院長インタビュー

先駆けとなるような医療で地域の健康支援に取り組む関門医療センター

先駆けとなるような医療で地域の健康支援に取り組む関門医療センター
林 弘人 先生

関門医療センター 病院長

林 弘人 先生

この記事の最終更新は2017年10月30日です。

独立行政法人国立病院機構 関門医療センターは陸軍下関要塞病院として1891年に開設されました。1945年に厚生省に移管され国立下関病院となり、2004年の独立行政法人化を機に関門医療センターとなりました。2009年4月に下関旧市街地より現在の下関市長府に新築移転し、地上7階建ての免震構造で大型ヘリポートを付設、災害拠点病院としての役割も担っています。また、臨床研修指定病院でもあり、全国から研修医が集まります。「先駆け」「地域」「教育」をキーワードにさまざまな取り組みを実践する関門医療センター院長の林 弘人先生にお話を伺いました。

 

当センターの存在意義は国立病院機構の一員として、国の医療政策を第一線で担うとともに、国の政策の企画立案に貢献することです。国民が求める医療サービスを提供するために、ニーズをいち早くとらえ技術面、社会システムとしても先駆けとなる取り組みに挑戦し続けることが使命だと考えています。一般病床400床(うちICU6床、救命救急センター24床)、32診療科で山口県のなかでもっとも人口の多い下関市の医療を支えるとともに、高齢化や医師の偏在など県内の医療状況に合わせて当センターのあり方も変化させる必要があります。当センターは2004年に県内でいち早く総合診療科を開設しました。高齢化社会になり患者さんが複数の慢性疾患を抱え、さまざまな症状に悩み病院を受診されるとき、臓器別専門科だけでは対応できません。総合診療科は患者さんをトータルに診療していく部門として、多くの人が受診されます。このように地域と時代のニーズにあった医療に取り組むことを心がけています。

2002年から女性特有の身体症状や精神的症状を診察する女性総合診療外来を開設しました。当時の日本ではまだめずらしく、全国で2番目、西日本でははじめての取り組みでした。女性医師、女性スタッフが患者さんのあらゆる症状を総合的に診察します。女性が自分の心と身体の健康について理解し、社会や家庭のなかで自ら納得のゆく健康管理ができるようサポートします。

2007年より、みなし指定による訪問看護事業を行ってきました。医師会の訪問看護が閉鎖したこともあり、当センターの新しい役割として2017年4月よりビーンズ訪問看護ステーションを24時間体制で開設しています。下関の訪問看護を担う施設として、退院後の生活に不安がある方が住みなれた自宅で生活できるよう、「ビーンズ」という名前の通りマメな気配り・心気配りで利用者さんとご家族を支援します。

当センターの消化器グループは、日本消化器外科学会および日本消化器病学会から施設認定を受けており、特に食道がんをはじめ消化器がんの治療に力を入れています。また、中国や九州各地からも患者さんの紹介を受けています。

内視鏡下手術にも積極的に取り組んでおり、食道から大腸まで、これまでは大きく開腹、開胸が必要だった手術も、小さい創で低侵襲に行えます。

2017年から女性の乳腺専門医師に来ていただいたことで、乳腺外科ではマンモグラフィーや超音波エコーの健診から診察、手術、放射線治療まですべて女性スタッフが対応しています。女性スタッフだからこそ、より女性の気持ちを理解し寄りそえることも多いのではないでしょうか。

高齢化社会になり、運動器変性疾患や骨折の患者さんは増加しています。骨、軟部腫瘍、膝や関節、リウマチにはそれぞれの専門分野の担当医師が治療しています。手術室にはバイオクリーンルーム(空気中のただよう微生物などの量を少なくするよう管理された部屋)を配置し、人工関節手術にも力を入れています。

整形外科の治療は患者さんのQOL(生活の質)の向上が目的であり、十分なリハビリテーションが必要です。当センターのリハビリテーション科は365日リハビリテーション体制を実施しており、早期から連携して機能訓練を行います。

