院長インタビュー

「患者さんに寄り添ったケアをしたい」桜町病院の信念と取り組み

「患者さんに寄り添ったケアをしたい」桜町病院の信念と取り組み
小林 宗光 先生

聖ヨハネ会桜町病院 院長

小林 宗光 先生

この記事の最終更新は2018年05月25日です。

社会福祉法人 聖ヨハネ会 桜町病院は、東京都小金井市の北部に位置する医療機関です。近隣には都立小金井公園や玉川上水があり、緑豊かな地域に位置しています。

正面玄関の隣にはイエス・キリスト像があり、院内に入ると聖母マリア像が目に留まります。「弱き者に手を差し伸べよ」というイエス・キリストの教えをモットーに、地域包括ケアに取り組むとともに、ホスピス病棟を設置している同院の信念や取り組みについて、院長の小林 宗光先生にお話を伺いました。

病院外観。入り口にあるイエス・キリスト像が患者さんを優しく出迎える(画像提供:桜町病院)

当院の前身となる病院は、1927年に開院した「聖ヨハネ汎愛医院」と、結核患者のための「ナザレト・ハウス」という2つの病院です。両病院の創設者である戸塚文卿医師は1939年に現在地に病院を創設し「私たちはキリストのように人を愛し、病める人、苦しむ人、もっとも弱い人に奉仕します」という理念のもとに医療を提供し、現在もその意思は受け継がれています。2018年2月現在は、11の診療科と199の病床(一般病棟87床、地域包括ケア病棟48床、ホスピス病棟20床、療養病棟44床)を持ち、新生児から終末期まで生涯を通じて、「桜町マインド」で地域の皆さんの健康を支えることを目指しています。

【上段】受付待合室、中庭 【下段】院内に設置されたマリア像、病棟廊下(画像提供:桜町病院)

一般病棟のほか、地域包括ケア病棟や療養病棟、さらにホスピス病棟を設置して幅広いステージの診療に応えています。とりわけ産婦人科は、東京医科大学病院から医師を派遣していただき、外来診療を始め手術まで多くの患者さんに利用していただいています。当院の手術は、内視鏡下での良性腫瘍の低侵襲手術を多数行い、大きな病院から患者さんを紹介されることもあります。また、産科は診療を始めとした「助産師相談」、分娩までの時期を支える「母親学級」、出産後の子育てを手助けする「まなざし」、分娩後の「産褥入院」など妊娠・出産のそれぞれのステージをサポートする体制が整っています。

整形外科では脊柱管狭窄症椎間板ヘルニアなどの脊椎の手術や膝や股関節の人工関節置換術の手術も積極的に行っています。膝関節の治療を専門としスポーツ整形外科の分野にも造詣の深いドクターも加わり、スポーツ障害の患者さんにも利用していただいています。

【左】腹腔鏡下手術のようす【右】人工膝関節全置換術のようす(画像提供:桜町病院)

1994年、当院は病院本館と同じ敷地にホスピス病棟「聖ヨハネホスピス」を建設しました。ホスピスに入居されている方は、2018年5月現在、悪性腫瘍の患者さんです。

スタッフは医師・看護師・看護助手・チャプレン・ホスピスコーディネーター、ボランティアコーディネーター・登録ボランティア約100名・薬剤師・医療ソーシャルワーカー・管理栄養士などです。これらのスタッフが一丸となって、日々患者さんとそのご家族をサポートする環境づくりに励んでいます。

厚生労働省の規定により、日本ではホスピス病棟のご利用は悪性腫瘍(がん疾患)、あるいはAIDSを患われた患者さんに限定されています。

【左】ホスピス外観【右】ホスピス内ラウンジ(画像提供:桜町病院)

当院のホスピスで終末期を過ごされている患者さんたちは、さまざまな思いを抱かれながら日々を過ごしています。私たちホスピススタッフは、あなたの価値観こそあなたにとって大きな意味があることを知っています。そのために必要なお手伝いを、私たちは可能な限りいたします。少しでもよい時間が過ごせますようにお手伝いをしていきます。

