標を定めて成長されることを期待しています。

1945年8月6日、広島に原子爆弾が投下された際、当院もその被害を受けました。広島駅の南側にあった当院は病棟が全壊し、そして多くの職員を失いました。そのような歴史を背負いながらも、地域の方々とともに今日まで歩んでまいりました。2015年には開院から75周年を迎えることもできました。その歴史のなかで培った地域のみなさまとのつながりを大切にし、日々進歩を重ねて行く医療の変化に柔軟に対応しながら、健全で適切な医療の提供に今後とも努めてまいります。

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