患者さんが生活する場所である「地域」にしっかりと根をおろし、患者さん中心の病院づくりを進めています。地域の急性期病院、地域医療支援病院として医療関係者、行政とも一体となり良質で効率的な医療サービスの提供に努めていきたいと思います。職員も地域活動に積極的に参加するなど、患者さんを支えるため、さまざまなことに取り組んでいます。

 

当センターには国立病院機構のなかでも規模の大きな患者図書室「健康応援図書館」があります。「医療は、病を克服するための患者と医療提供者の協働の営みである」という考えのもと、さまざまな医学専門書をそろえ患者さんが閲覧できるようにしています。

患者さんやご家族だけではなく、地域のどなたでも病気やその治療法、健康維持について学ぶ機会を得られることで、医療に関する知識向上につながることを願っています。

ドクターヘリ
 

当センターは下関および長門医療圏第三次救急医療を担う救命救急センターとして指定されています。救命救急センターER24は、24時間365日救急搬送に対応しています。隣接のヘリポートはドクターヘリだけではなく、海上保安庁や自衛隊ヘリも受け入れることができ、広域の災害医療にも対応する体制を整えています。

救命救急センターER24
 

また、当センターでは高気圧酸素療法が可能であり、一酸化炭素中毒の患者さんも運ばれてきます。難しいとされる四股切断の再接着手術も得意分野です。事故で指や手首を切断された患者さんにはマイクロサージャリ―(顕微鏡を用いて行う手術)のできる医師が治療にあたります。

 

多くのボランティアの方の支えで当センターの運営は成り立っています。その活動範囲はとても幅広く、外来患者さんの受付サポートや車イスを使用している方のお手伝い、図書の整理、ホームページ作成、リハビリ科での手仕事、イベントの企画運営までさまざまです。センター入口の花壇は訪れる人の目を楽しませてくれています。

毎月、病院内の施設や設備を知っていただくための探検ツアーも企画してくれています。ツアーでは診察機器やヘリポートの見学、人工呼吸の体験などがあり、多くの地域の方がお子さまと一緒に参加しています。

2004年から始まった新医師臨床研修制度に基づいて、全国から研修医を受け入れています。すでに200名近くが当センターでの研修を修了し全国で活躍しています。次世代をたくましく育て無限の可能性を引き出せるように、当センターの総合的な診療体制を生かして、医療各職種の卒前、卒後研修に大きな力を注いでいます。

研修医のやりたいことに取り組んでもらう、自由度が高いことが特徴だと思います。研修医は救急科での研修中だけではなく、2年間の副直で常に救急患者に対応するプログラムが組まれており、救急初期診療の能力を向上させることができます。救急では安全を確保しながらバックアップ体制を整えていますので、研修医はファーストタッチから治療、手術まで数多く経験することが可能です。また、カンファレンスが充実しており、救急は全症例をフィードバックします。救急以外でも興味のある症例はみんなで共有しています。

2年目が1年目の面倒をよくみて教えるということも特徴のひとつです。これは当センターで伝統的に受け継がれている文化です。教育効果のなかで人に教えるということは、その人の力になり蓄積されます。2年目と1年目の間でうまくその体制ができており、1年目も半年たてば次は自分が次の1年目を教えるという自覚をもって取り組んでいます。

 

現在、毎月1回第4日曜日にサンデー健康応援講座という市民の方へ向けた研修会を開いています。がん生活習慣病、薬の話、認知症の方とのコミュニケーションの取り方などさまざまな分野で知識の普及、啓発を行っています。また、出前講座として自治会や婦人会などから、こういう話がききたいという要請があれば講演することも可能です。

 

当センターは2009年に現在の長府外浦町に移転してきました。これまで地域の方に支えられ育てていただいたといっても過言ではありません。今後も恩返しをするべく、地域の変化やニーズをいち早くとらえ、よりよい形の医療提供に取り組みたいと思っています。外来や入院患者さんからアンケートでいただいた意見・課題には真摯に向き合い、小さいことから病院運営にいたるまで日々改善を心がけています。

今後も、地域のみなさまから信頼され愛される病院、社会に貢献できる病院を目指し当センターは職員一丸となって頑張ってまいります。

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