当院は2017年に、地域包括ケア病棟48床を開設しました。この病棟は在宅あるいは介護施設に復帰される予定の患者さんが「安心して退院していただく」ための治療やリハビリテーションの提供を目指しています。医師・看護師・リハビリテーションスタッフ・医療ソーシャルワーカーなどのスタッフが互いに協力し、患者さんの治療や支援に尽力しています。当病棟への入院の対象となる患者さんは以下の通りです。

・当院や他院での急性期の入院診療を終え、症状は改善したが、もう少し治療や経過観察、リハビリテーション、在宅療養への準備が必要となる方

・在宅療養や介護施設に入所されている方で、急性疾患や急性増悪により入院が必要となった方

肺の生活習慣病であるCOPDという病気を煩う患者さんの症状である「せき・たん・息切れ」が悪化することをさします

【左】地域包括ケア病棟【右】スタッフの皆さんによるカンファレンス(画像提供:桜町病院)

当院は2016年に地域連携型認知症疾患医療センターに指定されました。

認知症センターでは、認知症疾患に関する鑑別診断や認知症に関する心配事や介護の相談などを行い、関係機関との連携を図りながら、認知症の方が住み慣れた地域において適切で必要な医療・介護・生活支援を継続して受けられるようサポートしています。

当院には総勢150名を超えるボランティアの方々がおり、病院やホスピスの活動を支えて頂いております。主に案内・コーラス・ハープなどの楽器演奏、書籍の提供や庭の水やりも行っていただいています。

【左】案内ボランティアとコンシャルジュ【右】歌のボランティア(画像提供:桜町病院)

また、誕生した赤ちゃんとお母さまの退院時には母子の健康を祈願して天使の像とメダイをプレゼントしているのですが、この二つはボランティアのみなさんの手作りです。

職員だけでは手や眼が届かないところを、ボランティアの方々にきめ細かくフォローしていただいております。

母子の健康を祈願してプレゼントされる天使の像とメダイ(提供:桜町病院)

当院では5つの基本方針の一つに「全人的(身体的、精神的、社会的、霊的)ケアを行います」を掲げて運営しています。

人は、肉体的以外にもさまざまな痛みを感じます。その痛みは4種類に分類され、それに対する治療を全人的ケアと呼んでいます。当院では、肉体的な痛みや症状を和らげるだけではなく、「スピリチュアルペイン(魂の痛み)」などを含む全人的ケアに力をいれています。中でも当院の特別なケアの一つが「シスターによる傾聴」です。患者さんのご要望があればシスターがお部屋に伺い、お話し相手になり、患者さんのためにお祈りをします。

全人的ケア(患者さんが感じる4種類の痛みのケア)

(1)肉体的痛み・・・身体的痛みや日常生活での支障

(2)精神的痛み・・・不安や恐怖、怒り、うつなど

(3)社会的痛み・・・病気になったことで感じる経済的な不安、社会や人間関係の断絶

(4)魂の痛み(スピリチュアルペイン)・・・自分の人生への問いや、死への恐れ、過ぎ去った過去への後悔 などのケア      

当院は無料低額診療を行う病院です。無料低額診療とは、生活保護を受けている人や生計困難者など、医療費の自己負担額を支払うことができない状態にある方が病気や怪我をしたときに、無料あるいは低額料金で診療を受けることができる社会福祉事業の一つです。

当院の地域医療連携室で医療ソーシャルワーカーがお話を伺い、どのようにサポートできるのかを一緒に考えていきます。お電話でも相談を承っており、相談料は無料、相談内容の秘密は厳守しています。

桜町病院の聖堂(提供:桜町病院)

当院は開院以来、長年にわたって地域に根付いた病院としてみなさまの健康のサポートに力を入れてきました。2017年度に地域包括ケア病棟の開設以降は一段と、自宅や施設からの患者さんの受け入れや近隣の高機能病院と連携して、急性期治療を経過した患者さんの受け入れも増えています。

院長である私が常日頃スタッフのみなさんに話しているのは、「家族の誰かに万が一のことがあったとき、安心して任せたい」と思えるような病院でいましょう、ということです。

患者さんの声を聞き、痛みを理解し、寄り添う。奉仕の精神から生まれた病院だからこそ、その気持ちを大切に、今後も温かみのある病院でいることが目標です。

「愛と祈りの病院」で「優しく温もりのある医療」を提供することができるよう、これからもスタッフ一同努力していきます。

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