院長インタビュー

奈良県の先進医療と橿原市の地域医療を支え続ける奈良県立医科大学附属病院

奈良県の先進医療と橿原市の地域医療を支え続ける奈良県立医科大学附属病院
古家 仁 先生

奈良県立医科大学附属病院 前院長

古家 仁 先生

この記事の最終更新は2018年04月24日です。

奈良県橿原市にある奈良県立医科大学附属病院は、県内唯一の特定機能病院として高度医療を推進し、また橿原市における市民病院としての機能も担う病院です。

院長の古家仁先生に、奈良県立医科大学附属病院が地域に提供する医療と、次世代の医療人を育成する奈良県立医科大学について、それぞれお話を伺いました。

奈良県立医科大学附属病院よりご提供

奈良県立医科大学附属病院は1945年4月、奈良県立医学専門附属病院として8診療科215床で開院しました。2018年4月現在には26診療科992床、紹介率[注1]90%・逆紹介率[注2]65~70%にのぼり、奈良県における医療機関の中心的存在に成長しました。

当院が持つ「安全で質の高い先進の医療を提供する」という使命のもと、患者さん中心の医療を提供できるよう職員一同励んでいます。

[注1]紹介率:当院を受診された患者さんのうち、他の医療機関から当院を紹介された方の割合

[注2]逆紹介率:当院から他の医療機関を紹介させていただいた患者さんの割合

医療政策に熱意を持って取り組んでいる県の助けもあり、奈良県立医科大学附属病院と奈良県立医科大学ではさまざまな取り組みを計画、実践しています。

特に大学の将来を大きく左右する方針の決定には病院や大学の役員のみでなく、県知事、副知事、政策部長をはじめ県内の医療行政に携わる方々にも参加していただき、協議を重ねています。

2018年4月現在、当院は奈良県で唯一の特定機能病院に指定されています。しかし当院のある橿原市内には公立病院がありません。そのため当院は市民病院としての役割も担っており、2017年では1日あたり平均2,286名、多い日には3,000名以上の方が外来受診されました。

大学病院として高度な医療を提供しつつも地域医療にも関与していることは、当院の特徴のひとつといえるでしょう。

奈良県立医科大学附属病院では26診療科がそろっており、それぞれ特色ある診療を実施しています。

奈良県立医科大学附属病院よりご提供

一般的な小児科疾患のみでなく、血友病など凝固異常症をはじめとする血液の病気、腫瘍、神経など各専門領域の診療も実施しています。

2010年12月には小児センターを開設して、高度小児医療を24時間体制で提供できる体制が完成しました。また新生児集中治療部門はハイリスク新生児[注3]に対する診療が可能な総合周産期母子医療センター認可施設です。そのため当院では妊娠中の女性から子どもまで幅広く対応可能です。

[注3]ハイリスク新生児:生まれたときの体重が2,500g以下の超低出生体重児、小児外科疾患、先天性心疾患などを有する新生児

整形外科では全身を動かすのに必要な骨、筋肉、関節、神経などに対する診療を実施しています。

足の外科では足に生じた外傷や障害、また糖尿病関節リウマチなど慢性疾患による障害の治療を行っています。特に当院の足の外科は全国的にも有名で、東京大学病院など国内のさまざまな病院からの研修も受け入れています。

脳神経外科では脳腫瘍や下垂体疾患などに対する手術を2017年では114件実施しました。全国でも珍しいてんかん外科も実施しています。

高水準の治療を提供すべく、国際的な学術活動や研究に力を入れています。

通常のX線検査、CT、MRI検査の実施、診断を実施するとともに、血管内治療専門のIVRセンターを設置し先進的な血管内治療も行っています。

奈良県立医科大学附属病院よりご提供

最新式の放射線照射装置リニアックを3台導入しており、各診療科と連携しながらがんの3本柱(化学療法、手術、放射線治療)の一翼としてがん治療や疼痛緩和を実施しています。

奈良県立医科大学付属病院では、脳卒中心筋梗塞などの病気や交通事故による外傷など、緊急度も治療に求められる専門性も高い三次医療を中心とした救急医療も展開しています。

奈良県立医科大学附属病院よりご提供
奈良県立医科大学附属病院よりご提供

2018年2月に敷地内にヘリポートを設置し、3月から運用を開始しました。

奈良県では特に県南部の過疎化が進行したことを受け、2017年3月よりドクターヘリの運航を開始しています。当院ではこれまで、近隣の運動場に着陸したドクターヘリから患者さんを引き継ぎ救急車で搬送していましたが、搬送時間の大幅な短縮が可能となりました。

ここから先は、奈良県立医科大学について紹介させていただきます。

奈良県立医科大学は県内唯一の医育機関として、「最高の医学と最善の医療をもって地域の安心と社会の発展に貢献します」という建学の精神のもと、次世代の医療を担う良き医療人の育成を目指しています。

良き医療人とは、患者さんのことを考え行動する医療従事者ではないかと考えています。そのため本学では学生のみなさんに対し、知識や技能だけでなく豊かな人間性も身につけてもらえるよう、人間教育・社会教育・倫理教育・医療安全教育を核とした独自の良き医療人育成プログラムを提供しています。

また医療に対して興味を持ってもらうだけでなく、奈良学について、先輩医師の生き方について、医療安全についてなど12の特徴的な内容を学んでほしいと思っています。

英語を母国とする教授を複数名配置して、医学部1年生から英語教育に力を入れています。ゆくゆくは英語による講義ができればと考えています。

また医学部2~3年目の基礎配属のタイミングで海外留学の機会も設けており、毎年約16名が海外の研究室に入って経験を積んでいます。

2017年から始めた取り組みで、主に研修医の診療に総合診療可能な医師に協力していただくことで、より実践的な臨床経験を身につけてもらいます。ドクターNは開始してからまだ日の浅い企画ですが、これから徐々に成果が現れてくるのではと考えています。

奈良県立医科大学附属病院は、県内の救急医療や先進医療などを牽引する、そして基幹病院として5疾病[注4]を筆頭にあらゆる病気を診療することができる、まさに奈良県民にとって最後の砦ともいえる存在です。当院はこの数年で大きな転換期を迎えつつあります。

26ある診療科の多くが数年かけて教授交代を予定しているため、病院全体に非常に活気が出ると考えています。また2024年には看護部と教育学部を畝傍山へ移転、跡地にA病棟の移転と整備等を計画しており、現在着々と準備を進めている最中です。

地域のみなさんに対して地域医療とより高度な医療を提供できる病院として、常に患者さんのことを考えるよき医師を育成する大学として、今後も尽力してまいります。

[注4]5疾病:がん脳卒中、急性心筋梗塞糖尿病、精神疾患のこと

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